内容説明
翻訳家・澁澤龍彥の仕事はここから始まった
愛と死、そして甦生を描く半自伝的青春小説
複数の芸術ジャンルを横断した稀代の才人による1923年刊の半自伝的青春小説。翻訳家・澁澤龍彥の記念すべきデビュー作にして名訳。[口絵1頁]
複数の芸術ジャンルを横断した稀代の才人による、1923年刊の半自伝的青春小説。
「ジャック・フォレスチエは淚もろかった。映画や、俗惡な音樂や、さては一篇の通俗小說などが彼の淚を誘うのだった。彼はこうしたそら淚と、心の底から溢れ出る本当の淚とを、混同しはしなかった。空淚というやつは訳もなく流れるようであった。
棧敷の薄暗がりでは淚の粒をかくしていたし、本を読む時は一人だったし、それに、本当の淚をこぼすことなどは滅多になかったので、彼は冷やかな才子だと人から思われていた」。(本文より)
訳者あとがきで「コクトオがその中でいちばん裸になった作品」と評し、翻訳家・澁澤龍彥の記念すべきデビュー作となった名訳。
[原題]Le Grand Écart