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連載・エッセイ

【11】例文を比べれば… ―2009.08.10

語学書のことば

 このコーナーで取り上げる本を選ぶため、最近の白水社の語学書を読み比べてみた。ここ数か月は、しっかり記述された文法書が多く出版されている。
 文法書は、その言語の入門段階が終わって、知識を整理するために手に取る人が多い。あるいは入門書と並行しながら、という場合だってあるだろう。
 だが、とくに勉強していなくても、いろんな文法書の例文の和訳を読み比べる作業はなかなか楽しい。文法事項の分類は違っていても、似たような例があったり、かと思えばかなり独特な例もあったり、それぞれの個性が光るのだ。
 譲歩を示す文のうち「(たとえ)…であっても」という表現で比べてみよう。


たとえ彼が真実を語ると誓っても、私は信じません。
(『現代ギリシア語文法ハンドブック』187ページ)


 典型的な例。このような構文では、前半の内容を後半でひっくり返す場合が多い。それにしても、ずいぶん信用されていない「彼」で、少々気の毒。


たとえ空腹だとしても、彼は私たちを手伝ってくれるでしょう。
(『ブラジルポルトガル語の基礎』179ページ)


 いったい何をどう手伝ってくれるのかはともかく、この「彼」は、空腹という厳しい条件(?)にもめげず、救いの手を差し伸べてくれる善人である。ちなみにわたしは、空腹だと何もできない。


彼が国王であったとしても、私は彼を歓迎しないでしょう。
(『アラビア語文法ハンドブック』141ページ)


 こちらの「彼」は、またずいぶんと嫌われたものだ。とはいえ、長い人生には、どうにも気の合わない人も存在する。
 それにしても、文法書って、ずいぶんいろんな「彼」が登場するんだなあ。著者はみんな、このような文脈のない短文を駆使して、文法をなんとか分かりやすく解説しようと努力している。そして、それを紹介するのがわたしの役目。
 「たとえあまり読んでもらえなくても、『語学書のことば』は続けよう」
 いや、やっぱり読んでください。

現代ギリシア語文法ハンドブック
現代ギリシア語文法ハンドブック

福田千津子 著

 コンパクトながらも手応え十分な文法便覧。

ブラジルポルトガル語の基礎
ブラジルポルトガル語の基礎

高橋都彦 著

 基礎をしっかり身につける、本格的入門書。

アラビア語文法ハンドブック
アラビア語文法ハンドブック

新妻仁一 著

 待望久しい、本格的なアラビア語の文法書。

連載・エッセイ
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