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連載・エッセイ

松本哉「世の中、働かないに越したことはない!」 ―2010.05.31

リサイクルショップ「素人の乱」5号店=東京・高円寺

 ECDというラッパーが東京は高円寺駅前のトラックの荷台のステージ上に立ち「働かねえぞ! は、た、ら、か、ね、え、ぞ!!」っていう、コールを連呼!! で、集まった数百人の大アホな若い奴らの群衆からも「は、た、ら、か、ね、え、ぞ!」のとんでもないレスポンス! たまたま通りがかった奴らも「なんだなんだ!」と、集まってくる! おお、高円寺駅前がまさに大パニックに!! この光景、何かというと、ちょうど3年ほど前に行ったゲリライベント「高円寺一揆」。いや~、"働かねえぞ"の一言であれだけ盛り上がるなんて聞いたことないね! いや、これは最高だったね! まさに祭。

 まあ、そうはいいつつ、自分はその高円寺の街でリサイクルショップをやっている。「働かねえ」どころか、この仕事は性に合ってるのか、楽しいので毎日のように店に出ている。「おい、言ってることが全然違うじゃねえか!」と、こん棒を振り回そうとしているキミ、まあ待て。もうちょっと聞いてくれ!
 何が楽しいかっていうと、まず変わった家具や雑貨など、次々と妙なモノが舞い込んでくるのがいい。さらに、うちの店は深夜の1時まで営業しているので、夜なんか適当に店番をしてると、いろんな人が現れる。ベロンベロンに酔っ払って買い物に来る者もいれば、ヒマすぎて無意味にウロウロしている大バカな奴なんかが来たりもする。こんなお客さんと店で飲み始めたりすることもよくある。で、その人が友達を呼んできたりして、結局、朝まで店を開けてることだってある。さらには、「ちょっとイベントでもやろうか!」なんてことになったら、店の倉庫に山ほどある物資をひっぱり出してきて、映画の上映だろうとライブだろうと、軽いイベントをやる機材ぐらいはいつでも自前で揃う。
 また、店をやっていると、近所のおばちゃんたちや他の商店主のおっさんたちとも仲良くなるので、食べ物や酒を持ってきてくれたりすることだってある。おお~、こりゃ、もはや遊んでるんだか働いてるんだか、自分でもはっきりしないぐらいだ。
 おまけに、ひたすらモノを作って、ひたすら捨てて、新しいものを買うっていう、どうしようもない経済の世の中で、それに対抗して「使えるものを大事にする」っていうことは、まあ納得のいくことだ。
 半分遊びながら店をやって、友達もどんどんできるし、そのドサクサまぎれに世のためにもなったりする! おお、こりゃいいね!! まさに、ストレスゼロだ!!

 ところが! ちょっと周りを見渡してみると、仕事でストレスを感じてたり、苦労してる人ってやたらたくさんいる。うちの店でも、夜遅くにぐったりして「仕事がつらいんですよ~」などと愚痴を言い出す人もいるし、夜逃げの手伝いをお願いされたことだってある(!)。事情は知らないが、とにかく大変なことは確かだ!!
 職場の人間関係だったり、ムチャな業務内容だったり、いろいろあるんだろうが、話を聞いてると、むやみに「ちゃんと働かないと!」っていうプレッシャーを強く感じているみたいだ。でも、そんなに、みんながみんな働かなきゃいけないもんなんだろうか……。

 どうも巷では、働いていることが美しいかのように考えられがちだ。ま、確かに悪いことじゃないかもしれないけど、なんでもかんでも働きゃいいってもんじゃない。たとえば、ヤミ金で働いてる人がやたらと仕事熱心になって、貧乏人を追いかけまくったりしても困る。ヤミ金業界で「あいつはいい仕事するんだよ~」なんて言われてしまう人は相当悪い人だろうし。うーん、どうも美しくない。出会い系サイトのサクラとか、行政に雇われてひたすら路上を見回ってる監視員とかも同じだ。あるいは、自動車工場あたりで汗水たらして働いている青年なんかはどうか? それはそれで「いや、立派だなあ!」って感じもする。でも、その仕事に対する意気込みや、その人の人格は立派かもしれないけど、これだけ環境問題とかエコとか言ってる時代に、会社の儲けのためにむやみに車ばっかり作っているその産業自体は、立派じゃないどころか世の中にとって迷惑なぐらいだ。

 じゃあ、働け働けって言うけど、仕事っていったい何なんだよ!!

 よくよく考えてみると、仕事っていうのは、本当は自分たちが生きている世の中を何とかまわしていくための業務のこと。別に始めから仕事ってのがあるわけじゃない。趣味と一体化している場合は別だが、本来は仕事なんてなきゃないほうがいいものなのだ。
 う~ん、確かによくよく考えたら、経済や技術も発展してきて豊かになってきてるはずなのに、その結果は仕事が増えただけじゃねえか! しまった、だまされた。なんだ、だんだん腹立ってきたぞ、コンチクショー!!
 ご飯を食べるために食器を作ったり、あまりにも暑いから扇風機やエアコンを作ったり……、と、世の中は進歩してきた。その一方で、仕事を作るための仕事のような謎のIT企業なんか増殖しまくってたり、よくわからない方向に行くことも多い!! まったく、仕事が増えるから変なものに手を出さないでほしいね。年度末の公共工事だってそうだし、買い替えさせるためだけにモデルチェンジした新製品だったり、もう人の総仕事時間を増やしてるとしか思えないぞ! いやがらせか!
 だれだ、宇宙なんか開発してるやつは! やめろやめろ。おい、NASA! 勝手に月とか行くなオマエ!

 で、そう思ったときに、街を見渡してみると、妙な仕事っぷりの奴らはたくさんいる。高円寺なんかもヒマ人がやたらと多い街なので、どいつもこいつも勝手なことをやっていて楽しそうだ。カフェやら古着屋やらを始めてみたり、イベントスペースを運営してみたり、「することないから占いでもやろうかな」と、路上に机を出して商売し始めたやつまでいて、これが不思議なことに、繁盛してたりする。アクセサリーなんかを作ってフリマで売ったりもする。ヒドイやつなんか古着のゼロ円ショップ(ようするに無料配布!)なんかをやり始めて、メシにありついたりしていたやつまでいた(残念ながら「儲からない」といって今はやめている)。で、人が増えてくると、こんどは晩飯を大量に作って売り歩く人が出てきたり……。なんだか知らないが、何とかなってる。
 もちろん、こういう連中は、どこにいってもいる。とりあえず、自分のやりたいようにやってるのがいいね!

 仕事、仕事ってひとくくりに言うけど、いまやっている仕事が、ちゃんと納得できる仕事かどうかってことが一番大事だってことかもしれない。いやいや~、そう考えたら今の世の中って、ろくな仕事がないのかもしれないね。
 結局のところ、いまの世の中、金持ち連中が貧乏人を集めて働かせて金もうけしてるような職場が多すぎる。こういう連中が仕事増やしてるんだよな。う~ん、そんなことが「働く」ことだったら、まっぴら御免だね……。ってことで、いまの若い連中なんかは「働かねーぞ!」っていうフレーズに「そうそう、やってらんねーよ!」って反応して、ワラワラと集まってくるに違いない。
 よし、やめたやめた! こうなったら働くのをやめよう!!

▼筆者=一九七四年生まれ。リサイクルショップ「素人の乱」5号店店主。「俺のチャリを返せデモ」「PSE法反対デモ」など独自のデモを行う。〇七年杉並区議選落選(一〇六一票獲得)。それらの活動を追った映画に『素人の乱』(中村友紀監督)がある。著書に『貧乏人の逆襲! タダで生きる方法』など。http://hajime.dotera.net/
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