
英語のアルファベットの活字体を思いおこしてみてください。大文字と小文字で形が同じものは、c、o、p、s、v、w、x、zと8組みだけです(…)。
では、モンゴル語ではどうでしょうか(…)。大文字と小文字で形が同じものがなんと27組みもあるのです。ちがうのは4組みだけです。
(22ページ)
モンゴル語はキリル文字を使って表記される。つまりロシア語と同じ。固有の民族文字もあるのだが、モンゴル国では1940年代に公用文字となったキリル文字が広く普及している。20年ほど前に訪れたモンゴルの首都ウランバートルでは、至る所にキリル文字が踊っていて、わたしはこれがずっと気になっていた。
だって、さっぱり分からないのだから。
同じキリル文字でも、スラヴ圏を旅していれば、なんとなく理解できるものが多いのだが、モンゴルでは見慣れた文字でまったく想像のつかない単語が綴られる。ワクワクするではないか。
本書の1章「文字と発音のしくみ」を読んでいても、なーんだ簡単じゃん、というよりは、えっ、そうなんだ、だったら気をつけなきゃ、という場合のほうが多かった。文字体系は言語ごとに決まっているものだし、同じく見知った文字でもラテン文字では何も感じないのだから、勝手な意見なのだが、やはりショックを受ける。
ただし原則は同じだ。上に引用した話は、わたしもよく使うネタ。キリル文字は大文字と小文字で大きく形が違うのがたった四つ、しかもそのうちの三つはа、е、 ёなんだから、ほとんど心配がないね、なんて解説を自分でもしている。奇妙なところで親近感が湧く。
ということで気を取り直し、ロシア語にない二つの文字を頭に叩き込み、細かい微調整をしながら、果敢に読み進める。すると新しい世界が開ける。
モンゴル語とロシア語は系統がまったく異なるのだから、しくみはもちろん違う。だから戸惑って当然なのだが、本書は何も知らない読者を親切に導いてくれる。モンゴル語の特徴の一つである「母音調和」についても、こんな難しい術語を使わずやさしく解説。読み進めるにつれ、なじみの文字が織りなす新しいしくみの世界が、なんとも心地よくなってくるのである。
それでも、本書の中にほんの少し見られるロシア語起源の単語を見つけると、ちょっとだけ嬉しくなってしまう。

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モンゴル語のしくみ
温品廉三 著
はじめての外国語なのにスラスラ読める! 文法用語や表に頼らない、とっても楽しい入門書です。名前しか知らなかった‘言葉’が、あなたのお気に入りになるかもしれません。
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