
千野帽子(勤め人・文筆業)第一回
『オリエントの星の物語』ミシェル・トゥルニエ 著/榊原晃三 訳
ミシェル・トゥルニエの『オリエントの星の物語』(1980)は、大風呂敷もいいところの小説で、幼子イエスを星に導かれて訪ねた東方の三賢人王の伝説を下敷きにしています。榊原晃三訳が白水社《世界の文学》という白い表紙のシリーズから出ていて、10代のころ、町の古書店で入手しました。妙なところに扉のある乱丁本でした。
三賢人王はそれぞれ悩みを抱えていた。黒人王ガスパールは、醜いものとされた白人の女奴隷に失恋してしまったし、若いメルキオールは叔父によって王位継承権を奪われて流浪の身。そしてバルタザールは肖像画や人物彫刻に夢中で、国禁の偶像崇拝に耽っていると指弾されている。
そして小説は、東方の賢人王に四人目がいたという伝説に基づいて、新キャラ・インドのタオール王子を投入します。甘いものに目がないこのスヰーツ王子は、西方渡来の究極の甘味を求めて国を出て、知らず知らずイエスのもとに近づいていく。
読んで鳥肌モノの感動を味わった結果、大学でフランス文学科に進み、留学先でもトゥルニエ論を一本書いたりして、気がついたら人生が妙なことになったまま、現在にいたっています。
2001年に新装復刊したとき、レーモン・クノー『はまむぎ』(1933)の滝田文彦訳も同時に復刊したっけ。これは間違いなく「最強の20世紀小説」で、トゥルニエ以上の爪痕を人生に残されてしまったかも。もっともこちらは初読は原書だったので、今回はトゥルニエのことを書きました。

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オリエントの星の物語
ミシェル・トゥルニエ 著/榊原晃三 訳
星に導かれてはるばる旅をした〈東方三博士〉には、四人目がいた! 聖書と伝説から独自の神話を織りなす、傑作バロック小説。
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