軋む心

アイルランドの田舎町の住民21人が語る、人生の軋轢と挫折。「語り」が重層的に響き合い、人間模様を綾なす。傑作長篇!

著者 ドナル・ライアン
岩城 義人
ジャンル 一般書 > 海外文学 > 小説
おすすめ
シリーズ 一般書 > エクス・リブリス
出版年月日 2016/02/26
ISBN 9784560090442
判型・ページ数 4-6・218ページ
定価 本体2,300円+税
在庫 在庫あり

内容説明

「口承の伝統」と人生の荒野
ぎいぎいと、軋む心の声を聞け

不況にあえぐアイルランドの田舎町で、ある男の他殺体が見つかり、ひとりの幼児が何者かに連れ去られる……。殺人と誘拐という不穏な旋律に、21人の語り手の声がポリフォニックに絡み合う、遅咲きの新鋭による傑作長篇!
アイルランド最優秀図書賞、ガーディアン処女作賞受賞作品

「家の正面に低い門があり、その中心には赤い鉄製のハートが設えられている。真ん中が回転式の軸になっていて、くるくると回る仕組みだ。赤いペンキはほとんど剝げ落ち、錆が出ている。いまでも風が吹けばかろうじて回転するが、錆をこそげ落としてやすりをかけ、新たにペンキを塗り直し、油を差してやる必要がある。歩き去るおれの後ろから、ぎい、ぎい、ぎい、と耳障りな音が聞こえてくる。ぼろぼろになり、それでも回り続ける、軋むハート。」(「ボビー」より)


後悔、怒り、嫉妬……人生の苦い思いを語る、21人の登場人物の声がポリフォニックに響き合う。

「近代以降のアイルランド小説において、カトリック社会における抑圧、家父長社会における抑圧、女性に対する抑圧、と抑圧がテーマにされることが少なくない。口承という伝統が受け継がれる反面、そういう抑圧もずっとアイルランド人の心の中にくすぶっているのだ。」(「訳者あとがき」より)

ボビー」:
おれは毎日、実家の父フランクを訪ねる。父が死んでいることを願って。そんな息子の心中を知る父は、鼻で笑っておれを迎え入れる。むかしからずっとそうだった。父の冷淡さに疲れ果て、愛する母は失意のうちに亡くなった。そしていま、職を失った息子を父は嘲笑っているだろう。家の門扉に設えられた鉄製のハートが、今日もぎいぎいと軋みながら回っている……。

フランク」:
妻は息子を馬鹿みたいに甘やかした。だったら、おれが厳しくするしかない。傲慢は罪だ。おれは父親からそう叩き込まれた――実際に体中がみみず腫れになるほど。暴力は暴力を生むと言うが、それは必ずしも正しくない。おれにはそんな度胸はなかった。もし父親のように暴力をふるっていたら、ボビーはどうなっていただろう。おれは自分自身と和解できるのだろうか。


[目次]
ボビー
ジョシー
リリー
ヴァシヤ
リアルティン
ティミー
ブライアン
トレヴァー
ブライディ
ジェイソン
ヒラリー
ショーニー
ケイト
ロイド
ローリー
ミリセント
デニス
マグス
ジム
フランク
トゥリオナ

 謝辞
 訳者あとがき


[原題]The Spinning Heart


[著者略歴]
ドナル・ライアン Donal Ryan

1976年生まれ、アイルランドのティペラリー州出身。労働者のための雇用問題を専門に扱う弁護士として行政機関で働いていたが、三年間休職して執筆活動に入る。処女作The Thing about Decemberと本作(原題The Spinning Heart)を書き上げ、出版社に持ち込むものの、行く先々で断られること47回。しかし、最終的に出版社の目に留まり、本作が刊行されるや、2012年のアイルランド最優秀図書賞に選出される。13年にはガーディアン処女作賞を受賞、同年のブッカ―賞にもノミネートされ、15年にはEU文学賞を受賞(12人の受賞者のひとり)している。


[訳者略歴]
岩城義人(いわじょう・よしひと)
高校を卒業後に渡英。音楽学校に通いジャズ等を学ぶ。帰国後、肉体労働などのアルバイトをしながら、翻訳学校にて学ぶ。

*略歴は刊行時のものです

2,300円+税

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