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連載・エッセイ

第13回 秋の一日 ―2008.11.25

ドルドーニュ便り《番外編》


桑の落ち葉

モスクワ経由で15時間かけて日本から戻ってきた。このところ毎朝2時間、庭に溜まった落ち葉を集め片隅に運んでいる。菩提樹、ツタ、イチジクは裸になり落葉がおわっているので、いちど掃除をすれば済むのだが、桑の木は手ごわい。小さな扇子ほどの落ち葉は拾っても、拾ってもなくならない。

昨日は小雨だったので、濡れ落ち葉になった。日本からやってきた“ムッシュ濡れ落ち葉”は、共食いを避けるために、休日を宣言! 今日は、イチョウとクルミの樹の落ち葉をかき集めたが、あと数日は作業が続くだろう。

午後、村に住むリトアニア人の友人、ロン・ヴァスカス夫妻を訪ねた。奥さんのオナは生粋のリトアニア人だが、ロンは少年時代に両親とカナダに移住したので、カナダとリトアニアの二つの国籍をもつ人類学者だ。なぜ、ここに彼らが住んでいるのか? 2004年にリトアニアがEUに加盟し、夫妻もEU市民になったからだ。EU市民になると圏内どこでも暮らせるのである。

夫妻は昨年の今頃、長い間、空き家であった15世紀建の家を買い、修復しながら暮らしている。彼らはこの夏、野菜畑をつくったが、土地が肥えているので見事なトマトができていた。わが家もホーレン草などのおすそ分けに預かった。


ヴァスカス夫妻

2ヶ月ぶりに見るヴァスカス家の部屋が、見違えるようになっていた。壁紙や塗料を買ってきて、すべて自分でやっているわけだが、驚くべき器用さだ。大工や庭師の手間賃が急上昇しているので、わたしもいずれ“セルフサービス族”の仲間にはいることになるだろう。

ロンの趣味の一つは、ソ連邦時代のプロパガンダ(レーニンの彫像から党の宣伝パンフレットまで)の蒐集なので、上海訪問のミヤゲに、『毛沢東のプロパガンダ・ポスター』(パリで購入)というイラスト本を持参したら、非常に喜んでくれた。

赤ワインを飲みながら歓談すること90分。映画ファンのロンから、「最近の日本映画でいいのがある?」と聞かれたので、銀座で見た『おくりびと』を推薦した。「伊丹の『お葬式』を越える面白い作品ですよ」と言うと、ビデオを見たいと言っていた。

ロンは地元の考古学協会に入り、ネアンデルタール人の居住地とドルドーニュ地方で一番大きいロマネスク建築を見てきたことを熱っぽく話し、「君も会員にならない?」と誘ってくれた。話題は、オバマ、サルコジ、円高・ユーロ安などをサーフィンする愉快なひと時であった。


鶴の編隊

夕方、家にもどって空を見上げると、一群の鶴が啼きながら南に向かって飛んでいた。シベリアから北アフリカへの大長征の途上にある鶴の編隊のようだ。長旅ご苦労さんです!


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