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連載・エッセイ

第24回 ―2006.05.11

 草森紳一『随筆 本が崩れる』(文春新書)には、崩れた本で浴室のドアが開かなくなった話が出てくる。私の場合は冷蔵庫のドアが開かなくなったことがある。「地震が来たら大変ですね」と同情されるが、私の部屋はとっくの昔に地震が来た後みたい。

 自分で買った本なら、それでも自業自得とあきらめがつく。自分で買う本のほかに、私の場合、本は外から押し寄せてくるのである。毎日毎日、3冊、5冊と頼みもしない本が郵便受けにたまり、宅配便で届く気分がわかるかしら。

 出版社から送られてくる本には、短冊(たんざく)と呼ばれる小さな紙切れが入っている。一番レートが高いのが「著者謹呈」で、これは著者が自ら買い取った本を贈ってくれた証拠。本当ならば礼状を書くべきところである。次が出版社名が書かれた「謹呈 ○○社」。出版社の好意で送ってくれた印だ。一番レートが低いのは「乞御高評」。「よかったら書評をしてくれ」の意味である。

 出版社の皆様に警告しておきたい。「乞御高評」の短冊は逆効果だよ。毎日届く本に辟易している身としては、この短冊を見ると「高評なんか絶対しないぞ」という気分に火がつくだけだから。

 新古書店にまとめて売る努力もしたが、その手間暇もバカにならない。やがて封も切らなくなり、蹴飛ばして歩くようになり、やっと決心がついた。「差し出し人に戻してください」と書いて、すべての本を機械的に送り返すのである。それでも届く本本本。こうなるともう天災。いや人災?

 草森さんの随筆には、本を床積みする人はもう「読書人」ではないという一節があった。一定の量を超えると、本に敬意を払ってはいられなくなるのである。いったい何のバチが当たったのだろう。次にはトイレのドアが開かなくなりそうだ。


連載・エッセイ


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