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連載・エッセイ

第1回 ―2002.07.11

 ネットオークションで明治40年代の教科書を手に入れた。「中学国語読本」「中学文法教科書」「師範学校国文教科書」等、全15冊で落札価格は5900円也。

 戦前の教科書というと、とかく話題になるのは国定教科書時代の「小学国語読本」、それも一年生のそれである。がしかし、「ハト マメ マス」「サイタ サイタ サクラガサイタ」なんちゅうものを知ってたところで、はて豆知識以上の何の役に立つだろう。そこへいくと、輝ける未来のエリート養成のために編纂された中学バージョンは、さすがに内容が濃い。

「中学国語読本」(上田万年編纂・大日本図書・明治40年)の巻九、巻頭は「我国民性」である。「我日本国は建国以来武の国である。我日本民族は先祖以来尚武の民族である」とぶちあげて、北条時宗の蒙古撃退や秀吉の朝鮮出兵(原文は朝鮮征伐)等を讃えた後に続けて曰く。「これに反して、国勢の衰頽した時、もしくは衰頽しようとした時は、世が文弱に陥いつて武の衰へた時である。宗教や美術に心を奪はれてしまつた奈良朝の終り、徒に唐朝の文物制度に眩惑し、山川の美と詩歌、管弦の楽しみとにあこがれた平安朝の末期、或は東山時代の以降の足利氏、文化文政以後の徳川など、皆この例に漏れぬのである」(原文はもちろん旧字)。

 文武両道を誇るのかと思いきや、武のみ称揚、文は完全否定である。いかに富国強兵時代とはいえ「日本の伝統文化」がここまで軟弱者扱いだったとは、いや知らなんだ。バーミヤンの石仏を破壊した連中と大差ないやんか。古書店ではなく古道具屋が出品していた逸品(なのかな)。オークションといっても競争相手は一人もいなかった。


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