内容説明
経済学における「転向」研究
社会主義がベルリンの壁とともに崩れた1989年、現代経済学の起源を米主流派ではなく英ケンブリッジ学派に見出した記念碑的著作。
経済学を変えた一冊
すべてが暗転していく1930年代は、経済学の黄金時代だった。周知の通り、ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』が刊行されたのは1936年のことである。
当時、ケンブリッジ大学のケンブリッジ・サーカス、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのロビンズ・サークルには、当代切っての天才が集った。
ヒックス、カルドア、J・ロビンソン、ロビンズ、カレツキ、ハロッド……本書は彼らの生涯と理論を有機的に連関させることを通じて、現代経済学の生誕を描くだけでなく、20世紀の精神史に肉薄していく。
経済学はいつからか「制度化」したと言われる。第二次世界大戦後、「新古典派総合」が主流となり、分厚いテキスト(サムエルソン『経済学』)と数式が経済学の「正統」とみなされるようになった。
それにより、経済学は体系化されて、たしかに学びやすくなったが、そこにケインズの時代以来の「経済学の第二の危機」(J・ロビンソン)が巣食っているのではないか。こうした現代経済学の巨人たちの問いは、著者の問いでもある。1989年に刊行され、現代経済学の風景を一変させた記念碑的著作!
[目次]
復刊に当たって
序
第一章 正統から異端へ——ジョン・ヒックスの生涯
第二章 限界主義経済学からケインズ経済学へ——ニコラス・カルドアの生涯
第三章 あくなき正統への反逆——J・ロビンソンの生涯
第四章 破れた夢——ライオネル・ロビンズの生涯
第五章 孤高の探究者——M・カレツキの生涯
第六章 自信と不安の錯綜——R・F・ハロッドの生涯
あとがき
定本への付記
[著者略歴]
根井雅弘(ねい・まさひろ)
1962年生まれ。1985年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。1990年京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は現代経済思想史。『現代イギリス経済学の群像』(岩波書店のち白水社)、『経済学の歴史』、『経済学再入門』(以上、講談社学術文庫)、『ガルブレイス』、『ケインズを読み直す』、『英語原典で読む経済学史』(以上、白水社)、『サムエルソン』(中公文庫)、『経済学者はこう考えてきた』(平凡社新書)、『経済学者の勉強術』(人文書院)他多数。
*略歴は刊行時のものです