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第2回 林ひふみ【中国語】 ―2010.07.21 【主な使用地域】中国、台湾、シンガポール、マレーシア
【話者数】13億人 【使用文字】漢字、ローマ字 【あいさつしてみよう】ニイハオ!(こんにちは) 中国語の魅力の一つは、さまざまな母語を持つ人たちの共通語だということ。日本の26倍ある国土に13億人が暮らす中国では、多数派の漢民族が話す言葉も、地域ごとに大きく異なる。 たとえば、上海語や広東語を話す人の数は、フランス語やイタリア語よりも多い。北京語を基礎とする標準中国語(普通話)との違いも大きくて、方言というより、ヨーロッパの各国語をイメージした方が近いくらいだ。 同じく中国語を使う台湾では、全人口2300万のうち、73%が福建語系の台湾語を母語とする人々だ。ほかに客家が12%。第二次世界大戦後に中国各地から移住した外省人が13%。そして先住民が2%となっている。九州ほどの小さな島で、大きく分けても4種類の言語が日常的に使われているのだ。そうした多言語な社会の様子を知るには、台湾映画がおすすめである。 たとえば、1980年代以来、台湾映画界をリードしてきた侯孝賢監督。外省人だが、広東省梅県という客家地区の出身で、母語は客家語だ。自伝的要素の強い初期作品では、多言語生活の生む悲哀が描かれた。『童年往事〜時の流れ』(1985)の主人公は、台湾南部の港町高雄郊外で育つ。学校の授業は標準中国語、地元の友人たちは台湾語、家族の会話は客家語だ。祖母は客家語しか話せないので、家族以外とコミュニケーションがとれず、亡くなるまで、故郷に帰る道を探していた。 新しい作品では魏徳聖監督の『海角七号〜君想う、国境の南』(2008)がイチオシ。映画の舞台は台湾最南端の恒春半島だ。ここの人々は台湾語と標準中国語のバイリンガル。客家や先住民であれば、日常的に3言語を使い分ける。美しい南シナ海の砂浜や、甘く悲しい恋物語に加え、登場人物が場面や相手によって言語を切り替えるのも見どころの一つだ。日本公開時には、字幕に印をつけることで、台湾語と標準中国語が区別できるよう工夫されていた。 さらに日本統治時代に育った老人は今も日本語の歌を歌い、先住民の歌にもコウバ(工場)、タイホク(台北)など日本語由来の単語が出てくる。恒春半島は近代日本最初の対外戦争だった牡丹社事件(1874)の現場でもある。日本人ヒロイン友子の乗ったマイクロバスが、城門を通れずに立ち往生する恒春城は、なんと19世紀末に日本軍の侵略を防ぐために建てられたものだという。台湾映画は奥深いのだ。 (筆者=明治大学理工学部准教授) |
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