内容説明
小説か? 実録か?
まだあどけない17歳の女子高生が、老齢の監督に導かれるままに足を踏み入れた、憧れ・畏怖・感動・絶望・官能の渦巻く眩いばかりの未知の世界。仏映画界の伝説的な女優による衝撃の実名小説。
「私はこの映画に出たいと望んでいた。それまで一度も何かをこんなふうに望んだことはなかった。まるで私の全人生がそこにかかっているような気持ちになって、全身全霊を込めて望んでいた」(本文より)
17歳の女子高生アンヌは、友人に連れられて、ある老齢の映画監督の自宅を訪れる。それが、次回作のオーディションであることも、またこの日を機に平凡だった自分の人生が劇的に変化していくことも知らずに。その監督の名は、ロベール・ブレッソン――
著者は、ノーベル文学賞作家フランソワ・モーリヤックの孫娘。映画の主役に大抜擢され、66年に作品が公開されるや一夜にしてスターダムに躍り出た。翌年ゴダールの「中国女」に主演、またパゾリーニ、フィリップ・ガレルなど錚々たる監督の作品に出演するなど、仏映画史にその名を刻んだ伝説の女優。近年は作家に転向し、数々の文学賞を受賞している。
傑作「バルタザールどこへ行く」の撮影秘話でもある本書は、40以上も歳の離れたカリスマ監督と新人女優の間の、恋愛にも似た不思議な共犯関係を、思春期の少女の瑞々しい視点で描いた実名小説である。