内容説明
悪の輝きを放つ作家たち
19世紀から21世紀まで、アメリカ大陸に生まれ育ち、どこかずれた右翼的作家・詩人たちの人生と作品を集めた架空の〈作家列伝〉。
本書に登場する30人は、それぞれ生没年を付され、文学事典さながら長短さまざまに紹介される。ヒトラーに抱かれた赤子の自分の記念写真を誇りにするアルゼンチンの肥満体の女流詩人、数々の異名を編み出し「カリブのペソア」と呼ばれるハイチの剽窃詩人、壮大な〈第四帝国のサガ〉シリーズで成功を収めるアメリカのSF作家、ボカ・ジュニアーズのフーリガン集団を率いるアルゼンチンの詩人兄弟……いずれもボラーニョ・ワールドを体現する傑物揃い。
『通話』、『野生の探偵たち』、『2666』などでお馴染みの人物やエピソードが本書ですでに登場している点も見逃せない。随所に見られる自己言及的かつ予見的なフレーズは、他の邦訳作品に親しんだ読者には堪えられないはずだ。
ボラーニョ自身、1996年に刊行された本書によって初めて批評家の注目を集めた。巻末に付された他の登場人物略歴、事項および書誌一覧も含め、文学的野心に満ちた初期の恐るべき傑作。
解説=円城塔