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連載・エッセイ

第7回 バロック音楽祭り ―2008.08.11

ドルドーニュ便り《番外編》


演奏会場の教会の由来を説明するボランティア

夏祭りの季節がやってきた。ドルドーニュの村や町で開かれるフェスティバルの内容は多彩だ。天文台で木星を見る会、ローマ剣闘士の実演、日本太鼓の夕べなどもある。だが、なんと言っても主役は音楽祭。

音楽祭の一つに、Itinéraire Baroqueがある。音楽監督は、世界的に有名なアムステルダム・バロック管弦楽団(古楽器オーケストラ)の指揮者トン・コープマンさんだから、人気抜群のプログラムである。


トン・コープマン © Itinéraire Baroque

妻とわたしは、ひまわりと夏雲を眺めながら田舎道を車で1時間走り、演奏会場がある中世の教会に到着した。このプログラムに参加するのは3年目になる。

その日、17世紀後半のバロック作品が、オランダのソプラノ歌手とテオルボ奏者によって演じられた。テーマは“雅の精神”。メロディーも歌詞も、軽やかで、活動的で、愛らしく、心が浮き立ってくる。

パーティで、ソプラノのゾマーさんと話をする機会があった。「2年前、『熱狂の日』音楽祭に招待され、東京国際フォーラムの大ホールで公演したわ。東京は面白い街ね」と彼女は言っていた。


“雅の精神” © Michel Garcia-Luna

Itinéraire Baroqueは6日間にわたって、ドルドーニュの古い教会を会場に開催される音楽祭だ。こどものためのコンサートからアムステルダム・バロック管弦楽団の演奏まで、曲目はすべてバロックである。

プログラムのなかに、5つの教会をハシゴして5つのコンサート(演奏者はひとつの会場に陣取って5回公演)を聴くバロック三昧の日がある。朝10時30分にはじまり、6時15分におわる一日がかりの行事だ。わたしはその日、100キロも車を走らせて教会行脚をした。

演奏者は、コープマンさんが発掘した未来を嘱望される20代の若者である。なかでも、イタリア人バイオリニストとフランス人カウンター・テナーは聴衆をうならせた。




会長のユエさん

Itinéraire Baroqueの会長をしているパリの精神分析医・ユエさんにインタビューを申し込んだら、別荘(17世紀の城!)の夕食会に招かれた。

彼はコープマンさんと二人三脚で、このボランティア組織を支えてきた人だ。音楽祭誕生のきっかけは、二人がほぼ同時期に別荘を買い親しくなり、意気投合したからだという。

“音楽祭の心は?”と彼に尋ねると、「バロック音楽をロマネスク教会で演奏し、二つの伝統の結合を楽しんでもらうこと」との答えがかえってきた。

今年で7回目になる音楽祭も、初年度は一つの教会で、200人の参加者だけだったが、昨年は7日間で34のコンサート、チケット販売数5000、入場者2400まで躍進している。

音楽祭運営の一番の苦労は?と聞くと「やはり資金繰りだね。昨年は赤字だったが、今年はトントンになりそうだ」という。フェスティバルの経費は18万ユーロ(3000万円)、収入は入場券で30%、あとは、企業と個人の寄付もあるが、大部分は国と県からの助成金とのことだった。

“雅の精神”コンサートの入場料は20ユーロだから、40ユーロの補助金がでていることになる。ちなみに、フランスの文化予算は国家予算の1%である。日本の0.1%と比べると溜息がでるほど豊富だ。

しかし、「アンドレ・マルロー(ドゴールの文化相)やジャック・ラング(ミッテランの文化相)時代は、文化振興が国の最優先課題だったが、いまはそうでなく、助成金をとるのが難しくなっている」と彼は嘆いていた。

夕食会の席でユエさんが、仲間の年配の英国人・ストーンさんに「あなたにとって、“バロック音楽祭の心は?”」と尋ねると、その答えは「ボランティアの10家族の交流の楽しさかな」だった。


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