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連載・エッセイ

南陀楼綾繁(3)『やんごとなき読者』 ―2009.05.26

再読愛読

南陀楼綾繁(ライター・編集者)第三回

『やんごとなき読者』アラン・ベネット 著/市川恵里 訳

 『やんごとなき読者』の新聞広告にあった、「女王エリザベス、読書にハマる」という惹句を見て、へえ、十六世紀にエリザベス一世がどんな本を読んだかを研究した人がいるのか、と興味をそそられた。白水社は『本棚の歴史』(ヘンリー・ペトロスキー)、『図書館 愛書家の楽園』(アルベルト・マングェル)など書物史に関する本を出しているので、その系列だと思ったのだ。
 届いてみたら、同じエリザベスでも「一世」ではなく、いま在位中の「二世」を主人公にした小説だったので驚いた。
 それまで「本を好むなどということは他の人にまかせてきた」女王は、迷い犬の後を追って移動図書館に入り込み、そこで読書好きの少年ノーマンに会う。彼に導かれてさまざまな本を読むようになった女王は、一冊の本が別の本につながり、次々と扉が開かれていくという興奮を味わう。
 「ケーキを紅茶に浸すと(下品な習慣ね)過ぎ去った人生のすべてが蘇ってくる」程度しか知らなかった『失われた時を求めて』を夏休み中かけて読み進む女王の姿に、やはり長大な『チボー家の人々』を読んでいく高野文子『黄色い本』の主人公が重なる。
 この小説は、時間を忘れて読書に没頭することの楽しさを、久々に思い出させてくれた。
 ちなみに、誰かの手によって本書の日本版が書かれるとして、そこで「やんごとなきお方」が読むのがどんな作家と作品なのかを想像してみるのもちょっと愉しい。



やんごとなき読者
やんごとなき読者

アラン・ベネット 著/市川恵里 訳


飼い犬が縁で、読書に目覚めた女王エリザベス二世。読書は彼女に喜びと、ひとつの疑問をもたらした。女王ではない、「わたし」の人生とは、何……? 英国ベストセラー小説!


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