内容説明
人類の想像力を映す天体の歴史
もっとも身近でありながら、今なお多くの謎を秘める月。つねに人々の心を捉えてきたこの天体を、13の切り口から、古今東西の文化や科学的発見の歴史を通じて概観する。図版多数。
もっとも身近でありながら、今なお多くの謎を秘めて浮かぶ月。私たちは月をいかにして認識してきたのだろうか。本書は、人類の発明や自己理解、想像力に貢献してきたこの天体を、私たちの過去と未来を映す存在として捉えなおす試みである。
もし月がなかったら? 本書はまず、潮の満干や地球の地軸の傾きなどに月が果たす重要な役割をあらためて気づかせてくれる。また、世界の諸民族に伝わる伝説や神話を概観し、人類が多様な月を思い描いてきたことを明らかにする。
月は時間の観念の構築にいかに関わったのか。古代の哲学者は月をどのように見なしたか。月面の地形はどんな名前を与えられてきたか。ジュール・ヴェルヌ『月世界旅行』がいかに予言的な内容であったか。詩、小説、絵画、映画などのなかで、月はどのように表象されてきたか。こうした興味深いテーマについて、さまざまな資料と豊富な図版を引きながら、月の輪郭を浮かび上がらせていく。
「物理的な事実や数字だけでは、私たちにとって月が何を意味するのかを説明することはできない。月の重要性は、地球との距離の近さよりも、人間の想像力が向けられる中心的存在だということにある。(中略)近いようで遠い―月はまさに逆説だ。そして、月を探求することは、私たち自身を探求することでもあるのだ。」(「序」より)