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トップ > クラブ白水社 > バックナンバー一覧 > こちら、白水社カレー部。「激辛、カウントダウン!」

クラブ白水社 バックナンバー
こちら、白水社カレー部。「激辛、カウントダウン!」

第10位 “デリー”のカシミールカレー(ベベホ)
第9位 “カーマ”のチキンカレー(激辛よりちょっと辛く&アチャール大量投入)
激辛、カウントダウン! 番外編
【圏外篇】 “エチオピア”の野菜カレー(80倍)
【圏外篇】 “エチオピア”ふたたび
【激辛を離れ東海篇】 最後の出張報告
第8位 “メーヤウ”のレッドカレー(プリックナンプラー青唐辛子のみ10杯かけ)
第7位 “トプカ”のムルギカリー(超辛)
第6位 “大沢食堂”のカレー(極辛)
第5位 “ルー・デリー”のカレー(100倍)
第4位 “マジックスパイス”のチキンカレー(アクエリアス)
番外編 “ジャイ”のカレー
番外編 “エチオピア”の100倍カレー
番外編 “エチオピア”の100倍カレー その2「ふしぎな縁(えにし)の綾なす店たち」
番外編+第3位 北海道“ピカンティ”の5番・「アガリ」
第2位 “ティーヌン”のバーミーヘン(プリックポン山盛り10杯かけ)
第1位 “カーナピーナ”のマトン・サグカレー(スペホ)

激辛、カウントダウン! 第10位 “デリー”のカシミールカレー(ベベホ)

:今回からスタートする「激辛、カウントダウン!」。わが白水社カレー部が誇る「過激派3人組」のゲキカラ君()とすーちゃん()とコバチェヴィッチ()の3人でお送りします。
 さて、今回は、“デリー”のカシミールカレーです。このあいだ食べてきました。で、前回、「スペホ」と記述したのですが、正確には「ベベホ」でした。というか、「very very hot」ですね。これ、すーちゃんも、食べたことあるでしょ?

:ある。しかし、「並」のカシミールと比べて、それほどの差を感じなかったな。コックがインドの人だったけど、イヤなんじゃないかな、「辛さ」だけを強調されるのが。なんかさ、若いオンナの店員と、ヒソヒソ相談してたのね。「あの客かい? そんな注文するの」「しかたないじゃない。作ってあげてよ」「カレーをさあ、辛さだけでどーこーいう日本人て、はっきりゆうけどファックだぜ。わかってねえんだよカレーってものをよ」――このよーな会話が交わされていたようなムードだった。ま、わしにすれば、カシミールは「並」で十分に辛いし、風味の点でも、コレをしのぐカレーなんて世界中にあるはずがないことになってるので、あえてVVHにしなくてもオッケーなのだがね。昨日も、そーいやあ食ったのよね。ルー大盛りで。

:僕は湯島の「ベベホ」は食べたことないんですが、富山県高岡市にある“デリーあわら店”(神様カリ〜掲載店)で、「グリーンカシミール」というのを食べたことがあります。普通のカシミールはここでは「ブラック・カシミール」で、その上に「レッド」、さらに上が「グリーン」ということになってるんですが、辛いことは辛いんだけど、辛さを増すのに使うペーストに大量のニンニクが入ってるのと塩辛いのとで、バランスが崩れてて全然うまくなかった。オーダーするときにおばちゃんに「これは辛くてお食事になりませんよ」と止められたんだけど、それ以前の問題で、辛くて味見できないんだったら客に出すなよ、って感じでした。

:つーか「ベベホ」は辛くないね、はっきり言って。オーダーのときも、制止されなかったし。たしかに、調理人(インドの人ではなかった)は無口だったなあ。でもそれだけに、激辛フリークへの扱いが手慣れてる感じがして、期待してたんだけど。たぶん、カシミールの「並」(メニューには極辛と表記されてる)に、そーとー自信あるんだね。仕方がないから、アチャールとして置かれてるオニオンを大量摂取しちまったのだよ。ま、そーは言っても、食後30分くらいは、軽度の口中刺激感が楽しめたかな。ヨドバシカメラ上野店とか、アメ横とか、ほっつき歩いてるうちに、消えちゃうんだけど。

:裏メニューって、噂で広まっていくでしょ。口コミで。デリーがどこまでそれを許容しているのかわからんけど、「だれだよ、そーゆー、いい加減な情報流すのはよっ。オレは雇われてる身なんだから、マスターに作れって言われたものしかやりたかぁないのよ。あたしはマスターのレシピを信じてんだから」というのがホンネなんじゃないかしら。それにしても、メニューに出しといて「まずいですよ」っていってる高岡の店はどーかと思うねえ。「辛い! ……しかし旨い!」というのがカレーの本道でしょうが。おいちゃん、怒ってる。

:いや、店の人が「まずい」と言ってるわけじゃないんだけど……まあ、総じて、おばちゃんは辛いのを勧めない、という傾向はあるね。みんなカーナピーナの奥さんのように、表情を変えずに軽く「辛いですよ」(実際はめちゃめちゃ辛い)と言えるようになってほしいです。

:ぎゃふん!



激辛、カウントダウン! 第9位 “カーマ”のチキンカレー(激辛よりちょっと辛く&アチャール大量投入)

:わが白水社カレー部が誇る「過激派3人組」のゲキカラ君(G)とすーちゃん(S)とコバチェヴィッチ(K)の3人でお送りする「激辛、カウントダウン!」。
 今回は、“カーマ”のチキンカレーです。前回まで、「超辛」と記述してたんですが、正確には「激辛よりちょっと辛く」です。すーちゃんは、食べたこと、ない?

:ないわん。「激辛」自体が、裏メニューでしょ。それより上のレベルがあったなんて、あなたに教えられるまで知らなかったもの。食いたいわん。でも、マスターがイヤがるんじゃないかと思って、相変わらず、「激辛」どまりよん。

:オーダーする前に、奥さんから「いつものでよろしいですか? (厨房に向かって)激辛みっつー!」って言われちゃうしねえ。

:いつもは「激辛」で満足してるんだけど、このあいだ久しぶりに食べてみたら、皿のフチに、同心円上に、油が分離して浮き気味で、むしろまろやかな感じがした。というか、ぬるめの感じになってしまうので、アツアツの「激辛」のほうがイイね。カーマのアチャール(たまねぎのピリカラ漬け物)は絶品で、いっつも、申し訳ないと思いつつ、大量摂取してしまうんだ。たまねぎの“青っぽい”辛さが、あのスープカレー的な、つゆだくの世界に、じつにうまくハマってる気がする。ちなみに、まずジャガイモをスプーンで崩して、ジャガイモとアチャールをソースでからめて食すのが、ぼくの流儀ね。あ、その前に、つけあわせのレーズン等は、真っ先に片づけちゃいます。あれ、甘いから、最初に食べちゃって、2口目との落差を楽しむのにいい。

:やっだー。イモはイモでしょ。ソースはソースでしょ。ダメよ混ぜちゃ。スープカレー的なんだから、できうる限りスープとしてのソースのみを最初は味わうべきよ。で、いよいよとなったら、カレーの浸みてるメシ部分にやむをえず手を出すのよ。あたしは、ソース+メシ+粉チーズ(フリーサービス)のハーモニーが好きだな。お皿の片隅に、ちょこちょこっとチーズを振って、味の変化を楽しむの。レーズンやアチャールはその合間合間に少ーしずつ使うの。ダメよもっと小技を駆使して食べなきゃ。デリケートなカレーなんだからさっ。

:みんな、そんな個性的な食べ方をしていたのか……。僕はチーズなし、アチャール少量で、素直に手前から食べてる。カーマは盛り付けが美しいから、できるだけバランスを崩さないようにしないと失礼かと。

:「激辛の10倍辛く」なんていう“不届き”な注文をした強者もいたらしいんだけど、このあいだ、店主の大野さんが怒ってました。「つくりたくない」って。鍋も新しくしなくちゃいけないし、なにしろ、調理んときに、香辛料で「むせちゃう」んだって。

:大野さん、かわい(そ)ー! あの人、会計の時なんかにあたしのことチラッと見るときはいつもちょっぴりスマイルしてるわよ。前回のデリーでも言ったけど、カレーとして完成形に達してる場合、無闇にその味わいの一部分だけを突出させてはイケナイと思うの。あくまでも、一皿のカレーはトータルなコスモスとして完結してるものなのよ。もちろん激しいホットネスとスティミュラスは不可欠であり、あたしたちはソレを求めるがゆえにカレーを食べるンだけど。その店その店で辛さの許容臨界点ははっきりあるものだと、見極めておく必要があると思うの。ごめんなさいね、なんか理屈っぽくて。

:それもカーマへの愛ゆえなんだから許すよ(もしかして大野さんへの!?)。あのチキン激辛が食えればそれで満足。まちがっても大野さんの嫌がる野菜とかサブジ頼んで「出入り禁止」にされたくありません。でも実は、一度だけサブジ食べたことあるんだけどね……。

:ドゥーン! というわけで、結論。カーマでは、野菜カレーの注文はもちろん、倍数ものの激辛オーダーは控えるべし!



激辛、カウントダウン! 番外編

:わが白水社カレー部が誇る「過激派3人組」のゲキカラ君(G)とすーちゃん(S)とコバチェヴィッチ(K)の3人でお送りする「激辛、カウントダウン!」。今回の執筆担当は、Gです。

 8月に大阪に行って来たのですが、そこで、「激辛、カウントダウン!」のランキングを揺るがすカレーを食してきましたので、その報告を。

 2店あるんですが、まずは、関西カレー界にその名を轟かす“ルーデリー”(心斎橋の大丸の近くで、御堂筋から3本ほど東の筋に面したビルの中2階)。

 ちなみにその欧文表記はRUE DELHIで、なんと、フランス語! RUEは「通り」ってことだから、「デリー通り」。英訳すれば、デリーストリートね。カレールーのルーってわけじゃないのね。なんでも、名づけ親は、かの竹村健一先生だとか。もちろん、ルー大柴のルーとも違うわけで(あれは本名トオルの愛称がルーだから、というムダ知識をどうぞ)。また、「カレースタヂオ」を標榜しているあたりにも、そんじょそこらのお店とはひと味ちがう個性が感じられ、期待がふくらみます。
 店に入ると壁には30倍までのオプションプライスが表示されていて、しかも嬉しいことに、ななななんと、辛さは無限倍まで可とのこと!! ただし、10倍=100円。
 お店の人に聞いたところ、「50倍の注文する人が、1日に1人いるかいないか」で、「自分が食べたことのある(味のわかる)辛さの限界は100倍」とのこと。じゃあってんで、切りよく、100倍をオーダーしちゃいました!!!

 食したのは地鶏の「アヤムカレー」。とにもかくにも味が絶品!!!! しびれる辛さに舌が包まれる快楽。さらさら系のインドカレーで、深みのある、きめこまやかなスパイス感がたまらない。ソースを口に運ぶたびに、じーんと痛みが広がるけれども、辛(つら)すぎないところがよい。むしろ嚥下するタイミングを遅らせ、あえて舌の回りに滞留させて、“真辛の布団”で包まれる感覚を堪能してきました。
 舌にしみいる辛さを味わううち、なんとなく、「牛タンに味がしみるのってこんな感じかな。今、myタンを切り取って食べてみたら、きっと、めっちゃうまかろう」などと妄想をめぐらせてみたり。あるいは、辛さとは逆ベクトルのはずなのに、「まるごとバナナケーキ」のバナナの気持ちが幻覚できたほど。ほんとうに、絶妙な“くるまれ感”を味わわせてくれるのでした。これはかなり、トリップできます。食後のラッシーは、さながらフローズンマルガリータのようで、実に“辛美”なるひとときを締めくくることができます。
 どおくまん描く青田赤道ばりに、刺激へと屹立しうる舌。いやほんと、自分の舌を、あれほど、物(ブツ)として意識できたことはないですね。

 気になるお値段は、ノーマルで1500円(サラダとラッシー込み)。ぼくが頼んだ辛さは100倍なので、標準値段に追加1000円で、合計2500円。ちとお高いですが、相応かと思わせるだけの味です。ちなみに、これまでの最高倍数は、お店の人曰く「桁が違います」というだけあって、1100倍だって!!!!! なんや、その10分の1にも及ばんやんけ>わし。1200倍に挑戦した人がいて、ギブアップしたとのことだけど、13500円のカレーって、資生堂パーラーの1万円カレーをぶち抜いて、日本一の高級カレーかも。こんど、大阪に行く機会があったら、ぜひとも挑戦したいものです(そのための貯金を始めなきゃ)。
 激辛ランキング的には第5位の“大沢食堂”のカレー(激辛)を連想しましたので、“ルーデリー”のアヤムカレー(100倍)は、暫定4.5位ということで。

 さて、お次は、“ルーデリー”の常連客のあいだでも「よう食べられん」と話題らしい、“辛口料理 ハチ”(地下鉄南森町下車、天神橋商店街のアーケードを中之島方面に南下して、天二と天一の境目を右折すぐ)。
 とにかくマニアックな店で、大阪一、いや日本一辛いかも、てな評判を聞きつけたからには行かねばなるまいということで、行ってきました。食ってきました。平日の昼しか営業していないとあってか、12時台は店の外に列ができてました。うーん、期待度高し。とりあえず近所を散策して時間をつぶし(天一の「フジハラビル」はオススメ)、どきどきわくわくしつつ13時30分すぎに入店――

 ごめんなさい。はじめに謝っちゃいます。完食できませんでした。噂に違わずマニアックな店で、カウンターに着席するなり、なにも注文しなくても(メニューは1種類しかなくて900円)、黄緑色のソバージュで赤いシャツ着たおばちゃんが、大盛りライスに、牛スジいっぱいのソースをぶっかけてくれます。隣の青年が、汗をかきかき、はひはひ言いながら食べている姿を見て、「修業が足りんのう」などと思ったりした私が悪うございました。

 たしかに、ひとくちスプーンを口に運んだだけで、トップギア全開罵詈罵詈で、辛さが駆け抜けます。ただでさえ大盛りなのに、調子に乗って、添えて出されたポットからルーを注ぎ足したりなんかしちゃったりもして。でもね、3分の2しか食べられませんでした。はっきり言って、ぼくの口には合いませんでした。常連ぽい女性客なども、がんがん食べてるんですけどね。いやはや、大阪、おそるべしですな。
 ぼくがこれまでに完食できなかったカレーといえば“カーナピーナ”のマトンカレー(スペホ)なんですけど(2分の1はテイクアウト)、“辛口料理 ハチ”のカレーは、激辛ランキング的には2.5位ということで、なにとぞよろしくお願い申し上げます。



【圏外篇】 “エチオピア”の野菜カレー(80倍)

:わが白水社カレー部が誇る「過激派3人組」のゲキカラ君(G)とすーちゃん(S)とコバチェヴィッチ(K)の3人でお送りする「激辛、カウントダウン!」。今回の執筆担当は、前回に引き続きGです。

 神保町でカレー部修業を始めて、はや10年以上の年月がめぐりました。
 今回は、白水社からいちばん近いカレーの名店、エチオピアを取りあげたいと思います。
 本来ならば、「第8位 “エチオピア”の野菜カレー(80倍)」として、かつて食することのできた80倍野菜カレーのすばらしさを述べたてるつもりではいたのですが、それはまたにします。今回は、最近のエチオピアのカレーの、あの徹底的なまでの“辛くなさ”について、苦言を述べさせていただきたいと思うのです。だうにもこうにも。

   最近のエチオピアのカレーは、辛くない!
 いや辛いんですよ、もちろん。常識的な味覚の範囲内においては。ギュウ詰めの店内を見やれば、たいがいの人が、汗をかきかき、ひーふー言いながら、カレーを口にしています。いまだに、「チキンで、70倍。」とか注文するたび、近隣の座席の方に振り向かれたり、驚きを通り越した呆れ顔を頂戴したりもするし、「調子に乗ってバカな注文してる奴がいるよ」などといった陰口のごとき幻聴に襲われもします。
 
 みなさんは、最近のエチオピアのカレーを、本当に辛いと思ってらっしゃいますか?  辛いと、錯覚させられていませんか?
 これは、長年、エチオピアのカレーを「定点完食」してきた者の、おのれの舌を賭けての発言ですが、ここ半年で――
 辛さのレベルは半減してますね。
 いや、それ以下かも。
 
 つまり、最近の70倍は、半年前でいう20〜30倍でしかないですね。体感として。  あれは3年前。いや、2年前くらいからか。辛さの上限が70倍までと定められたのは。たしかに、上限が設定されれば、それがその店の究極の辛さ、すなわち“激辛”なのであり、一見さんにはおいそれと挑戦できない「壁」とはなりましょう。
 でも、あの“倍数”、信用できないんだなあ。
 “倍数”が設定された当初は、(かつて存在していたけれども廃されてしまった呼称)「大辛」=10倍とのことでした。
 昔は、大辛が食べられるというだけで、女子たちからの羨望の眼差しを集めることができたもんです。たしかに、なかなか食べられる代物ではなかった。つまり、ぼくにも辛く感じられたわけで、そんな大辛の2倍、3倍、4倍、5倍〜のカレーを注文するということは、自分自身をかなりのところまで追い込む、どんなに痛い目にあっても「ナマステー」とほほえみ返さなくちゃいけない、修業の道だったわけです。
 かつて、そのあまりの辛さに「とろけた」80倍の野菜カレーを注文するまで、ぼくも、ずいぶんと逡巡しました。舌の上に貼りつくナスがもたらした強烈な痛みを、いまでも思い出します。あれは、辛かった。痛かった。涙を流しました。
 天井知らずで“倍数”を上げていくにしたがって、どんどん、カレーの表面が、赤く、粉っぽくなっていったものです。最近のとくらべると、ずいぶんと「無骨な」味だったかと。
 それが、そう、辛さの上限が70倍までと定められて以降は、「洗練」へと向かい始めましたね。「定点完食者」が言うんですから、事実です。そして、その絶頂を、ちょうど1年前の2002年9〜10月期に迎えたのを最後に、エチオピアのカレーに心から満足させていただけない日々を過ごす、白水社カレー部の面々がいるのも事実です。
 ちょうど1年前には、激辛カレー好きも満足のゆく、最高のカレーが存在したんですけどね……。あのときは、ほんとうに泣けたなあ。目のまわりの筋肉がかってに痙攣して、涙が出てきちゃうんだもの。
 なのに、なのに、いまや、往時がしのばれるほどのことは皆無。というか、最近の傾向としては、「水っぽく」なってる(スープカレー志向なら望ましいのだが、そうではなくて、高田馬場店の新規オープンやレトルトカレーの発売を手がけるうち、より大衆志向の味つけに「進化」してきているのだと思う)。
 とにもかくにも、辛さのレベルが一定しないわけで、“倍数”には???なのだ。
 どうも最近は、「かつての大辛=12倍」と説明しているふしもあるし。

 「味が落ちた!」などと強弁するつもりはないのですが、(激辛カレー好きにとっての)エチオピアのこの危機的状況、なんとかしてもらいたいものです。
 苦言ついでに、あとふたつみっつ辛言もうしあげるなら―― 

 ライスの炊き方を、おいしくいただけるレベルで一定していただきたい(前にも言及したけど、びちゃびちゃ、ふにゅふにゃしてることが多いので)。これが大前提ね。
 で、食後のアイスは、忘れずに出すよーに。チョコレート味はいらない。ストロベリー味だけでよし。
 
 というわけで、先月までは「激辛ランキング、ベスト10」の8位にランクインしていた“エチオピア”の野菜カレー(80倍)ですが、その“倍数”に信用が取り戻せる暁まで、圏外扱いとさせていただきます。
 かわりに、ランキングの空いた場所には上位からスライドしてもらい、5位に、先月紹介した大阪の名店“ルーデリー”のアヤムカレー(100倍)を加えることにしました。



【圏外篇】 “エチオピア”ふたたび

:わが白水社カレー部が誇る「過激派3人組」のゲキカラ君(G)とすーちゃん(S)とコバチェヴィッチ(K)の3人でお送りする「激辛、カウントダウン!」。今回の執筆担当は、Sです。

エチオピア。
白水社で労働する社員なら、誰一人として、この店でカレーを食わなかった者は居るまい。
社屋から徒歩数10秒。食い物屋としては、白水社からもっとも近いところにある、インドカレー専門店、「エチオピア」。
むかしは、おいしいコーヒーを提供する「ついでに」、カレーも食わせる、喫茶店だった。
「ついでに」のはずが、いつしかカレーのほうがメインの商品となり、店名の由来にもなっていた「自家焙煎エチオピアン・コーヒー」はどーでもいいものとなっていった。
わしが初めて、この店でカレーを食ったのはいまからもう10年以上も前のことになる。いまでこそ、0から70までの倍数で提供している辛味度も、当時は甘口、フツー、辛口、大辛口といった、はなはだ大ザッパな味区分で営業しておった。
わしは元来、辛いものにはメがない。
「ここのカレー、辛いよー」という声を耳にすれば、「わしも食わねば、直ちに、直ちに」という気分におそわれる。
そのときもそうだった。エチオピアのカレーは辛い、という評判は、10年前からささやかれていた。
わしは、当然、大辛口を注文した「わっ、なんだコレ」。
わっ、なんだコレだったのである。「言葉が話せなくなる、発汗は洪水のように、視界はぼやけ、すべての物音がホワイト・ノイズと化す」……これを書いているだけで、鼻のまわりに汗がにじんでくる。
わしは久々に、ハートブレイク・カレーに出会えた、という感慨に打たれたものだった。

それから歳月は流れた。わしはもっぱら、二日酔いの特効薬として「エチ」のカレーを利用してきた。「大辛口」の等級はいつのまにか「50倍」という呼称に変わっていた。まちがいなく、百発百中で、飲みすぎのモーロー感からわしを救い上げてくれるカレーとして、「いいや、飲んじゃえ。あしたエチに行けば済むことだっ」と、20代後半から30代にかけて、わしの酒量をドンドン増大させる役割も果たしてくれた。

この「エチ」が、食券の自販機を導入したあたりから、変化は起こった。
より大量に、効率良くカレーを売りさばきたい、しかも人件費はかけたくない、という商魂の行き着くところ、といえばソレまでだが、なんか落ち着かないのである。
「今日は、何食べよっかな〜ん」と考えをめぐらすヒマが失われたのである。
後ろで後続の客が、1000円札をピラピラさせながら、わしがボタンを押してその場から去るのを待っている。
以前は、「う〜ん、ビーフもいいけど、いつも通り、野菜ね、あっ、チキンとミックスでね、あっ、ルーはやっぱり大盛りね、(夜なら)あ、ココ、ハートランドあるんだよ。1本ね。じゃ、カレーが来るまで、サラダつまんでよっかな〜ん」とか、いろいろくっつけたり、はがしたりして選択する楽しみがあったんだが、ピラピラさせられてると、そのような気持ちの余裕は持ちようがない。
上記の注文すべてを、いちいち札やらコインやら投入してチケットを購入する手間は相当なものだ。ゆえに、最近はあらかじめ何を食うか考えておいて、サイドオーダーなし、カレーのみ、急いでボタンを押して席につくようになる。
(これではかえって、商売にならないんではないだろうか……?)
店主一人きりで営業してるラーメン(つけめん)屋じゃないんだから、券売機はあまりイミがなかろう。「……よし決めた。あのーすいませーん」と店員を呼んでいたころが懐かしまれる。

激辛くんは、昨今の「エチ」凋落ぶりを嘆く際に、その辛さから著しくシャープネスが消え去ったことに力点をおいている。わしは彼ほどの耐辛性を備えていないので、「最高辛度70」という極限ポイントから考察することはしないけれど、たしかに辛さは落ちているといわざるを得ない。だって、わしでも「70」がヘーキで食えるんだもん最近は。先日、「70」を食っていたら、「それ、うまい? っていうか大丈夫ですか?」と、隣席の見知らぬアブラオヤジに問われたので、「ほっとけ!」とも言えず、おもわず「こんのくらいじゃないと、食った気しませんよ、うはははは。」とか、いらぬ遠吠えをかましてしまったが、そんなタンカを吐いてしまえるほど、最近の「70」はシマラないものになってきつつある。この稿を書くにあたって、いまさっきも、ちょいと食べてきたのだが(二日酔いだったせいもあるけど)、望んでいたほどの発汗は得られなかった。以前なら、50倍で汗ダラダラだったのに……。

それはなぜか?
やはり「大衆への迎合」=「辛さ好き過ぎ異常人・ホットマニアの排除」=「より一般の人々に愛される店への変貌のもくろみ」である。
以前はあった、「80倍」を発売中止にしたあたりから、この傾向は兆していた。
それがここ数年の間に、目に余るものとなってきている。
ま、実際、その「改革」(激辛行動隊にとっては「改悪」)は見事に成功し、「エチ高田馬場店」の開店と、「レトルト・エチ」の発売という二大事業へとつながっていった。
そしてそれと歩調をあわせ、カレーはどんどんトホホにぬるくなっていったのだ。
やがて、エチオピアはチェーン展開を始め、ココ一番屋のように、お手軽カレースタンドになってしまうのだろうか?
嗚呼……。

(おまけ:わしが上記のようにオヤジを脅かしていると、偶然にもすぐ後ろの席に激辛くんとコバチェビッチがやってきて、さりげなく「70」を両者とも注文した。オヤジは3人連れだったのだが、みんなよっぽど怯えたのであろう。すごすごと席を変え、わしら「カゲキ派」の前から姿をくらましていった。「3倍ね」「あ、オレ、1倍でいいや」とか口々に言いながら。)



【激辛を離れ東海篇】 最後の出張報告

:わが白水社カレー部が誇る「過激派3人組」のゲキカラ君(G)とすーちゃん(S)とコバチェヴィッチ(K)の3人でお送りする「激辛、カウントダウン!」。今回の執筆担当は、Kです。

入社12年目にしてはじめて、所属部署が変わることになった。これまでは「カレー部営業課」だったのが、「カレー部宣伝課」に異動したのだ。宣伝は内勤なので、営業のように外回りでカレー店に販売促進をかけるということはなくなる。ということで、残念なことに最後となってしまった出張における涙のカレー日誌を、カリー・ホッター部長に提出。(記・コバチェビッチ)
 
○月×日(月)
出張に出かける当日の朝、豪華にカレー2種がけ。といっても昨晩自分で作った残りのキーマとムングダルである。キーマに入れたマサラの量が多すぎたな。こんなにスパイス入れたらもったいない。それにしても最近はあっさりした豆カレーのが好きだったりするから、ワシも年取ったものだ。

昼は松本だったので、普通なら信州大前の「メーヤウ」だが、今回はそこまで行く時間的余裕がない。たまたま通りかかった「ばくばく亭」、よくわからないがカレー屋のようなので入る。ばく辛ハンバーグカレーは、ランチだと980円。かなりのボリュームだが、ハンバーグ自体結構うまいし、かかっているカレーもそこそこ辛いので食が進む。

名古屋に着いたのは19時40分。腹も減ったので手っ取り早く、駅地下エスカのきしめん「よしだ」のカレーなんば(750円)で済ませる。なぜか「なんば」であって「南蛮」ではない。麺はきしめんである。これがなかなかうまいから、名古屋のカレー麺ものは侮れない。

○月△日(火)
普通、朝からカレーは食べない。なのでカレーパンぐらいにしておく。テルミナ地下街のパン屋「カスケード」は、やたらカレーパンの種類が多い。買ったのはマサラカレーパン(120円)。朝4種類あったのにすでに驚いたのだが、夕方通りがかったショウウインドウには、さらに多くのカレーパンが並んでいた…。

岐阜に行って名古屋に帰ってきた午後、ミヤコ地下街(名古屋はやたらめったら地下街が多い)の「タンドゥール」のインドカレー(750円)を食べる。以前は毎日ビルの地下にあったが、ビルの取り壊しのためにいつの間にか移動した、おばちゃん一人でやってるカウンターのみの店。コリアンダーとカルダモンの効きがよい、あっさりとした味。これでご飯がバサバサでなければいいのに。

名古屋といえば味噌煮込みうどんが有名だが、錦のど真ん中にある「龍」の名物はカレー煮込うどん(1380円)である。うどんは煮込み用の太くて固いやつで、八丁味噌も入っているがカレー味、こってり好きな者にはたまらない。場所柄、夜これからご出勤のお姉さんが多く、カレー煮込みと一緒にご飯も頼み、さらにそれをお代わりしているのが逞しい。

○月□日(水)
普通、朝からカレーは食べない。でも、名鉄新名古屋駅のホームには、カレースタンドがあるのだから仕方がない。豊橋に向かう前にエッグカレー(450円)をかき込む。

その後昼飯を食べるヒマがなく、一段落ついたのが午後4時。抹茶あんかけスパなどのオリジナルメニューで知られる「喫茶マウンテン」を目指す。マウンテンの恐ろしさは、その独創性に加えて、まさしく「山」と喩えるしかないような量にある。カレーライスもあるらしいが、せっかくなのでカレーのかかったスパゲッティ、その名も安直な「インディアン」(750円)をオーダー。食べ応えのある太めの麺で、結構うまいんだよな。カップルが大量に食べ残したまま出て行ったが、こういうことをしてはいけない、頼んだものは完食すべし。

夜、瑞穂で名古屋対鹿島戦を見た帰り、競技場からほど近い「ナマステ」でアルパラク(880円)を食べる。ひさしぶりに食べた、まともなインドカレー。でも普通すぎて物足りない。

○月☆日(木)
今朝はカレー食べてるヒマがなかった。なのでまず昼。新栄の洋食屋「香味」へ。名古屋といえばエビフリャーだみゃあ、ということでエビフライカレー(ランチ980円)である。さすがにエビフライが立派だ。しかもうまくて満足。

夕食はホテルの隣にあったカレーカフェ「胡椒亭」なる店でビーフカレー(1000円)を食べる。シルバー人材センターかなにかから派遣された人たちでやっているのだろうか、店員はおじいさんばかり。ウェイターのおじいさんの名札には、「元生花教授」と書いてある。味自体には可も不可もないが、値段が高すぎる。

福井に移動し、夜食カレー。石川県を中心に展開している「チャンピオンカレー」の名物、Lカツカレー(750円)に初挑戦。すごいわこりゃ、「まんてん」(神保町の量で有名なカツカレー屋)並みだ。なぜかフォークしかついていないので、それで食え、ということなのだろう。ところがこれがなかなか合理的で、細く切ったカツとキャベツの千切りとカレーを混ぜやすい。意外にうまいのでびっくりした。

4日間で計12カレー(←バカだな、オレ)。



【第8位】 “メーヤウ”のレッドカレー(プリックナンプラー青唐辛子のみ10杯かけ)

:わが白水社カレー部が誇る「過激派3人組」のゲキカラ君(G)とすーちゃん(S)とコバチェヴィッチ(K)の3人でお送りする「激辛、カウントダウン!」。今回は、ひさしぶりにランキング紹介に戻ります。

 と、その前に、みなさんは「ホットP」という言葉をご存知ですか?
 稲垣足穂の『A感覚とV感覚』や、小社から刊行されているイヴ・エンスラーの本の読者ならばもしかしたら察しがつくかもしれませんが、耳慣れない言葉でしょうね、ふつう。
 尾籠な話で恐縮ですが、俗に、辛いものを食べるたあとに排泄すると肛門が痛くなると言われています。わがカレー部では、その症状を「ホットA」と呼んでる次第です。で、尿道に痛みが走るのが「ホットP」。と説明すれば、わかっていただけるでしょうか。
 激辛好きにとって、「ホットA」なんて朝飯前。というか、慣れっこです。もう、慣れちゃいました。これを克服しないかぎり、激辛好きなんかやってられません。恐いですねえ、人間の慣れって。気がつくと、さらなる刺激を求めてるし……ずきんとくる「ホットA」よりも、じんじんくる「ホットP」って。
 さて、今回紹介するのは第8位“メーヤウ”のレッドカレー(プリックナンプラー青唐辛子のみ10杯かけ)ですが、8位より上は、「ホットP」を“味わう”ことができるんです。“メーヤウ”は、四谷に本店のある、タイカレーの名店です。

 白水社カレー部がよく通う“千代田区猿楽町のメーヤウ”では――
 グリーンカリー(★)→レッドカリー(★★)→カントリーカリー(★★★)、ポークカリー(★★★)→チキンカリー(★★★★) 各750円
 と、辛さマークが★で記されていて、いちばん辛いのはチキンカリーということになってます。  じゃあ何でチキンカリーじゃなくてレッドカリーが激辛ランキングに入っているのかというと、その秘密は、独自オプションの“プリックナンプラー青唐辛子のみ10杯かけ”にあるのでした。この独自オプションを実行すると、確実に辛くなるのですが、メーヤウのメニューのなかでこの独自オプションといちばん相性がいいのがレッドカリー(だと思うのです)。すなわち、“猿楽町のメーヤウ”のチキンカリーはインド風なので、タイの魚醤ナンプラーと馴染まないのです。
 
 独自オプション実行のときは、できるだけ、ナンプラーを入れないようにして青唐辛子のみを投入します。
 ライスの真ん中に穴を掘って、そのなかに、スプーンで山盛り10杯。
 その上に、別碗のカリールーを流し込み、まぜあわせます。ココナッツミルクたっぷりの、さらさら系のルーと青唐辛子の相性は、じつに素晴らしいものです。チキン、竹の子、大根という、比較的淡泊でいて爽やかなる口当たりの具材が、相性を良くしているのだと思います(ほかのカレーにはポテトがごろんと入ってくるので、どうしても口のなかがモサモサしてしまうのです)。
 昼の12時半までに入店すると無料でついてくるラッシー(甘さ控えめのヨーグルト牛乳)も、いいですね。乳糖&かんすい不耐症(でデリケート)なカリーホッター部長は、「お腹がゆるくなるおそれがあるから」と、ここんとこラッシーには手を出しませんが、激辛カレー好きにとって、お腹がゆるくなるとか、こわれるとか、ホットPになるとか……そーいった己れのからだに変調をきたすことはすべて名誉の勲章みたいなものなので、ゲキカラ君・すーちゃん・コバチェヴィッチは、おかまいなしに、今日も飲み干しちゃうのでした。

 以下に紹介するものは、はっきりいって、どれも辛いです。しかも「裏メニュー」&「独自オプション」的なものばかり。ですから辛いものが苦手な方は、お店でオーダーしないほうが賢明です。というか、お店の人から、まず、ストップ入ります。お店の人の「かなり辛いですけど……(大丈夫ですか)」っていう制止のことばを振り切る自信のある方だけ、トライしてみてください。
 ちなみに、しばらく辛さの倍数に信用のおけなかった“エチオピア”ですが、2003年末から、辛さを取り戻してきた(「ホットP」味わえたりする)感があるので、圏外から第8.5位に復帰です。
 「激辛ランキング、ベスト10」(暫定)は、以下の通り――

第10位 “デリー”のカシミールカレー(ベベホ)
第9位 “カーマ”のチキンカレー(激辛よりちょっと辛く&アチャール大量投入)
第8.5位 “エチオピア”の野菜カレー(80倍)
第8位 “メーヤウ”のレッドカレー(プリックナンプラー青唐辛子のみ10杯かけ)
第7位 “トプカ”のムルギカレー(超辛)
第6位 “大沢食堂”のカレー(極辛)
第5位 “ルーデリー”のアヤムカレー(100倍)
第4位 “マジックスパイス”のチキンカレー(アクエリアス)
第3位 “ピカンティ”の開闢(アガリ)
第2位 “TINUN”のバーミーヘン(プリックポン山盛り10杯かけ)
第1位 “カーナピーナ”のマトンカレー(スペホ)



【第7位】 “トプカ”のムルギカリー(超辛)

:わが白水社カレー部が誇る「過激派3人組」のゲキカラ君(G)とすーちゃん(S)とコバチェヴィッチ(K)の3人でお送りする「激辛、カウントダウン!」。今回紹介する名店は、横濱カレーミュージアムに出店して全国区になった、“トプカ”淡路町本店です。

 と、その前に。みなさんは、ダイエットしてますか?
 最近では「カレーダイエット」をうたった本が刊行されたりしてますけど、カレー好きにとって、ダイエットは、なかなかままならぬ問題なのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
 というのも、カレーには(というか、少なくとも、神保町界隈で供されるカレーには)じゃがいもがつきものでして、ライスもポテイトも、低インシュリンダイエットで言うところの「GI値」が高いからです。
 で、今回ランキング紹介する“トプカ”のムルギカリーにも、じゃがいもと、にんじん(GI値高し)が、しっかり入っているのでした。てなわけで――

 それは、まつやの先にある。
 そう、蕎麦の名店・神田まつやから、距離にして10メートルくらいのところ。鉄道マニアの聖地として知られる秋葉原の交通博物館の手前(白水社の方角から足を向けた場合)に、“トプカ”淡路町本店は、ある。
 昔ながらの小さなスナック風の、スモークガラスに囲まれた、一見とっつきにきそうな、個性のある店構え。靖国通りからは1本裏だけど、道路に面しているし、(まつやよりは少ないが)店の前に行列ができていることもあるので、行けば、すぐわかります。オレンジ色の「お品書き看板」と、ふしぎな「置き人形」が目印です。
 “トプカ”は、神保町界隈のカレーの名店のなかで、おそらく一番、メニューの充実したお店です。つまり、カレーの種類が豊富なんですが、印度カリーだけでなく欧風カリーも出すので、辛いのが苦手な人でも安心してマイルドなカレーを楽しむことができます。ちなみに“トプカ”淡路町本店は、夜は居酒屋に変身し、ホッピーや焼酎が飲めます。ツマミの充実ぶりはもちろん、カレーの注文も受けつけてくれる(ルーのみも可)ってのがうれしいですね。このへんは、神保町の“櫓(やぐら)”にも、見習ってもらいたいところです(櫓はそもそも居酒屋なんだけどランチタイムのみカレーを出すようになり評判になったお店で、昼はアルコールの注文は受けつけず、夜はカレーの注文を受けつけない)。
 
 “トプカ”といえば、何はさておきムルギカリーでしょう。はじめての人は、食券を買うときに「辛いよ〜」と言われちゃう、あのチキンカレーのことです(ムルギって、ベンガル語で「鶏肉」のことなんですね)。
 さらさらしたルーが特徴的な、“スープ感”のある、絶品印度カリーです。
 
 いつもは、ランチタイムに、基本的にはムルギカリーの「大辛」(850円)を食してます。
 入り口のレジで食券を買うとき、「ムルギを、大辛で。」とバングラディッシュ人のお姉さんに注文します。めったに頼む人はいませんが、“ぜんぜんオッケー”な注文の仕方です。お姉さんは食券に赤鉛筆で「大から」と書き込んでくれます。
 で、「超辛」ですが、これは、いわゆるランチタイム(12h〜13h)には注文できません。
 この「超辛」、(わかる人にしかわからない表現で恐縮ですが、このごろ見かけない)大きいほうのバングラディッシュ人のお姉さんが、激辛好きな白水社カレー部員のGを見かねて、つくってくれた裏メニューなのでした。「13hすぎなら、大辛よりもっと辛いのつくってあげる」と。つまり、ランチタイム(12h〜13h)は忙しいからダメだけど、その時間をはずせば、少し手間をかけて、激辛カレーをつくってあげる(ように厨房にかけあう)よ、と。値段も、追加料金なしの850円で。
 でも、注意しなくちゃいけないのは、ムルギカリーって、昼時はだいたい14hまでには売り切れになるってこと。だから、ムルギカリーの「超辛」を頼むとしたら、13hすぎ〜13h30くらい(の混んでない時間)に注文するのがよいのですね。
 ちなみに、小さいほうのバングラディッシュ人のお姉さんは、先日、「大辛の大辛」として注文を受けてくれました。さて――

 それは、にんじんの陰にひそんでいる。
 そう、辛さの源、というか、ダイエットに効果ありと喧伝されるカプサイシンを含んだ赤唐辛子のことです。
 これは“トプカ”に特有なことなのですが、「大辛」にしろ「超辛」にしろ、「いっちゃってる系の注文」をすると、“だま”になった赤唐辛子の姿を目撃できます。これってほんとに普通のムルギカリーより辛くなってるのかなー? と疑心暗鬼になりながら食べ進み、発見したときには、ギョッとします。
 しかも、それが、にんじんの陰。ダイエットにいいのか悪いのか、よくわからない感じが、素敵です。まあ、“トプカ”のムルギカリーの場合、じゃがいも(大きい)も、にんじん(薄い)も、固めなので、それを口実に残す、という手もありますが……。
 とにもかくにも、“だま”になった赤唐辛子を一気にすくって口のなかに放り込むと、辛いもの食べてる気分を満喫できます。サプリメントを大量摂取してる感じも味わえ、なんだか、カプサイシンの効能にあやかれそーな気もしてくるってもんですよ。つーか、自己暗示かかってます――アミノ酸摂取&有酸素運動のままならない面倒くさがり屋には、最適の「脳内ダイエット」だぞと。
 健康マニアには、食後は淡路町交差点方面、りそな銀行の隣の「青汁スタンド」も、おすすめですけどねッ。



第6位 “大沢食堂”のカレー(極辛)

「大丈夫? 食べられる?」
マスターはわしらにそう問いかけた。去年の春のことだった。
「もちろん。お願いします」
へへん。俺たちを見くびるんじゃねえぜ。
っていうか、なんだこの店。「レバニラ定食」とか「チャーハン」とか「おつまみセット」とか書いてある。フツーの、町の悲しみ定食屋兼呑み屋のたたずまい。
ここでホントに、本格的なカレーが食えるのか?
そのカレーだが、「小辛」「中辛」「極辛」に分類されたメニューをそろえている。
わしらは、もちろん、「極辛」を注文したのだ。
先ほどのマスターの問いかけは、この注文への「警告」なのである。


どう見てもただのメシ屋。築40年くらい。
ここは豊島区・巣鴨。ホントか? ふっと、地方小都市の場末の酒場街なんじゃないか、と錯覚してしまう。大月とか、郡山あたりの。
でも、わしらの聖典『神様カレー』(東京カリー番長・編)にはしっかり載っているのだ。
しかもこの店、ちょっと前までは「午後10時開店、午前7時閉店」とかいっていたのだ。
そして、極めつけは、店を入ってすぐ目につく、巨大な写真。
ボクサーが、チャンピオンベルトを締めて、両手をあげ、ガッツポーズをしている。
ああ、よくわからない。

そして、なんと、ガッツポーズをとっているのは、他ならぬマスター自身なのであった。
その写真で青年が湛えている満面の笑みと、わしらの眼前で厨房を切り盛りしているオヤジのにこやかな表情には、たしかに相通うものがある。
元チャンピオン・ボクサーの作る、極辛カレー。
なんか、迫力ありませんか?
そしてコレが実際、「辛い」というより、「イタイ」。
まず、食べ始めて2分ほど経つと、大量の発汗がみられる。コレはいずこの激辛でも同じ。
しかしここ、「大沢食堂」の極辛は、食べ終わるなり、わずかにうずくのである。胃が。
「ビビッてねえよ」とクールに構えていたわしは、「やられたっ」と思った。
そしてなんといっても、ここのカレーにはアツアツのみそ汁がついてくるのだ。
これがヤバい。極辛の嵐から身を避けるため、このみそ汁にビバークする者に災いあれかし。
みそ汁をクチにしたとたん、辛さ倍増。
「ああ〜ん? カレーにみそ汁〜? なめてんじゃねえよ、いくぜっ」
とゴングが鳴るなり突進した者は、カレーに一撃をくらう。
「しまった。辛い。辛すぎる」とみそ汁のコーナーに逃げた者は、追い打ちをかけられてダウンする。
このみそ汁は、さしずめマスターの「両手ぶらり戦法」なのかもしれない。


こうして、マスターのダブル・クロス・カウンターパンチをくらった無謀な挑戦者は、今日もチャンプの眼前で、リングに沈む敗者となるのだ。

…しかし、白状すると、信じていなかった。
こんなダルなフンイキの店で、旨いカレーが食えるとは。

しかし、これはムカシの話。
「大沢食堂」は、最近、リニューアル・オープンした。
わしはカレー部長カリー・ホッター師の入手した情報をもとにした特命を受け、勇躍、新規開店なったばかりの店舗を偵察した。
場所は、巣鴨から、千石へ移転。店も明るくキレイで、往時の悲しみが失われたのは惜しいが、マスター(というより、「おやっさん」と呼んだ方がふさわしいかも)の独特の笑顔(ちょっとあばた顔のところがまたいい味だしてる)は健在。
そしてもちろん、「レバニラ」もあるし、「納豆」も「しらすおろし」も食べられる。
厨房には若い兄ちゃんもいる(ちょっとわし好み)。
マスターのガッツポーズもそのまま飾られている。よし、これなら大丈夫だ。
そのとき、おっ、とわしは目をみはった。
カレーの辛さ等級に、あらたに「大辛」というのがもうけられている。
カテゴリーの多様化だ。気になる。
しかし、わしは特命を身に帯びている以上、あくまで「極辛」の確認をせねばならぬ。
さっそくわしは極辛にかぶりついた。「あ…っ」これも健在だ。辛い…ひー。イタイ。
汗まみれ。鼻水まみれ。

そのとき、ひとりの客が「ごちそうさ〜ん」とすずしい顔で出て行った。
若い兄ちゃんがマスターに声をかける。「あの人、すごいよねー。いつも、汗ひとつかかずに食ってっちゃうんだから」何ですと!
わし:「えっ、それって、極辛をですか」
兄ちゃん:「そうですよー。ぺろっと。もういちいち「大丈夫ですか? すごく辛いですよ」なんて言ってるのがバカバカしくなりますよー」
わし:「……(う〜ん、わしのオフィスにもそういうのが約1名おるなあ)」
マスター:「まったくなあ。もう、味覚とかないんじゃないかな」
兄ちゃん:「っていうか、世の中広いんだ、ってことっすよね(笑)」
マスター:「毎日食いにくる人もいるんですよ最近は(ニコニコ)」
わし:「どうなっちゃったんでしょうねえ」といいつつも、(いやいや。じつにイイハナシを聞かせてもらった。部員たちに楽しいみやげバナシをもって帰れる)とココロの中で呟くわしであった。

商売繁盛はもちろん目出度いことである。たとえ、このような「いっちゃってる」カタチであれ…。 周辺にはなかなか旨そうなフレンチやイタリアンも散見される。高級スーパー「Santoku」もある。巣鴨にくらべて、環境も地の利も格段に向上した。客層も、大きく変化したに違いない。
「この写真、カッコイイですねー」と言い残していく若い女性もいた。
よしっ!
あらたな勝負に出たマスター! ファイト! カレーの王座も死守するのじゃっ! キング・オブ・激辛に王手をかけろ!
(ま、「あはは、ウチはただのメシ屋だよう。そんなおおげさなことやめてくださいよー」とニコニコかわされてしまいそうだけどね。ああっ! 愛してる!)


追記:ここには「カレーラーメン」もあり、やはり上記の等級でラーメンにルーがかけられて供される。マスター談:「ちょっと、ゴハンのカレーより、ルーは少なめになりますけどね」次回はコレにも挑戦だな(でもまた負けるだろうけど)。
「大沢食堂」 文京区本駒込2-1-5 都営三田線 千石駅から東洋大学方向へ徒歩5分



第5位 “ルー・デリー”のカレー(100倍)

大阪。何度来ても、旨いもんにありつける街。
この間の出張でも、さまざまな旨いもんに出会うことができた。
しかも、今回は前回につづいて、原稿執筆の特命をおびている。
大阪でカレー。(おでんでも、お好み焼きでも、どて焼きでも、串揚げでもなく。)
これは初めての体験だ。さっそく報告しよう。

以前、この連載で「激辛くん」がこの店にて「100倍」を食べたという報告がなされたことがある。
彼はとにかく、その耐辛力において他部員を大きく引き離している無敵の存在だ。
その彼が100倍。
特命ゆえ避けられぬとはいえ、はたしてわしなどに食えるだろうか。
しかし、そう危惧する一方で、わしの耳にささやきかける、ひとつの声が響いた。
わしのカレー幻想の中だけに棲む、暴君カプサイシン大王の託宣である。
「カレー部過激派の名折れよのう…その程度で二の足を踏むとは…せっかく西国の地にはるばる来たのではないか、さあ、ためらわず、食うのじゃ」
大王は、わしが辛いモノに畏怖の念をいだくと、ときおり現れては、うめくような声でわしをそそのかす。この数年来、いつもこの調子だ。
「またアンタか…誰なんだよ、いったい…」
「さあ、食うのじゃ」
「しかし、100倍だよ。ここは辛くすればするほど、その分、値段も上がるんだ。100倍っていったら結構な金額になる。今日は「のぞみ」のグリーン車のチケットを買って東京へ戻ろう、というスペシャルな計画もあるんだよ。あまり金は使いたくないの」
「だめじゃ、食うのじゃ。ホレ、エビスビールがメニューにのっておるではないか。お前の大好きなエビスの中ビンで、辛〜いカレーを飯も食わずに思うサマ流し込む。どうじゃ。旨そうじゃろ?」
そうか…エビスか…そして、ルーをツマミに、グイっと…。
「ああ…ソレは、イイかもね」
「そうじゃろ? ホレ、食うのじゃ。100倍などと言わず、それ以上を頼むのじゃ」
そしてついに、わしは注文した「野菜カレー、150倍で」。

さて、実は今回、わしには2人の同行者がいた。
ひとりは劇団「浪花グランドロマン」の代表者、F島師。もうひとりは、ここへ来る途中、天神橋筋でバッタリ遭遇した、F島師の知り合いで、高校にてフランス語を講じていらっしゃる、Y田さんである。
Y田さんは「1倍」を注文された。
F島師は、というと、わしの注文を聞いて「あ、ボクも、それ」150倍。
F島師も、エビスをたのむのだった。

Y田さんの「1倍」。わしとF島師の「150倍」。
くらべた。もちろん、色合い・香り・赤味、全然違う。
「あーっ! 1倍でも、十分辛いですわ」Y田さんが叫ぶ。
「どれどれ」わしはその「1倍」を味見する。「コレ、ただのシチューですよ、ほとんど」
「えーっ、信じられんわ、これで、十分辛いやん」
そういって、Y田さんはラッシーに逃げ場を求める。
「いえ、それは単なるシチューです」
そうウソブいたわしはオモムロに150倍に食らいつく。うむ。コレは…辛い。
そう。辛い。十分。しかし、「まだいける」とも思えるのだ。
150でこの程度なら、100なんて、ぜんぜん問題ないんじゃないか。
先月の「大沢食堂」の極辛のほうが、よっぽどキツイんじゃないか?
そうか! 大王! ひょっとしてわしは、はからずも「激辛くん」を超えたのか?
「わはははは。そうかもしれんのう。だから言ったのじゃ。それ以上を頼むのじゃ、と」
よーし、飲むぞ、ルーを。こうなったら飯はもはや、全残しだっ!
わしは瞬時に150倍を飲み干した。
大王! アンタのご加護のおかげだよっ! もしかして、大沢食堂での、マスターとの忘れがたい一騎打ちが、修練の成果をあたえてくれたのかも!
「ああー、もう食えん。ルーだいぶ残してしもたわ」
F島師がうめいている。汗みずくになっている。もちろん、わしもダラダラだ。
けれども、わしは勝利の美酒に酔っている。とにかく、150倍ルーを完食したのだから。
もう一杯、エビスをグラスに満たそう。
チアーズ! これで思い残すことなく、大阪を後にできる。

そしてわしは、望み通り「のぞみ」のグリーン・カーで東京駅に凱旋した。
もちろん、車中で蓬莱551の豚まんを2個、そしてチューハイを2本、味わいながら…。

後日、「激辛くん」に、このテンマツを報告した。
「150倍、だいじょぶだったよ(ふっふっふっ)」
「あ、そうですか」
「おいしかった。ホント。こんどキミも、もちっとランク上げてみたら、どうかね」
「そ。そうなんですよ。まったくねー。100倍じゃぜんぜん物足りないんですよね。たぶんボク1000倍台オッケーだと思うんだけど、いかんせんカネかかりますからね。総額1万こえちゃうし。カレーに1万なんて、やっぱ払えないっしょ?」
「はにゃにゃっ? そうなのかにゃっ? まいったにゃー」
わしの場合、150倍、エビス中ビン。しめて2700円なりー。
激辛くん、単に、お金が惜しかっただけなのね…。

「よーし。それでは、次回大阪出張の際は、1200倍に挑戦じゃ。カレー部激辛の頂上を窮めるまで精進アンド特訓じゃ」
大王のささやきが、ここ神保町にまで、妄想の中で響いてくるのだわ…。
ああ、もう、カンベンして…。

(注:「ルー・デリー」での最高記録は、現在のトコロ1100倍とのことです。1200倍に挑んだ人もいたそうですが、完食には至らず挫折、との店主のお話でした。見事1200倍完食に成功された方は、ぜひご一報ください。ただちに「激辛くん」が急行し、1300倍に挑みます。)

「ルー・デリー」東心斎橋1-18-2 アオキビル1F 06-6245-9430



第4位 “マジックスパイス”のチキンカレー(アクエリアス)

遅々として進まぬ激辛ランキングではありますが、とうとう第4位までまいりました。
現在のスープカレー・ブームの火付け役的存在が、マジックスパイス(略してマジスパ)です。
このコーナーをご愛読くださるような方に今さら「スープカレーとは何ぞや」なんてことを解説するのは失礼でございましょう。
簡単に申し上げると、ドンブリになみなみと注がれた具だくさんのカレー味スープに、スプーンで掬ったご飯を浸して食べるという、あんまり上品には聞こえないシロモノであります。
以前TVで私の大好きな優香嬢が、丸金(並木橋などにある博多ラーメン屋)のスープに蓮華で掬ったライスを浸して食べるとウマイなどとのたまってるのを耳にしたときは、これだからあき○野育ちのヤ○キーは……と嘆かわしく思ったものですが、自分ではよくやります。
あんなような感じです。
辛さについては、バックナンバーの第10回をご参照ください。
当時まだ修行不足であった我々の舌や菊部が、その衝撃的な辛さでどれほどのダメージを受けたか、思い出すだけで泣けてきます。

さて、マジスパの「アクエリアス」が今回のお題ですね。
しかしなんちゅう名前でしょうね。
マジスパでメニューにある一番辛いレベルは、「虚空」といい、これまたヘンな名前です。
これだって辛さ的には、食べる前にお店の怪しいエスニック調コスプレお姉さんが「行ってらっしゃいませ」と耳元で囁いてくれてくれるくらいで、十分しあわせなのですが(辛さが、ですよ)、裏メニューには「虚空」に青唐辛子100本を加えた「アクエリアス」が存在します。
「アクエリアス」なんていうと、どっかのスポーツ飲料みたいでさわやかそうですね。
でも、スポーツ飲料は汗をかいた後に飲むのですが、こちらの「アクエリアス」は食べると(普通の体質なら)汗をかくあたりが大分異なります。
ちなみにスポーツ飲料の方の「アクエリアス」のサイトを見てみたら、「英語で星座の水がめ座を意味します」とありました。
なんで「虚空」の次が「アクエリアス}なんだろう?……「聖闘士星矢」っぽい感じ?……もしや下村泰山社長が水がめ座とか?

まあいいや。
2年前札幌で「虚空」を完食し、我々が征服すべき次の山は「アクエリアス」であると誓ってから、どれだけの歳月が経ってしまったことでしょう。
マジスパが「東急東横店(あるいは吉祥寺東急とか池袋西武とか)の北海道物産展に出店する!」という情報を入手しては馳せ参じるのですが、通常メニューよりも唐辛子100本余計に使用する「アクエリアス」は限定メニューでして、サラリーマンの駆けつけることのできる夕方には売り切れてしまっているのでした。
品切れ後に注文可能な最大レベルは、「虚空プラス50本」というもの。
「虚空」に唐辛子50本をプラスした、という説明するのもバカらしい、そのまんまなヤツです。
仕方なしに「アクエリアス」と「虚空」の間で名前もつけてもらえない「プラス50」を食べながら、まだ見ぬ「アクエリアス」がもたらしてくれるであろう至福を夢見るのでした。

ついに「アクエリアス」への挑戦権が与えられたのは、昨年の暮れのことでした。
これまで札幌以外では、デパートのイベントや横濱カレーミュージアムなど短期間の出店しかしていなかったマジスパが、とうとう下北沢に店舗を構えたのが03年8月。
下北ならいつでも行けるやーとか思っていると、逆になかなか行かないものです。
あと、週のドまん中の火・水定休というのも、うまく外すのが難しいところがあります。
駅前の喧噪を離れ、住宅街がはじまる閑静なロケーションに唐突に現れる赤いきらびやかな外装のマジスパ下北沢店。
開店景気も一段落したのか、雨の月曜の昼過ぎだったせいか、それほど混雑しておらず、初挑戦の舞台は整ったぜ、と勝手にひとりで闘志を燃やします。
下村社長の息子が店長であるこの下北店にはオリジナルのシーフードカレーもあるらしいのですが、いいんですよ具なんてチキンで、「アクエリアス」さえ食えれば。
頼むものが決まっていても一応、メニューを見るふりはするのですが、ありゃ? ちゃんと「アクエリアス」って書いてあるじゃん。
もはや裏メニューでもなんでもない、一般人が平気で食べるものなのでしょうか。
コスプレお姉さんに「アクエリアスは注文できますか?」と尋ねると、「はい、できますよー」とすんなりオーダーが通って、ますます「アクエリアス大衆化」への疑念が強まります。

運ばれてきた「チキン・アクエリアス」は真っ赤でした。
コスプレお姉さんの「食べ方はご存知ですよね? では、行ってらっしゃいませ〜」を合図にスープを口へと運びます。
(ズズズッ)……濃いな。
辛いというより、濃度が濃い。
二口目はライスを浸してみますが、濃いのでうまくなじんでくれません。
やむをえず、正式な作法に反して、ライスをスープに投入してみます。
(ゾゾゾゾッ)……なんか、クッパみたい。
もともとスープカレーは野菜がたくさん入っているのですが、マジスパは根菜類だけじゃなくて葉モノも多く、唐辛子の大量投入によって濃度を増した状態は、チゲ鍋にご飯を入れたときのようでした。
これはこれでうまいですし、辛さは「プラス50」よりもさらにアップして食べ応えはありますが、スープカレーとして楽しむにはちょっと無理があるなあというのが正直な感想です。

会計の際コスプレお姉さんに「ほとんど汗かいてないですねーすごいですねー」と無意味に感心されますが、実際には額にうっすら、ちゃんと汗出てます。
これを食べて発汗量が0.1ミリリットルもないのはゲキカラ君ぐらいで、彼は遠い星から来た人なのですから。
「アクエリアス」は一般化しているわけではなさそうです。
地球の平和と北沢の住宅街の静寂が守られていてよかった。
それよりも下村ジュニアよ!
辛さは「アクエリアス」で、旨みとスープ濃度は「虚空」のままのスープカレーをつくるのだ!
それを成しえたとき、君は父親を超えたと言えるだろう。
まだ若い彼の成長をあたたかく見守りたい、そんな自分の思いやりに、辛いもの食べたわけでもないのに胸が熱くなるのでした(本当は札幌遠くて行けないだけ)。

マジックスパイス
札幌本店 北海道札幌市白石区本郷通8丁目南6-2 TEL 011-864-8800
下北沢店 東京都世田谷区北沢1-40-15 TEL 03-5454-8801



番外編 “ジャイ”のカレー

わが白水社カレー部が誇る「過激派3人組」のゲキカラ君(G)とすーちゃん(S)とコバチェヴィッチ(K)の3人でお送りする「激辛、カウントダウン!」。
今回は、ひさびさにカウントダウンから離れた番外編。先日、山形に行って来ましたので、「カレー in 山形」のレポートです。

山形でおいしいものといえば、食通の方ならまず、ソバをあげられるかと。あとは、ウシね。そして果物なら、佐藤錦とか、スイカとか?
で、もちろん、われわれ「過激派3人組」も、そのすべてを堪能してきました。
が、ソバの名店“萬盛庵”(旅篭町)よりも、和牛料理の老舗“佐五郎”(香澄町)よりも、冷やしラーメンの元祖“栄屋本店”(七日町)よりも、見た目にも舌目にもわれわれの印象に残ったは―― インド料理とカリーのお店“ジャイ”(七日町)。
http://jay1.at.infoseek.co.jp/

北インドの伝統的な野菜料理や、ムガライ宮廷の流れを汲んだ肉料理を食べさせてくれるお店です。なんでも、深夜テレビ番組の黄金時代を築いた『11PM』の「なんでもランキング・カレー部門」でNO.1の座に輝いたこともあるとのこと。

金曜日の夕方発の新幹線「つばさ」で山形に向かったわれわれは、ステーションホテルにチェックインすると、タクシーで七日町に向かった。
もう、オーダーストップ間近、というか閉店間近だったのだけど、はるばる東京から来たのだからというプチ傲慢な心持ちで、お店に招じ入れていただいた。

豊富なメニューに目移りしてしまったけれども、そんなときのわれわれの決め台詞はといえばもちろん、これだ。
「いちばん辛いのください」
がしかし、店主曰く、“ジャイ”のカレーはあまり辛くないのだという。しかもダブルパンチのように、次なるお言葉。
「インドでは、もう、辛いカレーは流行ってないんだよ」
がーん。そうなんッスか。最近ではインド人も、辛さ的に退化してるんですか。これは勉強になりましたというわけで、辛くないことを承知の助で、3種類のカレーを注文。

辛くはない。けど、どれもうまい。
辛くないカレーを、青唐辛子をかじりながら食べる。それが、最新のインド流とのことだ。赤唐辛子まみれの青唐辛子は、じつに、いい感じに激辛。沖縄料理の泡盛漬けの青唐辛子とも、韓国料理で出される青唐辛子とも違う。あたりまえだけど。

すーちゃん曰く「山形にいる感じがしない」という、中央線マインドあふれる室内空間。
店内を見わたせば、「唐組 仙台公演」のチラシが壁に貼ってある。
聞けば、店主は、ゲージツカの篠原勝之さんの旧友だそうで、そのKUMAさんとの縁で、劇作家の唐十郎さんとも古くからの付き合いらしい。インド哲学にも造詣が深いみたい。
唐組の公演にカレーを大量にデリバリーしたりもするとのことで、いわば「唐組、カレー部」だ。
われわれも唐さんとゆかりがある、というか、唐さんの本を出させていただいているなどという話をするうち、店主も次第に心を許してくださったようで、何やら秘密の巻物のようなものを見せてくださる。そこには店主の香辛料研究のすべてが書き込まれているようだった。やはり、おいしいカレーをつくる人は、スパイスの求道者なのだった。
奇遇な盛り上がりによろこんだわれわれは、アルコールもしこたま摂取しつつ、「明日もまた来ます」とか言ってお店を後にしたのだが、後日、次のような手紙が会社に届くことになる。

〈先日は御来店ありがとうございました。次の日も来てくれるとのことだったのでメニューにない“きのこの宮廷風貴族料理”を作って待ってたのでしたが残念でした。〉

はひー。ごめんなさい、由利三さん(店主のお名前、何てお読みするのでしょう?)。店主が東京の井荻(井草地区区民センター)で隔月で開催している「男のインド料理教室」にいずれお試し受講にうかがいたいと思いますので、ご寛恕くださいませ。

追伸 カレーの名称や値段についてはメモしてこなかったのであれですが、どなたかおわかりになる方、ご教示ください。



番外編 “エチオピア”の100倍カレー

エチオピアの激辛カレーを定点完食しつづける我々にとって、エチオピアのカレーの倍数は、他店のカレーの辛さの度合いを測るときの目安にもなっています。「あ、これはエチオピアの50倍以下でしょう(悲)」とか、「エチオピアの70倍、超えちゃってるでしょう(喜)」とか。

ただし、以前からお伝えしているとおり、かねてよりエチオピアの倍数には“揺らぎ”があるため、そのときどきに応じて辛さの目盛りを微調整しなければならないところが難点でした。「あ、これは先月のエチオピアの50倍以下でしょう(シ戻)」とか、「先々月のエチオピアの70倍、超えちゃってるでしょう(火暴)」とか。

しかし、2003年の末からは辛さを取り戻してきた(「ホットP」を味わえたりす る)感もあり、ここのところ倍数も安定しているようです。

というわけで、HOT胸をなで下ろしていた我々に、さらなる悦ばしき事態が!
すーちゃんが、次なる情報を、カレー部の部室(というか、プリンターとコピー機のあいだの通路)に持ち帰ってきたのです。

 「バンド仲間の彼女が、エチオピアでアルバイトしてたのよ。で、その子に聞いた話によるとね、エチオピアのカレーは120倍まであるんだって。つーか、バイトしてる人のなかに、やっぱ辛いもの好きがいて、“まかない”として作ってくれるんだって。」
 「そそ、それは、ババ、バイトの人じゃないと、食べられないのかね?」
 「らしいのよー。しかも、社長の鈴木さんがいるときじゃないと、作れないんだって」
 「あ、そう。じゃあ、一日体験バイトでも、する? ぜひとも食べたいけど、手強いなあ」
 「それがね、その女の子が言うには、『私がバイトしてるときなら、社長に頼んで、作ってあげますよ』だって!」
 「ほんと!?」
 「ほんとにゃー。行くにゃー。」

てなわけで、行ってきました。ゲキカラ君、すーちゃん、ホッター部長の3人で。
すーちゃんの知り合いの女の子の厚意に甘えて、つーか、辛えて。

残念ながら120倍は作ってもらえなかったけれども、100倍は作ってくれました。
もう、すでに何回か食す機会に恵まれましたが、100倍対応は1人までということなので、ゲキカラ君とすーちゃんとで交互に100倍をオーダーしている次第。
我々の注文は基本的に――
 ゲキカラ君: 野菜カレーかチキンカレー
 すーちゃん: 野菜・チキンのMIXカレー(ルーのみ、大盛り)&ハートランド
 ホッター部長: 野菜カレー(15倍厳守!)&豆サラダ

初回はすーちゃんの、ルーのみ・大盛り・MIXカレー100倍。

「トマトも3つ入っちゃったよ!」
「おお! なんか、心持ち、色が赤いわねえ。」
「心持ちじゃなくって、じゅうぶん赤いがな。」
「どう?」
「うん。……70倍より辛い、のかな。よくわからないにゃー。ま、食べてみて。」
「んんん……さほど辛くはないね。往年の80倍のほうが、100倍感はあったね。」
「あほや、この人たち」

2回目はゲキカラ君の、野菜カレー100倍。

「お! ガラムマサラが飛び散っちゃってるよ、ほら。カメラさん、この部分、クロースアップしてみて。“寄り”で押さえといてね。なんか、往年の大辛を思い出すね。」
「たしかに、昔は、辛くしてもらうと、ガラムマサラがやけに粉っぽく浮いてたね。」
「で、美味しくなかったんだよね。いやあ、期待できるなあ。…………あれ!? ふつうに美味しく食べられるじゃん。てゆうか辛くもないよ。」
「ほんとですか? じゃ、わしにも。」
「いかが?」
「これは、辛いわよー。わたしなんか、もー、ひとくちで汗が出てきちゃう。」
「不味さに片足つっこんでないと、だめなんだよね。」

ゲキカラ君は「てゆうかさ、普通に美味しいだけじゃダメでしょう」と言いながら涼しい顔で完食。
汗まみれのすーちゃんは、スウェット、およびノーズウォーターも、皿の中にしたたらせつつ完食。
微妙な倍数を愛するホッター部長も、同行者2名に唖然としつつも毅然かつ悠然とした態度で完食。
さて、のこる写真はチキンカレー100倍なんですが、以下、次回に続く――。


番外編 “エチオピア”の100倍カレー その2「ふしぎな縁(えにし)の綾なす店たち」

 わが白水社カレー部が誇る「過激派3人組」のゲキカラ君(G)とすーちゃん(S)とコバチェヴィッチ(K)の3人でお送りする「激辛、カウントダウン!」。今回は、前回登場した“エチオピア”の100倍カレーをめぐり、中央線沿線で展開する人間模様の一挿話です。
西荻窪に「まるや」という、「らーめん わんたん」と看板に記されてはいるが、ぜんぜんラーメン屋には見えない店がある。とくに最近は、とみに「ラーメン屋」の印象からますます遠ざかりつつある(マグロのカルパッチョなんて絶品。ツケモノ類も最高。夏はゴーヤのスライス揚げネギまぶしが旨し)。わしはよくここへ来て酒を呑むのだが、でてくるビールは「ハートランド」一本槍。うう〜ん。フツー、「ラーメン屋」といえば、「サッポロ」の黒ラベルがいいとこで、「アサヒスーパードライ」なんぞでお茶を濁すのが精一杯なところだろう。ま、せいぜい気張って、「エビスビールあります」とかのぼりでも出すのだろうけど。でもここ「まるや」では、「ハートランド」を供するのである。最初にこの店のノレンをくぐって、このビールが出てきたとき、「あ、こりゃナンかあるな…」と直感し、その後通い続けるようになったのである。
さて、このへんでカレーの話に移ろうか。今回の番外編は、前回に引き続き、「エチオピア 100倍カレー」にかんするレポートである。
そもそも、このカレーは、前回もゲキカラくんが書いていたように、メニューには存在しない。したがって、お店の人も、「は〜い、チキンと野菜のMIX、70倍になりま〜す」と言って持ってくる。そのあと小声で「100倍ですから」と他の客に聞こえないように呟いてそそくさと去っていく。裏技メニューゆえに、「公式提供」としてはあくまで70倍、というタテマエにもとづいているのである。
わしはカレーうどんは大好きだが、飯にカレーをかけるのはカレーの正当な食べ方だと思っていない。飯はいらんのだ。飯で食うよりは、やはり「ビール」との取り合わせがいい。
ここ「エチオピア」でも、わしはビールをやる。その場合、「カレールーのみ ルー大盛り」でいく。で、そのルーが100倍。これはキク。おすすめの取り合わせである。
で、ここからがハナシのキモなのだが、「エチオピア」で出してくるビール、コレがまた「ハートランド」なのである。
サイコーではないか。前述の「まるや」でもそうだが、「本来あるべからざる処に、あるものが確かにある」ことのヨロコビ。ラーメン屋やカレー屋がさりげなく「ハートランド」を出してくる新鮮さ(この感情は、蕎麦屋だとあまり湧いてこない。「あ、店主も、モノをわかって出してるのよね」ぐらいの感慨程度である。たとえば、阿佐ヶ谷の蕎麦店「庵」がコレである)。
「エチオピア」がらみでは、この夏、二人の関係者と知り合いになった。お一方はこの店で偶然にも配膳を担当していた、中央線沿線を中心に活動し、わしも参加させてもらったことのある、すばらしいバンド「俺はこんなもんじゃない」のキーボード・プレイヤーであり、もうお一方は、なんと店長にして厨房担当の人…。このお二人のおかげで、白水社カレー部行動隊は、「店員まかないメニュー」である100倍嗜食の恩恵にあずかっているのである。
そしておどろくなかれ、他ならぬ100倍を調理してくださるこの店長は、「まるや」の常連にして、「まるや」マスターの調理問答仲間なのだった。ある日の深夜、わしが「ネギわんたん」とゴーヤで芋焼酎をやっていると、マスターが声をかけてきた「ホレ、このオトコ、あんたの会社のそばのカレー屋に勤めてンだよ」「えっ、ドコですか、神保町カレー屋多いッスからねえ」「エチオピアって、ご存知ですか?」
「ご存知」どころではないのである。人の出会いとはフシギなものである。この人も西荻窪に住んでいるという。
それ以来、「まるや」には、この方が現れる時刻をえらぶようにしているわしである。
「100倍? アホかオマエはっ! 味覚が死んでるんだよ」と、味の世界を渡り歩いてきたマスターに、いつも叱られているのだが…。
(ちなみにこのマスター「オレの作るカレー食ったら、他のカレーなんて食えなくなる」といつも豪語しています。店のお品書きには「カレー」は無いんだけども…。)




番外編+第3位 北海道“ピカンティ”の5番・「アガリ」

これは、あるひとりのカレー部員が、北の国に単身乗り込み、札幌の名物として知られる「スープカレー」を堪能せんとする旅の、その記録である。

場所は北海道大学そば。
札幌駅からほど遠からぬ場所だ。
やはり10月のサッポロは寒い。寒いが、やはりサッポロに来たからにはサッポロビールだ。さっそく飲もう。
ごきゅごきゅごきゅ。
「うまい…」生ビールを注ぐのは、ごくフツーの、若い娘さんである。こんなフツーの娘さんなのに、こんなうまいビールを注ぐとは…。
前回、「エチオピア」では「ハートランド」ビールが供されることを報告し、それがいかにありがたいことかを述べたが、サッポロのスープカレー店では、当然のことながら、サッポロビールが極上の「生」状態で、楽しむことができるのだ。
こいつぁ、好都合だ。
カレーとビール。これほど相性のいい組み合わせはない。そう思いませんでしょうか。

前回「メシなし・ルーのみ・ルー大盛り・最大辛度・ビールつき」セットについて書いた。
これをスープカレーで実行した場合、どうなるであろうか。
筆者としては、それは「ダメ」だと思っていた。
スープカレーは、メシにカレーをかけるのではなく、「スープの中にメシを入れる」食べ方をする。 この食べ方をしてこそ、スープカレーは「スープ」としての相貌を帯びることが出来るであろう。
いわばメシは、カレーの「具」の一部という位置づけがなされるのである。
しかし、筆者は、あくまでも、「メシなし」にこだわった。
なぜか? 答えはカンタンである。
「サッポロビールの生」がひたすらに飲みたかったためである。
主役はビール。カレーはその「アテ」にすぎない。
現代日本を代表するスープカレーに対して、なんという暴挙だろう。こんなことでは「カレー部」除名の憂き目にも会いかねない。
それに、はたしてスープカレーの店で、「メシなし」は許容されるのであろうか。
「お客さん、ウチでは、そういう人はお断りしてるんだ」
…とか、言われちゃわないだろうか。

さて、東京でも、スープカレーはすでに人々の間にかなり浸透した感がある。じっさい、筆者もこのあいだ「マジック・スパイス」の下北店に5度目の来訪をしようと赴いた際も、あまりの混雑&行列に驚きあわて、入店をあきらめたことがある。
それほどまでの人気を呼ぶヒミツは、何なのだろうか。
筆者が思うに、それは「ローカロリー」「ローオイリー」である。
一般に、カレーは「油脂が多くて体脂肪を増やす」と思われがちである。
しかし、スープカレーは、「サラサラ・あっさり」のルーである。
それに加えて、スパイシー感が、欧風のカレーなどに比べてはるかに「立って」いる。
このことは、「スパイスの辛味が脂肪を燃やす」幻想の発生に一役買うのである。
結果、若い娘さんなどが、「カレーを食べるならアブラの少なくて、しかも体脂肪燃焼までしてくれるスープカレーにしたいわっ」と考え、これまでのカレー屋からスープカレー店にのりかえ、そのために大繁盛の状態を招いたのである。
この自説は、今回の本場北海道での実地訪問で実証された。
その顛末について述べよう。

まず筆者が赴いたのは『心』という店。
あまり「カレー屋さん」という感じのしない店名だが、カリー・ホッター部長の所有する、『北海道スープカレー読本』(樺沢紫苑 著・亜璃西社 刊)に拠ると、「シカゴにある日本料理店」にちなむ名であるそうだ。
前述の本に載っている地図を見ながら探し出し、入店する。
(なお、今回の取材で同行していただいたのは、「フランス語教育振興協会」のFさんである。)
入店してまず気づくことは、BGMがたいへんセンスがいい、ということである。
R&B の名曲やレゲエ、ブルースなど、じつに渋い、絶妙の選曲だ。
なるほど、これなら「心」だな。「シカゴ」だなと。
そんな根拠のないナットクをかましていると、「おっ」。
若い娘さんばっかりじゃないか、客が。オトコもいるが、かならずカノジョらしき方を伴っている。 う〜む。やはりそうか。わたしの説は正しかった。スープカレーのプリンシパルなクライアントは、「ヤングレデー」なのである。

さて、筆者とFさんは、「骨付きチキンカレー」を注文、筆者はそれにオクラをトッピング。このトッピングは、北海道大学のN先生のご教示によるものである。
この店は、「エチオピア」のように「倍数」で辛さを表すのでなく、「何番」で注文を受けている。1番から10番は辛み増量無料、11番から30番まではプラス50円、30番以上は100円の追加料金となる。
「辛さのほう、いかがいたしますか?」店のおねいさまが訊いている。
Fさん:「う〜ん、あんまり辛くしないで…3番ぐらいかな」
Fさん、慎重な構えである。
「Sさんは、どうしますか?」
「いやあ、もう、当然、100番!(わっはっは)」「えっ!」
いつもカレー屋に来て、注文をするとき、このシュンカンがいちばん楽しみだ。
お店の人が、どう反応するか、試すヨロコビである。
「大丈夫ですか? すごく辛いですよ」というコトバを耳にするヨロコビである。
しかしなんと、おねいさまはコトも無げに、「ハイ、100番ですね」と注文を受けるではないか。
「…そういう店なんだな。っていうか、そういう客に慣れてる店なんだ…」
ようするに、「辛さバカ一代」なお客さんなどここでは驚くに値しないのである。
じゃあ、コイツはどうだ! 「ルー大盛り。ゴハンなしで」
「ハイ!」やはりアッサリ、オーダーは通ってしまった。
あ、そうなのね。そーゆー客も、いっぱいいるのね…。
筆者は辛さ道場破り的スタンスを取り下げ、おとなしくサッポロビールの生を注文した。

さて肝心のカレーだが。
おお。スープカレーにしては、かなりのトロットロ具合である。
これ、100番だからなのかな? と思って、Fさんの食べている「3番」をちょっとだけ拝借した。
やはりトロトロ。けっこうアブラっこい。
いつものスープカレーと違うな。サラサラしていない。
でも、それゆえに、ビールの「アテ」としては一層ふさわしい気がする。
特筆すべきは、「骨付きチキン」の大きさである。
「マジック・スパイス」のチキンも、かなりのデカさだが、ここのチキンは、それを凌ぐものがある。
カレー・ルーの中に、ゴッテリと横たわるソレは、肉を骨からはぎとっても・はぎとっても、「へへへ、まだあるよー」とせせら笑うかのようだ。しかも憎たらしいぐらい旨い。
で、問題の100番だが。
アブラがトロトロのせいか、それほど辛さが舌にひびいてこない。
それでもまあ、十分な発汗は得られる。
目の前のFさんは、3番にもかかわらず、大量に発汗している。
「新陳代謝にいいですよねーカレーって」
ふっふっふっ。ではわたしの100をちょっと召し上がっていただこうかな。
「ハーこういう味ですか、なるほどね。…ウッ!」
と言ったまま、しばしうつむかれていた。
F氏のそのさまを見て、筆者はある種の「辛者冥利(しんじゃみょうり)」をかみしめるのだった。
メニューの中には、「ラビオリカレー」などというものもある。
前述のN先生によると、北大のフランス人の先生などは、このラビオリカレーにチキンをトッピングして食うという。
こんなにもオイリーなカレー、しかもラビオリ・チキン付き。大和の男子には、いささか過剰であると言わざるを得ない。
なるほど話に聞くように、西欧の人はアブラかたぶらである。
食後、道でN先生とバッタリ出会う。
「どうでした、「心」は?」
F&S:「すごく脂っこいんですね。びっくりしました」
「え? ああ、それはチキンだからよ。野菜ならけっこうサラサラしてるわよ」
F&S:「ハッ、そうか。あれはチキンの脂がしみ出していたのか!」

さて2日目。こんどはやはり北大そばの、『ピカンティ』である。
この店のスープカレーが、今回の主眼目であり、激辛ランキング第3位に選ばれた「アガリ(開闢<かいびゃく>)」を供する店である。
2年前の7月、わがカレー部はこの店を強襲した。
そのおり、ゲキカラ行動隊が大いなる期待をもって食したのが、この「アガリ」である。
ちなみにこの店のカレーの辛さは、次のような呼称で分類されている。
1番 序章(普通)
2番 知覚の扉(中辛)
3番 幻影(辛口)
4番 無量(大辛)
5番 アガリ(激辛)
この、「アガリ」と呼ばれる辛度5のスープには、最近その存在をスナック菓子を通じて知られるようになった「世界最辛のスパイス・<ハバネロ>」が投入されている。
2年前のチャレンジの際、カレー部ゲキカラ隊コバチェビッチ隊員が、この<ハバネロ>を何気なく口に運び、恐怖の「15分間の沈黙」に陥ったことがある。わがカレー部では、この事件は今でも伝説として語り継がれている。
それほどまでにカレツな、辛味物体なのである。
今回、筆者に課せられたミッションは、その<ハバネロ>の衝撃を再体験し、レポートすることであった。

『ピカンティ』は超混雑店である。この日は日曜日。すでに3グループが行列をつくっており、筆者のあとにも次々と人々が集まってきた。
入店まで待つこと20分。ただちに注文…の前にやっぱり「まずはサッポロビールを一杯」。
ここは曜日によって、ルーのタイプが替わる。「理想的時代のスープカリー」や「ニューヨークスパイススープカリー」などもあるが、この日は「開闢」と「デジャヴュ」の2種類から選択する日に当たっていた。前者はサラサラタイプ、後者はトマトスープタイプである。
筆者は、「開闢・辛さ5の「アガリ」・ライスなし」をオーダーした。
具は「野菜&野菜」。この店の具は基本的に「野菜プラス何か」で構成されている。つまり筆者は、「ベースとなる具=野菜+同量の野菜」を頼んだことになる。
内訳は:ナス・ニンジン・レンコン・ポテト・ピーマン・オクラなど。スープカレーの共通点として、ここでも野菜類は「大振りで、ゴロゴロしている」。
「心」にくらべ、ここはいかにもスープカレーといったおもむきの超サラサラタイプ。
「おお、コレよコレ!」
筆者は2年前の記憶がよみがえるのを感じつつ、(やはりメシなしで食べちゃルール違反かなー…)という罪の意識をおぼえていた。

さて、モンダイの<ハバネロ>である。
口に入れるのが、コワイ。
(「ラストまでとっておこう…もしバクハツしたら…もう一杯、生ビールをオーダーして…辛さをやわらげよう…でも注文しようとしても…しゃべれるかしら…もしあの伝説の「15分の沈黙」に入ってしまったら…」

そんなふうな逡巡の果てに、ウンメイのときは来た。
「いくぜハバネロ! オマエに会うために、北の大地を目指したんだからな、うりゃーっ」

結果はどうだったと思われます?
意外や、な〜んともなかったのよね。
なんでだろう。う〜ん。
ホッター部長の意見では、「同じハバネロでも、「アタリ」と「ハズレ」があるんじゃないかな。ホラ、唐辛子なんかでもそうじゃない」
そうかもしれん。しかし、狂熱の嵐のような辛さを期待していただけに、ちょっとばかり気が抜けてしまった。
でもでも。こうも思うのだ。2年前、「マジックスパイス」を体験したとき、幻覚を覚えるほどまでトリップし、食後、部員一同がトイレに代わる代わるとびこんだ、あの頃に比べて、筆者がたどってきた追求の成果がコレなのではないだろうかと。
いまやさらなる辛さを探るべきときなのかもしれない。
さすればいざ! わたしのもとに響いてくるのはカレー部過激派のキーフレーズ:
「こんなの食べたら死んじゃうんじゃないか、っていうくらい辛いカレーをお願いします」なのだった。

…そんなカレーを夢見ながら、筆者は千歳空港を飛び立った。
部員たちへのおみやげに、スープカレーのレトルトを人数分、買いこんで。




第2位 “ティーヌン”のバーミーヘン(プリックポン山盛り10杯かけ)

おことわり:文中で参照される画像はバックナンバーには入っておりません。あらかじめ御了承下さい。

 「てゆーか、バーミーヘンって、カレーじゃないじゃん!」とツッコミを入れてくださったあなたは、さすが、タイ料理通ですね。
 そうなんです。
 バーミーヘンとは、タイ風の「汁なし油そば」のこと。エビやら魚のすり身の団子やらモヤシやら焼豚やらニラやらあれやこれやを、ニンニク油でからめた“そば”と一緒にいただいちゃうお料理です。香菜(シャンツァイ)も風味をそこなわずにしっかりトッピングされているので、スーパーマーケットの野菜売り場に行くと必ず香菜をチェックしてしまう輩(ゲキカラ君のことです)には、願ってもないメニューなのです。
 なのに、なんで激辛ランキングにランクインしているのか? については、おいおい語ることにして……
 ノーマル・モードはこんな感じ。
 どうです? 油そばとはいえ、ヘルシーな色合いじゃないですか? カフェ飯っぽく見えなくもないですよね。
 きっと、ノーマル・モードで食してる限りは、ヘルシー、つーかライト感覚なスタミナ・フードかと。
 けど。
 見てください! この、山盛りのプリックポン(粉末赤唐辛子)を。これを、10杯、かけるんです。
 すると、どーよ? 
 こんな具合に、クレージー・モードのできあがり。
 ああ、今日も、卓上に置かれたプリックポンの容れ物を空にしてしまいました。女性客の多い“ティーヌン”には珍しい隣の席のサラリーマン諸兄が、こちらを盗み見ながら、聞こえよがしに、「ありえねー」とかおっしゃってます。
 このクレージー・モード状態のバーミーヘンを、織田作之助的に言えば「あんじょう、まむして」、カリー・ホッター部長やピンキー的に言えば「よーく、かんまして」、標準語で言えば「よく、かきまぜて」、赤唐辛子を麺に“練り込む”んです。
 “ティーヌン”の「汁なし油そば」は、中華麺(バミー)か中細麺(センレク)か太麺(センヤイ)を選ぶことができ、すーちゃんやホッター部長は太麺をチョイスするのですが、ゲキカラ好きにおすすめなのは、なんてったって中華麺(バミー、ゆえに、バーミーヘン)。
 なんでって、中華麺だと、赤唐辛子がいちばん、麺になじむんです。からむんです。“練り込める”んです。したがって、激辛を堪能できるんです!
 いやあ、マジ辛いです。口元ひりひりはもちろん、胃腸に到達する(のが実感できるってのもいかがなものかと思うけれど)なり、とたんに、お腹が痛みだすんですから。でも、完食しちゃいます。ホットAもホットPも、覚悟の上です。残った赤唐辛子は、付け合わせのスープを器に流し込んで、キレイにさらっちゃいます。付け合わせがトムカーガイ(香菜とココナッツミルクと鶏肉のスープ)だったりすると、ゲキカラ君的には、至福のひとときが約束されていたりします。
 ちなみに、お値段は760円。
 
 “ティーヌン”にはタイカレー(レッド&グリーン)もあるのですが、ここでは、珍しいメニューとして、グリーンカレー・ラーメン(820円)について若干言及しておきましょう。
 このラーメンの嬉しいところは、カレーうどんやカレー・ラーメンによくある「つゆの上にカレーを別がけ」というスタイルを踏まえることなく、「スープ=カレー」という潔よいまでの太っ腹さで勝負してくれるところです。つまり、ライスのかわりに麺で楽しむスープカレー、という按配なのです。でも、ノーマルだとあまり辛くないっつうことで、やっぱりプリックポンを大量投入して紅葉モードにしてしまうのが、ゲキカラ好きの悲しい性ですね(ただし残念ながら、それでも、グリーンカレー・ラーメンは、ココナッツミルクが大量に入っているせいか、どうしても甘く感じられてしまう)。
 
 カレー・ラーメンといえば、あの“大沢食堂”にもありますね。
 ちなみに、この写真は“大沢食堂”の極辛カレーですが、昼に“ティーヌン”のバーミーヘン(プリックポン山盛り10杯かけ)を食べ、夜に“大沢食堂”の極辛カレーを食べたゲキカラ君は……嗚呼!
 この話の続きは次回以降に、ということで。



第1位 “カーナピーナ”のマトン・サグカレー(スペホ)

:わが白水社カレー部が誇る「過激派3人組」のゲキカラ君(G)とすーちゃん(S)とコバチェヴィッチ(K)の3人でお送りする「激辛、カウントダウン!」。今回は、“カーナピーナ”のマトン・サグカレー(スペホ)です。

 ちなみに前回の続きでいうと、昼に“ティーヌン”のバーミーヘン(プリックポン山盛り10杯かけ)を食べ、夜に“大沢食堂”の極辛カレーを食べにいったゲキカラ君は……帰りの地下鉄・春日駅で、悶絶しました。めくるめく、ホットPとホットAの波状攻撃。トイレに駆け込んでも、おさまりません!
 やはり、ゲキカラのはしごは禁物。
 何を隠そう、かつて、渋谷の東急東横店の北海道物産展で“マジスパ”のアクエリアスを完食したあと、その、あまりの辛くなさゆえ(歯列矯正シスターズの波平さんに「けっこう甘いですねえ。キムチみたいな感じ。」とか抜かしたような記憶があるんですけど)、魔が差してしまったのでした。
 東横線(各駅停車)にとび乗って、渋谷から3駅先の祐天寺で下車。
 “マジスパ”のアクエリアスのあとで、“カーナピーナ”のスペホに挑戦しましたが……完敗。というか、惨敗です。
 “カーナピーナ”のカレーの辛さの度合いは、メニューの上では、「マイルド、セミホット、ホット」の3段階しかありません。にもかかわらず、その上の隠れメニュー「ベリーホット」をも通過して、さらなる裏隠れメニュー「スペシャルホット」を注文した馬鹿者は、注文時にこんなことをいっていたような気がします。
 「辛いの、得意なんで(大丈夫です)。」
 “カーナピーナ”の奥さんは、平然とした顔で注文を受けてくださいましたっけ。
 なのに、嗚呼。ほんと、お恥ずかしいかぎりですが、完食できませんでした。「辛いの、得意」とかいった手前、残すのはためらわれ、半分はお持ち帰りにさせていただきました(会社で、カレー部員に供しました)。
 あれは、雨がそぼ降る日でした。お持ち帰りスペホを片手に、ビニール傘をさしながら、おぼつかない足取りで店を後にしました。ヒロシです。胸にこみあげてくるのは、口惜しさじゃなくて、吐き気です! 今なら、そんな自虐ネタにくるんで、笑い話にすることもできるとですが、あのときは、本当に、辛(つら)かった。公衆の面前で、ロカンタン君(ストリート系)になりたくない! そんなゲキカラ君を救ってくれたのは、マクドナルド祐天寺駅前店2Fのトイレでした。
 あのとき、初めて、ホットA→ホットPのさらなる進化型を知りました。
 それは、ホットN。鼻の粘膜を攻撃する、ホットすぎる唐辛子。
 麗しのA感覚、戸惑いのP感覚をもしのぐ、驚天動地のN感覚。
 激痛のあげく朦朧とした意識のなか、「コカイン吸入者ってこんな感じなのかな」とか思ったりした、あの日の午後――。

 突然ですが、「こちら、白水社カレー部。」は、これで最終回です。
 掉尾を飾るべく出された、カリー・ホッター部長からの指令は――“カーナピーナ”のスペホに、リベンジ!
 というわけで、行ってきました祐天寺まで。
 ゲキカラ君、すーちゃん、コバチェヴィッチ、ピンキー、そして、けんちゃん(白水社ヤキソバ部)の、5人で。
 その結果……みごと、「殉食」してきました。ジーパン刑事のように。

【コバチェヴィッチからのレポート】

 チキンカレー。この赤さでもまだホット。

 再訪の前に、バイブル『神様カレー』の“カーナピーナ”の頁を開く。
 「辛さに負けて味がわからない人って多いですよね。」
 ご主人のこの金言は、激辛を乗り越えてその先にある旨みに辿り着きたい、という我々の切なる思いを見事に言い当てている。
 ホットなら余裕だ。スパイスの香り豊かなこの店のカレーは、個人的には五指に入るくらい好きだ。
 しかし、スペホは全く別の食べ物である。数匙目からは、口の中が痛い。ビールで洗い流すとかえって痛いので、ホットのチキンカレーをチェイサー代わりに食べると、大分和らぐ。かつて札幌でハバネロ爆弾に当たったことを思い出す破壊力だ。
 これは特別な種類の唐辛子でも使っているのではないだろうか? と推測してご主人に聞いてみる。
  コ「辛さの段階は、単純に唐辛子の量で変えているんですか?」
  ご主人・平戸氏「唐辛子の種類もいろいろ違うんですよ。」
  コ「(やっぱり!)どんな唐辛子なんですか?」
  平「先の曲がっているカイエンペッパーが辛いんですよ。」
  コ(割と普通だな……)
  平「昔はスペシャルホットの2倍のWスペシャルホットまで作ったことがあります。」
  コ「ええ!? そんなの食べる人いるんですか???」
  平「最近はスペシャルホットもあんまりいないですよ。
    痛くなるというのは限界を超えてるから、そこまで無理しちゃダメです。」
 優しい笑顔を浮かべたまま、激辛道を説くご主人であった。

 この日の全オーダー
  [前菜に]
   シーカ・カバブ
   カシューナッツ・パコラ
   フィッシュ・パコラ
   スライス・オニオン
  [カレー]
   ベジタブル(スペシャルホット) レギュラーサイズ
   マトン・サグ(スペシャルホット) レギュラーサイズ
   中華カレー(ホット) レギュラーサイズ
   チキン(ホット) レギュラーサイズ
   カキ(マイルド) レギュラーサイズ
   マトン(マイルド) ハーフサイズ
  他に、ライスLを2皿、ビール(小瓶)を20数本、アップルジュース1杯

 ゲキカラ君のオーダーしたマトン・サグは、すーちゃんのベジタブルと比べ、ほうれん草が混ざって色味的には穏やかそうだが、羊肉を咀嚼しなければ飲み込めないため口内滞留時間が長く、より辛(つら)い痛みを伴うということで、“最凶”に認定された。
 また、アップルジュースは、店内で轟沈したすーちゃんが頼んだものである。

 中華カレー。インドなのにチャイナの味わい。これもまだホット。

http://gourmet.yahoo.co.jp/0000841924/P060544/

【すーちゃんからのコメント】
 「すぺほ」をレギュラーサイズで、しかも一人前を一人だけで、絶対に食ってはイカン。
 苦しみは、みんなで仲良く分かち合うべきだ。
 「すぺほ」は多分、拷問に使えます。
 店内で2度、化粧室での長考に沈み、帰宅後さらに3度、わたしは溶鉱炉になった。
 そのとき「すぺほ」は、焼けたぎるように溶けた鉄、あるいは真っ赤な溶岩と化して、大都市の下水道へ流出していった。
 そしてわたしは、ハッと気づくと、布団をしいて、うめきながら仰臥していたのである。
 この状態は、明け方までつづいた……。

 ベジタブルカレー。鮮烈の赤がスペホの証し。

【ゲキカラ君からのポエム】
 死神を乗せた鈍行列車が ぼくの胃袋を出発した
 50センチほどはズリ落ちて やむなく三越前駅で途中下車さ
 真っ赤に燃えたぎる鉄アレイで 腸内細菌も全滅だ
 ペイン イン・ヴェイン ペイン イン・ヴェイン
 「もう死ぬんじゃないかっていうくらい辛(から)いのをください」ってcry!
 グッバイ グッバイ

 死神を乗せた鈍行列車が ぼくの脳みそを蝕んでゆく
 携帯に出た彼は自宅のトイレで 清澄白河駅からはタクシーさ
 『牛乳の作法』で蹴っ飛ばすための 罰当たりな腸詰めだ
 ホットA イン・ヴェイン ホットP イン・ヴェイン
 「もう死ぬんじゃないかっていうくらい辛(から)いのをください」ってcry!
 グッバイ グッバイ

 ホットN イン・ヴェイン からだ痛い 無駄に辛(から)い
 「胸にこみあげてくるのは……口惜しさなんかじゃない」って言いたいくらい
 アデュー モンデュー

 マトンサグカレー・スペホ。最高にして最凶のカレー。

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