証言と抒情

詩人石原吉郎と私たち

シベリア強制収容所で極限を体験した詩人・石原吉郎。3・11後、私たちをひきつけてやまない石原の言葉の力に、気鋭の詩人が迫る。

著者 野村 喜和夫
ジャンル 一般書 >  評論・エッセイ(日本)
出版年月日 2015/11/19
ISBN 9784560084762
判型・ページ数 4-6・326ページ
定価 2,750円(本体2,500円+税)
在庫 在庫あり

内容説明

石原吉郎生誕百年

極限をくぐり抜けた 言葉の力 生の悦び
シベリア強制収容所の極限状況を経験し、生の根底を厳しく問い続けた詩人・石原吉郎。3・11後、私たちをひきつけてやまない石原の言葉に、シベリア抑留者の父をもつ気鋭の詩人が迫り、痛苦の経験が美になる瞬間をとらえた渾身の書き下ろし!

「詩は証言ではない。詩人はすべからく、経験をいったん内的に沈めて、そこからふたたび浮かび上がってくる言葉をこそ書き取らねばならないのである。詩はいわば、もっとも深められた証言としての抒情であり、もっともなまなましく開かれた抒情としての証言なのだ。」(本文より)

[内容詳細]
シベリアと現代をつなぐ言葉の力

3・11後、パウル・ツェランと同様に注目されているのが石原吉郎だ。敗戦70年の今年は、石原吉郎の生誕百年でもある。生きることの根底を厳しく見つめ、問い続けた石原吉郎の言葉が、なぜ今私たちをひきつけてやまないのか。
敗戦後シベリアに抑留され、8年に及ぶ強制収容所の圧倒的な経験で言葉を失った石原は、帰国ののち、少しずつ詩を書き始めた。「詩には最小限度の呼びかけがあるからです。ひとすじの呼びかけに、自分自身のすべての望みを託せると思ったからです」。石原の詩は、戦慄的で難解なものとして受け止められたが、後年、シベリアでの経験をエッセイとして発表することで、多くの人々の共感を呼ぶこととなった。
これまで石原は、おもにエッセイによる証言をもとに理解され、論じられてきた。だが、石原は本来詩人である。石原にとっての詩とは何だったのか。エッセイ執筆つまりは証言が詩人にどんな影響を及ぼしたのか。石原の詩の言葉の力とは――。
本書は、シベリア抑留者の父をもつ気鋭の詩人が、シベリアと現代をつなぎ、今日私たちの場所へと石原吉郎を蘇らせる力作評論である。痛苦の経験が美になる瞬間を捉え、石原の詩から生の悦びを享受するに至るまで、石原の言葉の力を描ききった。3・11後の視点から石原の魅力を余すところなく伝えている。

[目次]
Ⅰ 主題 石原吉郎へのアプローチ
はじめに/石原吉郎の生涯/「耳鳴り」のインパクト/父の死と石原吉郎/タイタニック号の私たち/「葬式列車」を読む/正午の弓/いちまいの傘/他者の不在/風と夕焼けと塔と海と/極限は私たちにも訪れうる/詩の悦びへ/証言と抒情/「外科手術」/ただ一度の潮

Ⅱ 変奏 六つの旋律
存在
レヴィナスと石原吉郎/存在の極限あるいは「イリヤ」/石原詩における「イリヤ」/アンガラ河のほとりあるいは実存者/分岐点/極限と美とユーモアと

言語
失語から沈黙へ/沈黙の詩学/隠しつつあらわすために/謎の深まりとしての隠喩空間/リズムの力/イロニーとユーモア

パウル・ツェラン
「言葉だけが残りました……」/共時的共通点/根本的差異――ディアローグとモノローグ/それぞれの白鳥の歌

現代詩
戦後詩への登場――「夜の招待」を読む/荒地派と石原吉郎/遅れてきた「四季」派?/「ロシナンテ」の時代/吉岡実との比較/達成/減衰的反復

他者
詩における他者の問題/他者の不在をめぐって/鹿野武一という神話/分身的他者の諸相/それ自身が他者である単独者へ

信仰
戦争と信仰/詩に書き込まれた信仰/聖書との格闘/信仰と断念と言語と/カール・バルトに照らされて/逆説と飛躍

Ⅲ コーダ 石原吉郎と私たち
石原吉郎における悪循環/詩人の死後の生/シベリアはだれの領土でもない/アガンベンへの参照/証言から詩へ――異言の潜勢力/可能性としての石原吉郎/単独者同士の共同体/エピローグのエピローグへ/命名のファンタスム/このくぼみ、このフェルナンデス

 あとがき/参考文献/作品名索引

[著者略歴]
野村喜和夫(のむら きわお)
1951年10月20日、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部日本文学科卒業。戦後世代を代表する詩人のひとりとして現代詩の先端を走り続けるとともに、小説・批評・翻訳なども手がける。著訳書多数。
詩集『特性のない陽のもとに』(思潮社)で第4回歴程新鋭賞、『風の配分』(水声社)で第30回高見順賞、『ニューインスピレーション』(書肆山田)で第21回現代詩花椿賞、評論『移動と律動と眩暈と』(書肆山田)および『萩原朔太郎』(中央公論新社)で第3回鮎川信夫賞、『ヌードな日』(思潮社)および『難解な自転車』(書肆山田)で第50回藤村記念歴程賞、英訳選詩集 Spectacle&Pigsty(Omnidawn)で2012 Best Translated Book Award in Poetry(USA)を受賞。

*略歴は刊行時のものです

定価2,750円
(本体2,500円+税)

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