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連載・エッセイ

【最終回】標準ロシア語入門 ―2010.03.19

語学書のことば

 アレクサンドル・セルゲーエヴィチ・プーシキンは一七九九年六月六日に生まれ、一八三七年二月一〇日に死にました。
(150ページ)

 連載「語学書のことば」も今回で最後。これまでにさまざまな語学書を取り上げてきたが、フィナーレはやっぱり、長年付き合ってきたロシア語の、しかも究極の語学書を紹介したい。
 『標準ロシア語入門』は、わたしにとってバイブルである。この本でロシア語の勉強を始め、基本例文と応用例文のすべてを暗記した。どこのページに何が書いてあるか、今でもだいたい頭に入っている。後にはこれを使って教えるようになった。すべての始まりがここにある。
 語学書にとって最も大切なことは何か。
 それは例文がしっかりしていることである。どんなに説明が分かりやすくても、レイアウトが工夫されていても、例文がダメではお話にならない。文体が統一され、口語的過ぎず、幅広く使える例文が、なるべくたくさん収録されていること。これが理想であり、本書ではその理想が実現されている。
 もちろん、版を重ねるにつれて例文も改訂されてきた。かの国自身が大きく変わったからである。本書でも「ソ連」は「ロシア」へ、「レニングラード」は「サンクト・ペテルブルグ」に変更された。
 上の引用は第三四課「時の言い方―順序数詞を使って」に出てくる例文である。わたしが学んだ旧版では次のようになっていた。「ウラジーミル・イリイチ・レーニンは一八七〇年四月二二日に生まれ、一九二四年一月二一日に亡くなりました」
 しかし、そんな例文も無駄ではなかった。確かにレーニンおじさんは今では人気を失った。だがパターンさえ覚えておけば、これが偉大な詩人の生没年になっても何も困らない。他も同様で、第一五課で「共産主義の建設」が「ホテルの建設」に変わろうとも、恐れることはないのである。
 ところで、本書第二課の応用例文には「黒田といいます。学生です」というのがある。多くの人がわたしのことだと信じているようだが、そうではない。わたしが勉強を始めた頃にはすでにあった例文で、昔から発音するたびに、なんだかくすぐったいような気分だった。
 一方、改訂版の広告ページにある著者名の「黒田」は、間違いなくわたしのことであり、こちらもやっぱり、くすぐったいような気分になるのである。

標準ロシア語入門
標準ロシア語入門(改訂版)
東一夫、東多喜子 著/E.ステパーノワ 校閲

 よく使われる基本例文、対話形式の応用例文と練習問題で表現力を高めます。基本単語が自然と身に付くよう、660語を反復使用。巻末には読み物も収録。

連載・エッセイ
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