内容説明
切れ味抜群、傑作ショートショート集
皮肉屋で悪戯好きの青年クローヴィスが引き起こす騒動の数々。辛辣なユーモアと意外性に満ちた“短篇の名手”サキの代表的作品集を初の完訳。エドワード・ゴーリーの挿絵を収録。
いいものには世間と共有したいものと、自分ひとりの胸にしまっておきたいものがある。……大の愛読書であっても、晩餐の席で隣合わせた人たちにとうとうと教え、絶対面白いから読んでくださいと協力に推薦する本があるかと思えば、同じぐらい大好きなのにひたすら沈黙を守り、うかつにひとが誉めようものなら自分が発見したありがたみが減るのではないかと心配する本がある。少なくとも私にとって、「サキ」著作群は後者に属する。――A・A・ミルン(序文より)
皮肉屋で悪戯好き、舌先三寸で周囲を振りまわす青年クローヴィスの行くところ、つねに騒動あり。「トバモリー」「名画の背景」「スレドニ・ヴァシュタール」「運命の猟犬」他、全28篇を収録。辛辣な諷刺と残酷なユーモアに満ちた“短篇の名手”サキの代表的作品集を初の完訳。序文A・A・ミルン。エドワード・ゴーリーの挿絵16点を収録。
[著者略歴]
サキ Saki
本名ヘクター・ヒュー・マンロー。1870年、英領ビルマ(現ミャンマー)で生まれる。父親はインド帝国警察の監察官。幼くして母を亡くし、英国デヴォン州で祖母と二人のおばに育てられる。父親と同じインド警察勤務の後、文筆家を志し、1902年から1908年まで新聞の特派記者としてバルカン半島、ワルシャワ、ロシア、パリなど欧州各地に赴任。記者の仕事の傍ら、辛辣な諷刺とウィットに富んだ短篇小説を「サキ」の筆名で新聞に発表。『ロシアのレジナルド』(1910)、『クローヴィス物語』(11)、『けだものと超けだもの』(14)などの作品集で短篇の名手と評される。第一次世界大戦が勃発すると志願兵として出征し、1916年、フランス戦線で戦死した。没後まとめられた短篇集に『平和的玩具』(19)、『四角い卵』(24)がある。
[訳者略歴]
和爾 桃子(わに ももこ)
英米文学翻訳家。訳書にロバート・ファン・ヒューリックの〈狄(ディー)判事シリーズ〉全訳(早川書房)のほか、ジョン・ディクスン・カー『夜歩く』『蠟人形館の殺人』(創元推理文庫)、ジェイソン・グッドウィン『イスタンブールの群狼』、ポール・ドハティ『教会の悪魔』(以上早川書房)ジョン・コリア『ナツメグの味』(共訳、河出書房新社)などがある。