今回はちょっとだけ古い「マイナーな」語学書を紹介しよう。白水社は昔から「その他の外国語」にやさしかった。
『ルーマニア語の入門』が出版されたのは1977年。まえがきによれば、この年はルーマニアがトルコ支配からの独立を宣言してちょうど100年目にあたるそうだ。ところが不幸なことに、同年ルーマニアは大地震に見舞われる。当時は大事件だったが、日本で記憶されている方は少ないだろう。ルーマニアについて今でも覚えているのは、体操選手コマネチぐらいか。
この本はなかなか硬派である。文字と発音では、音一つ一つの説明のほかに、複雑な音の交替についても4ページにわたって説明される。レッスンは全40課、5課ごとに文法の整理。文法事項もしっかりと記述され、複雑な動詞の時制が詳しく解説される。
テキストは日本人留学生とウエイトレスの会話とか、ごく実用的なものもあるが、レッスンが進むと戯曲や評論、新聞記事など幅広い文体に触れることができる。入門と謳ってはいるが、この本を最後まで学べばかなりの力がつく。
テキストの和訳を拾い読みしてみた。第10課では、東京のロマンス語文献学の助手という人物が出てくる。語学書に登場するキャラクターとしては珍しい。この助手がルーマニア人と会話を交わす。「(ブラショーヴで開かれたルーマニア語講座は)あなたにとって役に立ちましたか?」「はい、ルーマニア語とルーマニア文化全般を知る上で私の役に立ちました」
なるほど、ルーマニア語はロマンス語学にとっても、重要な言語なのだ。そういう興味から始めるのなら、こういうしっかりとした語学書で、ルーマニア語の全体像をつかむというのも悪くない。
「白水社の本棚」の読者には、フランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語などのロマンス諸語に親しんでいらっしゃる方も多いはず。そこでどうでしょう、この夏休みはルーマニア語に親しんでみませんか。ルーマニア語が他のロマンス諸語とどこが似ていて、どこが違うのか、この本を読めば概説書よりもずっと実感が沸くはず。この硬派な『ルーマニア語の入門』は、ちょっと古くてもちゃんと現役で書店に並んでいる。

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ルーマニア語の入門
直野 敦著
税込価格3,045円
(本体価格2,900円)
各課は、対話形式中心のテキスト、単語、訳、文法解説、作文問題で構成されているので、一冊で日常会話、読解、作文に必要な文法事項のすべてを要領よく学べます。巻末には読物、ルーマニア語ー日本語語彙集、文法項目索引付き。
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