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哀しみホテル往復書簡

おぼろ・第二信 -2008.04.02

うつろ様

 格調高い手紙だなどと、裏好きなうつろ様のこと、きっと僕をからかっていらっしゃるんですね。
 しかし、ゆめゆめ忘れてはいけません。何時だって我々は、ただただうつむいて歩き、十円玉ばかりを拾ってきたではないですか。
 そんなあなた様が「ヨ・リ・コ」などと、うつつを抜かしていらっしゃるとは。なっ、なっ! なんて……、素敵。

 「うつつ」とは「現」と書くんだと本日知りました。「現実」「正気」という意味を持ちながら「夢ごこち」ということをも表すというこの言葉を体現されるうつろ様に、嫉妬すら抱いてしまいます。

 ああ、貴殿が今日はずっと遠くに感じられます。そんな寂しい夜には、あの裏日本の宿を思わずにはいられません。数年前に大流行をしたシ○ドラーエレベーターのけたたましい停止音が、薄い壁と扉を通して聞こえてくると、僕は一人ではないんだと、そんな見知らぬ人との一体感を感じさせてくれる、あの宿をです。有料チャンネルのテレビカード券売機の発券する音がフロア中に鳴り響く、あの宿をです。そして、さぞかし恥ずかしい思いをしたであろう同宿者に、君は一人ではないんだよと伝えるため、僕も券売機を鳴り響かせて優しい気持ちになれる、あの宿をです。

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