人生の旅人たち

エル・クリティコン

十七世紀の奇才グラシアンによる傑作寓話小説。人生の四季を旅する二人の男が苦難を乗り越え「不死の島」へ至るまでの奇想天外な物語

著者 バルタサール・グラシアン
東谷 穎人
ジャンル 一般書 > 海外文学 > 古典・評論
おすすめ
出版年月日 2016/05/09
ISBN 9784560092392
判型・ページ数 A5・825ページ
定価 本体12,000円+税
在庫 在庫あり

内容説明

スペイン文学における幻の高峰、待望の完訳!
人生の四季を旅する男達の奇想天外な物語

幼年期の春、青年期の夏、壮年期の秋、老年期の冬。人生の四季を旅する二人の男、クリティーロとアンドレニオ。深い縁で結ばれた彼らの行く手に待ち受けるのは、寓意的人物と怪物が入り乱れ美醜善悪が渦巻く幻想世界と、生きるためには避けられない冒険と試練。そして暴かれるのは、落日を迎えた帝国スペインの虚と実……。

さあ、どちらの道を行く? 二人は別れ、また出会い、魂の成長とともに不死の島への旅が続く……


「今日ここに、思慮に富み篤厚の士たる読者のみなさまにお届けしますのは、世俗に生きるための哲学と、諸賢の人生の流れに関する省察を含んだ書物であります。(……)私は、哲学の無味乾燥さと物語の楽しさを、さらには諷刺の辛味と叙事詩の甘みを、本書の中で融合させるよう努めました」
(「本書をお読み下さる皆様へ」より)

「私の贔屓の作家は思想家グラシアンです。私は彼の全作品を読み通しました。彼の『エル・クリティコン』は、私にとっては世界の最高作品の一つに入ります。もしどこかの出版社がそのつもりになってくれるなら、私は喜んで翻訳するつもりです」
――ショーペンハウアー
(一八三二年、ある友人への書簡より)


17世紀の奇才グラシアンの代表作

ヴォルテール、ショーペンハウアー、ニーチェ等、後代の思想家に少なからぬ影響を与えた17世紀の奇才グラシアンの代表作を読みやすい日本語に移した完訳版。落日の気配漂う帝国スペインを背景に、シュールリアリズムにも通じる想像力を駆使した物語は、荒海を板きれにつかまって漂流する男を俯瞰する場面から始まる。無人島の渚に漂着したその男クリティーロを助けたのは、獣に育てられ、言葉を知らぬ若者アンドレニオであった。この運命的な出会いから、二人の長く苦難に満ちた「人生の旅」が始まる。第一部「幼年期の春および青年期の夏」から第二部「壮年期の秋」を経て第三部「老年期の冬」に至るまで、作者は「まやかしの泉」、「無の洞窟」などを舞台に、多くの寓意的人物──「慧眼どの」「偽善さま」「時間どの」「真実さま」等々を操り、さらにアルゴス、キマイラ、ケクロプスなどの怪物をからませながら二人の旅人を試練の渦に巻き込んでゆく。そして、人間の本性を完膚なきまでに暴いた果てに読者を導く先は、「人生とは、死への旅路以外の何ものでもない」というセネカの境地…。とはいえ抹香臭さとは無縁の現代的ともいえるユーモアに溢れた快作である。


[目次]
第一部 幼年期の春および青年期の夏
 献呈の辞 キリスト騎士団員・砲兵隊大将・トルトサ総督パブロ・デ・パラダ閣下に本書を捧ぐ
 本書をお読み下さる皆様へ
  第一考  クリティーロは漂流の末、アンドレニオに遭遇し、不思議な身の上話を聴かされる
  第二考  宇宙大劇場
  第三考  大自然の美しさ
  第四考  人生の転落
  第五考  この世への入口
  第六考  当今の世相
  第七考  まやかしの泉
  第八考  アルテミアのすばらしき魔術
  第九考  人間精神の解剖
  第十考  盗賊団の虜
  第十一考 宮廷の魔物
  第十二考 ファルシレナの魔術
  第十三考 世界何でも市

第二部 壮年期の秋における賢明なる処世哲学
 献呈の辞 フアン・ホセ・デ・アウストリア殿下に本書を捧ぐ
  第一考  万人の更生
  第二考  サラスターノ氏のすばらしき秘蔵品
  第三考  黄金の牢獄と銀の地下牢
  第四考  智者たちの図書室
  第五考  凡俗たちの広場と有象無象の集まり
  第六考  幸運の女神への非難と弁明
  第七考  偽善の女王イポクリンダの隠れ家
  第八考  勇者たちの武具博物館
  第九考  妖怪たちの劇場
  第十考  ビルテリアの魔術世界
  第十一考 ガラス屋根に石を投げるモモス
  第十二考 支配の仕組みとしての玉座
  第十三考 万人の大獄

第三部 老年期の冬
 献呈の辞 シグエンサ大聖堂主任司祭ロレンソ・フランセス・デ・ウリティゴイティ猊下に本書を捧ぐ
 本書をお読み下さる皆様へ
  第一考  〈老境さま〉の栄誉と恐怖
  第二考  悪徳の万屋
  第三考  〈真実女王〉の出産
  第四考  世事の謎解き
  第五考  扉のない宮殿
  第六考  〈知〉が支配するところ
  第七考  無から生まれた娘と大広間の世界
  第八考  無の洞窟
  第九考  フェリシンダの本当の居どころ
  第十考  車輪とともに〈時〉はめぐる
  第十一考 人生の姑
  第十二考 不死の島

   訳注
   訳者あとがき


[原題]El Criticón


[著者略歴]
バルタサール・グラシアン(1601-1658)
17世紀スペイン・バロック文学を代表する作家、思想家。イエズス会所属のカトリック司祭として主にアラゴン地方を中心に宗教活動に従事する傍ら、作家、モラリスト、思想家、宗教者として多方面にわたり優れた著作を残した。彼の作品は、同時代の社会や人間についての深い洞察力に基づいた鋭い批判精神と真の人間精神の発揚をその特徴とし、奇知主義と呼ばれる巧緻な文章技巧と相まって、その作品群は現代の読者にとっても示唆に富み、斬新な魅力に満ちている。主な著作には本作のほか『逸材論』、『知的技巧論』、『思慮分別論』、『処世の智恵』などがある。


[訳者略歴]
東谷穎人(ひがしたに・ひでひと)
1939年三重県生まれ。神戸市外国語大学名誉教授。1962年大阪外国語大学イスパニア語学科卒、1967年スペイン・ナバラ大学文学部博士課程修了。文学博士。専攻はスペイン近現代文学。
主要著書にEl teatro de L.F.de Moratin (Madrid, Playor)、『スペイン語の散歩道』、『スペイン語大辞典』(共著)(いずれも白水社)、『はじめてのスペイン語』(講談社現代新書)など、また主要訳書に『スペイン文学史』(共訳)、『ラ・レヘンタ』、『スペイン幻想小説傑作選』(編・共訳)、『たそがれ世代の危険な愉しみ』、『笑いの騎士団 スペイン・ユーモア文学傑作集』、本作の著者グラシアンによる『処世の智恵』(いずれも白水社)などがある。
1978年から12年間、NHK教育テレビ「スペイン語講座」講師を担当。1997年、スペイン語からの優れた翻訳業績を対象とした「会田由翻訳賞」(日本スペイン協会)を受賞。

*略歴は刊行時のものです

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