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歌舞伎オン・ステージ
全25冊
郡司正勝・廣末保・服部幸雄・小池章太郎・諏訪春雄監修
各B6判 上製 平均290頁/口絵平均4頁

 波瀾に富んだストーリー、意表をついた仕掛け、奇想天外な登場人物の行動……近松門左衛門はもちろん、鶴屋南北や河竹黙阿弥など、すぐれた作者の手になる歌舞伎脚本は「読みもの」としても一級品です。
 本集は、現在舞台にかけられている代表的な名作の、もっともわかりやすく、信頼できるテキストを提供することを第一のねらいとし、編著者は最高の専門家を網羅、永年の蓄積をことばの注と解説・鑑賞に盛り込んでいただきました。さらには「芸談」「梗概」など歌舞伎に親しむためのさまざまな工夫を凝らしてあります。読みものとして、観劇の際の便利なハンドブックとして、さらには幕内の人々の舞台上演の参考書としても活用できるシリーズです。


本集の特色
  1. 現行の歌舞伎劇から上演数の多い名作を選び、底本には主として明治期の上演本を用いる。
  2. 難解な語彙には下段に脚注をほどこした。
  3. 「梗概」で劇のあらすじをふまえることができる。
  4. 作品に関連した古今の名優のユニークな演技・演出論を「芸談」として収録。
  5. 観劇の際にも活用できるハンディーな体裁、現代かなづかい、常用漢字を用いた読みやすい戯曲形式。
全巻内容
1 青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)
蔦紅葉宇都谷峠(つたもみじうつのやとうげ)
河竹登志夫編著
 幕末の大江戸で五人組の怪盗団が大活躍する「青砥稿花紅彩画」は「白浪五人男」。姉が吉原に身売りしてつくった百両の金子を少年按摩文弥から殺して奪った伊丹屋十兵衛にも止むを得ぬ事情があった。「蔦紅葉宇都谷峠」は通称「文弥殺し」。

2 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)
伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)
景山正隆編著
 日本版ロミオとジュリエットの悲劇、恋人のために死んでいくお三輪の乙女心が胸を打つ「妹背山婦女庭訓」。剣豪荒木又衛門の伊賀上野の活躍を劇化した「伊賀越道中双六」は、東海道筋をたどる主人公たちの移動につれて次々と哀切な局面が展開する。

3 夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)
伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)
松崎仁編著
 男だて団七が恩人の恋人を守るため舅義平次を殺害したとき、背景を夏祭りの行列が華やかに過ぎて行く「夏祭」。恋人の心にもない愛想づかしを真に受け、妖刀青江下坂を振るって大量殺人にはしった男の惨劇を描く「伊勢音頭」。その明闇の対照が悲しく美しい。

4 一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)
近江源氏先陣館(おうみげんじせんじんやかた)
絵本太功記(えほんたいこうき)
梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)
(品切)
小池章太郎編著
 一の谷の合戦における直実と敦盛の悲話を脚色した「嫩軍記」。大坂の陣を劇化した「先陣館」。明智光秀の叛逆の13日間を描いた「太功記」。そして、梶原景時が石を斬って名剣の奇瑞を見せた「誉石切」。戦乱の世の武士の苦渋に満ちた生き方を描く四編。

5 桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)
(品切)
廣末保編著
 貴族の娘桜姫は夜盗に犯され子まで生むが、その男が忘れられず密会し、追放・漂泊の旅に出る。前世の因縁を知りつつ彼女を追い求め、破戒・堕落の地獄におちる高僧清玄。姫は安女郎に転落しながらも強靱に生きぬき、お家の危機を救う。大南北が頽唐美を織り込み展開する、煩悩と因果と再生のドラマ。

6 鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)
加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)
松井俊諭編著
 岩藤から草履打ちの恥ずかしめを受けて自殺した主人尾上の仇を討った下女お初の行動は殊に女性たちにとって胸のすくものであったろう。いわゆる鏡山物の典型をつくったのが「旧錦絵」であり、続編として骸骨の岩藤を復活させるのが「再岩藤」である。

7 籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)
神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)
菊池明編著
 いなか者が迷いこんだ吉原で遊女八ツ橋を見染めたときが惨劇のはじまりとなる「籠釣瓶」。力士と火消し人足の乱闘を描いた「和合取組」の通称は「め組の喧嘩」。

8 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
(品切)
服部幸雄編著
 御存知、歌舞伎の極め付き。鶴岡の饗応の場からはじまって最後の討ち入りまでに、赤穂事件の発端から終結までがみごとに順を追ってしくまれている。弱者に同情する日本人の正義感に支えられて、江戸時代から今日まで、芝居として最多の上演回数を誇っている。

9 盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)
時桔梗出世請状(ときもききょうしゅっせのうけじょう)
井草利夫編著
 主人の仇討ちのための百両の金をだましとられたと知ったとき源五兵衛の怒りは爆発する。源五兵衛の小万殺しを「忠臣蔵」に関係づけたのが「三五大切」。豊臣秀吉の出世談に明智光秀の信長殺しをからめ、通称「馬盥(ばだらい)の光秀」で知られるのが「出世請状」。

10 勧進帳(かんじんちょう)
毛抜(けぬき)
暫(しばらく)
鳴神(なるかみ)
矢の根(やのね)
(品切)
服部幸雄編著
 市川団十郎家代々の当り狂言を集成した歌舞伎十八番の中からえらばれた代表作。忠義(勧進帳)、奇抜(毛抜)、正義(暫)、煩悩(鳴神)、豪壮(矢の根)などのテーマが荒事の様式的な演技と呪術的な儀礼を伴って展開する。江戸歌舞伎の真髄がここにある。

11 天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)
古井戸秀夫・今岡謙太郎編著
 天保六花撰の名で知られる六人の悪党の痛快な活躍。「とんだ所へ北村大膳」の河内山のせりふで知られる松江家玄関先と、遊女三千歳(みちとせ)と直次郎のラブシーンが哀切なメロディに乗って展開する入谷大口屋の寮が見所、聞所。初稿本「雲上野三衣策前」による。

12 傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
嫗山姥(こもちやまうば)
国性爺合戦(こくせんやかっせん)
平家女護島(へいけにょごのしま)
信州川中島合戦(しんしゅうかわなかじまかっせん)
鳥越文蔵編著
 大津絵師の夫婦愛が名画の奇跡を生む「反魂香」、愛する男の魂魄を宿して再生を願う「嫗山姥」、大明国滅亡の危機に和藤内が驚天動地の活躍をする「国性爺」、若者の愛を実らせようとする俊寛が絶海の孤島に独り残る「女護島」、息子の忠誠を貫くため母が犠牲となる「川中島合戦」の五編は大近松の作。

13 五大力恋緘(ごだいりきこいのふうじめ)
楼門五三桐(さんもんごさんのきり)
古井戸秀夫編著
 友人三五兵衛にだまされ、恋人菊野の真情を誤解した源五兵衛は女を殺害する。三味線の裏皮に書かれた「五大力」の文句が絶妙の効果をあげる「五大力」。大盗石川五右衛門と名将真柴久吉の南禅寺山門の息詰まる対決を最大の見せ場とする「楼門」。

14 三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)
延広真治編著
 「月もおぼろに白魚の」の名文句で知られる大川端の場で、和尚、お嬢、お坊の怪盗三人ははじめて出逢い、義兄弟となる。そして因果はめぐり、本郷の櫓の下で三人刺し違えて死ぬまで、百両の金子をめぐって登場人物は運命の糸にあやつられていく。

15 新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)
摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
ひらかな盛衰記(ひらがなせいすいき)
織田紘二編著
 奉公人久松を中に主人の娘お染と許婚お光が義理を立て合う「歌祭文」、継子の俊徳丸に不義をしかけたと見せた玉手御前が自らの血で継子を救う「合邦辻」、義経軍功の陰に忠節や愛を貫く人々と戦いに巻きこまれた庶民の哀切を描く「盛衰記」。それぞれ独自の魅力で人気の高い、異色の自己犠牲三傑作。

16 菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
林京平編著
 天神様として親しまれている菅原道真にまつわる伝説を集大成した作。藤原時平らの悪計により道真は九州へ流され、娘苅屋姫、子秀才は命をねらわれるが、忠臣たちが犠牲となって守り通す。桜丸の死、松王の子小太郎の身替り死は特に有名。

17 助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)
寿曾我対面(ことぶきそがのたいめん)
諏訪春雄編著
 春も弥生、桜の咲き乱れる吉原仲の町で江戸っ子助六や遊女揚巻の痛烈なたんかが飛ぶ。源家の宝刀友切丸の行方をめぐって筋が展開し、歌舞伎の各キャラクターの展示会ともいえる「助六」。新春恒例の曽我狂言のフィナーレとして祝祭性豊かな「対面」。

18 東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)
諏訪春雄編著
 毒薬を盛られて変貌し、刃に喉を貫かれて憤死した時からお岩の復讐は始まる。単なる怪談劇ではない。並演された『忠臣蔵』と表裏一体の裏の世界を表現する、南北の最高傑作である。

19 双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)
権藤芳一編著
 二組の恋人に濡れ髪長五郎、放駒長吉の人気力士の対立がからむ。長五郎が恩人の子のためにわざと長吉に勝ちをゆずる「角力場」、実母を頼ってきた逃亡者長五郎を義兄の役人南方十次兵衛やその妻が恩情あるはからいで逃がしてやる「引窓」が殊に知られる。

20 伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)
伊達競阿国戯場(だてくらべおくにかぶき)
諏訪春雄編著
 伊達藩のお家騒動を室町時代の足利家に置きかえ、悪人一味の魔手から忠臣らが主家を守り通す「伽羅先代萩」と、伊達騒動に累伝説を絡ませ女心の哀れさを描く佳作「伊達競阿国戯場」。

21 義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
(品切)
原道生編著
 源氏の世の安泰のために献身しながら兄頼朝によって奥羽で殺害された義経の伝説を集大成。静の義経への慕情、佐藤忠信の忠節、その忠信に化けて親を慕う子狐の哀れさ、平家の遺族たちの苦難と悲壮な死。各段各場に見所、聞所は散りばめられている。

22 与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)
(品切)
竹内道敬編著
 「しがねぇ恋の情けが仇」という「源氏店」の与三郎のゆすりの文句で有名な本作は、お富と与三郎の見染めから別れ、再会を通して、人生の流転の姿を表現している。大店の若旦那与三郎の運命は木更津の浜で土地のやくざの親分の妾を見染めたときに逆転した。

23 御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)
巷談宵宮雨(こうだんよみやのあめ)
真山美保・小池章太郎編著
 復讐の倫理をめぐって綱豊と赤穂浪士助右衛門が対決の火花を散らす真山青果の名作『御浜御殿』と、世話物を近代的に継承して独自の宇宙を構築した宇野信夫の傑作怪談劇『宵宮雨』。

24 桐一葉(きりひとは)
鳥辺山心中(とりべやましんじゅう)
修禅寺物語(しゅぜんじものがたり)
藤波隆之編著
 明治以降の新歌舞伎の代表作三部。徳川との対決を避けようとする豊臣の忠臣片桐且元の苦心を描いた「桐一葉」は坪内逍遙作。旗本菊地半九郎と祇園の遊女お染の恋の末路をうたった「鳥辺山心中」と面作り師夜叉王の執念を描いた「修禅寺物語」は岡本綺堂作。

25 舞踊集
(品切)
郡司正勝編著
 絢爛たる舞踊は歌舞伎の花である。本書は、歌舞伎舞踊の中から今日も盛んに上演される名作12曲を選んで、語句のみならず、音楽と振りの詳しい注釈を付す。「舌出し三番叟」「娘道成寺」「鷺娘」「関の扉」「草摺引」「保名」「かさね」「六歌仙」「三社祭」「将門」「紅葉狩」「鏡獅子」を収録。

大変長い間お待たせいたしましたが、第25回配本の第14巻をもって「歌舞伎オン・ステージ」は完結といたします。
当初刊行を予定しておりました別巻は、事情により刊行中止となりましたことをお詫びし、お知らせ申し上げます。白水社
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