内容説明
父は昭和俳壇の巨星。息子は駆け出しの新聞記者。父の死亡記事を息子が書くという不思議な運命を胸に、数々の名句が生まれた背景と秘密を、静かに、くっきりと浮かび上がらせる。
波郷はわずか十七字に自らを託し三千五百余句、単純計算で六万字弱を書いて俳人としての人生を全うした。私は新聞記者として、その何十倍何百倍もの原稿を書いてきたが、さて何を残し得るのか。五十歳代に入って、あと六年、五年とカウントダウンが始まるにつれ、漠然とした焦りにとらわれていたが、いよいよあと一年、五十五歳の誕生日を迎えた直後に腎臓