白水社 白水社
書籍の検索 →詳細検索はこちら
 

教科書検索はこちらから買い物カゴを開く
白水社 白水社 白水社
トップページ
耳より情報 新刊情報 おすすめ本 全集・シリーズ 白水Uブックス 文庫クセジュ 語学書 雑誌『ふらんす』
岸田國士戯曲賞 パブリッシャーズ・レビュー クラブ白水社 メルマガ「月刊白水社」 教科書見本 連載・エッセイ 書店様向けページ
連載・エッセイ

第19回 オバマの野球帽 ―2009.02.06

ドルドーニュ便り《番外編》


オバマ大統領は早起きで、毎朝ホワイトハウスのジムでひと汗かくのが日課という。ジム通いは長年の習慣のようだ。大統領選に勝利した翌日、ホワイト・ソックスの野球帽を被ってシカゴのジムに入る写真を見たことがある。

それがヒントになったか、どうかは定かでないが、このところ頻繁にル・モンド紙に洒落た広告がでている。米国建国の父ワシントンが、オバマ・マークの野球帽を被っている肖像画である。これは、フランスで最も権威がある百科事典のひとつ『Universalis』の新版の広告で、上の写真の下段に24巻の百科事典が並んでいる。

“非常に重要で、普遍的で、現代的な”がこの百科事典の特徴だと謳い、右上に小さな活字でワシントン項目は6巻、オバマ項目は22巻とある。なかなかエスプリのある広告だ。(黒人奴隷を使って農園を経営していたワシントンは、あの世でこの広告を見て、仰天するかもしれないが)

フランスでのオバマ人気は大変なもので、大統領就任前後、TV、新聞、雑誌は大特集をし、数冊の記念号がでている。月刊誌『L’ Histoire(歴史)』は、オバマの選挙地盤シカゴをとりあげ“アル・カポネからオバマまで”と題する特集を組んだ。この町の歴史、社会、産業、文化(ジャズ、建築)を語り、オバマを“シカゴの男”と名づけている。

シカゴはわたしにとって縁がある町である。ブリタニカ日本版の仕事をしていた頃、本社のあるシカゴを何度も訪れ、親しい友人もいるからだ。

30年来の友人、ブリタニカ総編集長のデール・ホイバーグに久しぶりに電話をかけた。彼は中国語が堪能で、シカゴ大学で京劇をテーマに博士号をとり、日本語も読める。オバマについて彼は次のように語っていた。

 オバマはイリノイ州選出の上院議員だったが、彼のオフィスが同じビルにあったので、ときどきエレベーターや廊下で一緒になっていた。ハローと言うくらいの関係だよ。構えたとこがまったくない、非常に感じのいい人だね。彼のスピーチの才能は抜群だが、ライターとしての才能も素晴らしい。彼の本を読んだが、語彙の豊富さ、言葉の選択のセンスは一流だ。オバマの人生にシカゴが与えた影響は大きい。ミッシェル夫人はシカゴ出身だし、ここで弁護士をしながらシカゴ大学で12年も憲法を教えていたし、政権の中枢はシカゴ人脈だからね。

ブリタニカの編集者は、仕事を中断してTVのある部屋に集まり、大統領就任式の模様を見たという。編集者の一人、シカゴ生まれのロザリン・キイズさん(アフリカ系アメリカ人)にも話を聞いた。

 廊下でなんどもオバマを見かけたわ。親しみやすい、いい人よ。1年前は彼が勝つとは思っていなかった。わたしもオバマ・インターネット・コミュ二ティ(1000万人)の一人だけど、なんどか献金したわ。オバマに投票したのは、アフリカ系アメリカ人だけでなく、あらゆる層の人だったことがいいわね。この国には、希望があるわ。

弾けるような明るい声のキイズさんに、「オバマのあのクールさは、どこからくるのでしょう」と聞くと、「なぜか、わからないわ。不思議だわね」と言う。「彼が育ったハワイでは、ハワイのゆったりした風土がオバマの性格をつくった、と自慢していますよ。彼のクールさをアロハ・ゼン(禅=なにが起こっても慌てず騒がず)と呼んでいます」とわたしが言うと、彼女は大笑いしていた。


連載・エッセイ
温又柔「失われた『母国語』を求めて」
- 第8回 幻の原稿 [2011.12.13]

今尾恵介「日本を定点観測する」
- 第15回 中世の自治都市・堺の今昔 [2011.12.06]

温又柔「失われた『母国語』を求めて」
- 第7回 「ママ語」の正体 [2011.11.28]

今尾恵介「日本を定点観測する」
- 第14回 仙台南隣の宿場町は「副都心」へ ─ 長町 [2011.11.25]

村田奈々子「ギリシアの風」
- 第8回 サイードとカヴァフィス [2011.11.22]



↑ページのトップへ