内容説明
「知ってるつもり」では済まされない
アメリカ史に連綿としてある暗部を暴く
戦時中、12万の日系アメリカ人が直面した人種差別と隔離政策の恐るべき実態を描いたノンフィクション。[口絵16頁]
人種隔離政策の恐るべき実態
太平洋戦争中、敵国日本にルーツを持つというだけの理由で、12万人もの日系アメリカ人が劣悪な環境の収容所に隔離された。本書は、アメリカ人ジャーナリストが、自国の戦時ヒステリーが引き起こした「醜態」の一部始終を描いたノンフィクションである。マイノリティー問題の一つとして謝罪と賠償だけで片づけるのではなく、国家としてのアメリカが自国民に対してどのような仕打ちをし、それを追認・黙認してきたのか、自分たちの歴史として意識し続ける必要があるというのが著者のスタンスだ。
突然、日常から切り離され、収容所へと送られていく悲惨さや、収容所内における一世と二世との確執など、生存者へのインタビューのほか、私信や回想録、公的資料から積み重ねられるエピソードの数々は、微に入り細をうがち圧倒的である。
人種差別、排外主義、恐怖と表裏をなす報復感情……アメリカ史に連綿としてある暗部を暴きながら、冷静に事実を見据え、アメリカ社会の光と影を浮かび上がらせた力作。そこには当然、アフリカ系をはじめ、イスラーム教徒らマイノリティーに対して同じ行為を繰り返しはしないかと自問する姿勢が見て取れる。
[原題]INFAMY: the shocking story of the Japanese American internment in World War II
[著者略歴]
リチャード・リーヴス
アメリカのジャーナリスト、コラムニスト。1936年生まれ。スティーヴンス工科大学卒業。66年から71年まで『ニューヨーク・タイムズ』政治部長を務めたのち、『ニューヨーカー』『エスクワイア』など主要紙誌のコラムニスト・編集者として活躍。また、公共放送サービス(PBS)のドキュメンタリー番組「フロントライン」で主任記者を務めた。エミー賞(80年)をはじめ、活字・映像の分野で数々の賞を受賞。歴代大統領の伝記をはじめとする米国政治関連の著書多数。現在、南カリフォルニア大学で教鞭を執る。
[訳者略歴]
園部 哲
翻訳家。一橋大学法学部卒業。訳書に『北朝鮮 14号管理所からの脱出』『アジア再興』(以上、白水社)、『密閉国家に生きる』『人生に聴診器をあてる』(以上、中央公論新社)、『北極大異変』(集英社インターナショナル)、共訳書にシャーウィン裕子著『夢のあと』(講談社)がある。ロンドン在住。