内容説明
究極の三択と資本主義の過去・現在・未来
ハイパーグローバリゼーション、民主主義、そして国民的自己決定の三つを、
同時に満たすことはできない!
この世界経済のトリレンマをいかに乗り越えるか?
世界的権威が診断する資本主義の過去・現在・未来。
「本書の核となるアイデアは、市場は統治なしには機能しない、というものだ。昨今の新自由主義的な風潮の中で、市場と政府は対立関係にあると考えられることも多いが、本書はそれが明確に間違いであると指摘している。市場がよりよく機能するには、金融、労働、社会保護などの分野で一連の制度が発達していなければならず、政府による再分配やマクロ経済管理が適切に行われていなければならない。一九八〇年代以後、政治学の分野では国家論の研究が盛んに行われるようになったが、そこで強調されているのも、国家の統治能力の向上なしに持続的な経済発展はあり得ないという歴史的事実だ。」
柴山桂太「訳者あとがき」より
タイ・バーツの暴落から始まったアジア通貨危機や過剰な資金が米住宅市場になだれ込んだサブプライム危機、そしてギリシャの債務不履行問題に端を発した欧州財政危機に象徴されるように、世界経済はここ二十年、危機が常態化している。
本書は、ノーベル賞受賞者を多数輩出してきた世界的研究機関、プリンストン高等研究所の教授による異色のグローバリズム論で、ブレトンウッズ体制に始まる戦後経済史を下敷きに、現代の危機とその処方箋を極めて穏当な形で提示したものだ。とりわけ近年、経済論壇でも広く受け入れられた「政治的トリレンマ」を用いた分析はユニークである。
ロドリック教授によると、現今の世界情勢は、グローバリゼーションと国家主権、そして民主主義を同時に追求することを許さず、どれか一つを犠牲にするトリレンマを強いている。教授はこうした基本認識に立ちながら、国家主権と民主主義を擁護するとともに、無規制なハイパーグローバル化に網を掛けることを提言する。
こうした処方箋は、バブルとクラッシュを繰り返す資本主義メカニズムを的確にあぶり出すだけでなく、グローバリゼーションと民主主義が両立できると素朴に考える日本の世論に冷水を浴びせかけるのは間違いない。
経済論壇をリードする柴山桂太氏が翻訳! 話題沸騰必至の一冊。
[目次]
序章 グローバリゼーションの物語を練り直す
第一章 市場と国家について——歴史からみたグローバリゼーション
第二章 第一次グローバリゼーションの興隆と衰退
第三章 なぜ自由貿易論は理解されないのか?
第四章 ブレトンウッズ体制、GATT、そしてWTO——政治の世界における貿易問題
第五章 金融のグローバリゼーションという愚行
第六章 金融の森のハリネズミと狐
第七章 豊かな世界の貧しい国々
第八章 熱帯地域の貿易原理主義
第九章 世界経済の政治的トリレンマ
第十章 グローバル・ガバナンスは実現できるのか? 望ましいのか?
第十一章 資本主義3.0をデザインする
第十二章 健全なグローバリゼーション
終章 大人たちへのお休み前のおとぎ話
謝辞/訳者あとがき/註/人名索引