《エクス・リブリス》とは、「蔵書票;〜の蔵書から」を意味します。独創的な世界の文学を厳選して贈るシリーズです。

最新刊


地図になかった世界
The Known World

エドワード・P・ジョーンズ
Edward P. Jones
小澤英実訳

南北戦争以前、「黒人に所有された黒人奴隷」たちを描いた歴史長篇。日々の暮らしの喜怒哀楽を静かに語り、胸を打つ。ピュリツァー賞ほか主要文学賞を独占した話題作。柴田元幸氏推薦!

購入ページへ


好評既刊


ブエノスアイレス食堂
Manual Del Caníbal

カルロス・バルマセーダ
Carlos Balmaceda
柳原孝敦訳

故郷喪失者のイタリア人移民の苦難の歴史と、アルゼンチン軍事政権下の悲劇が交錯し、双子の料理人が残した指南書の驚嘆の運命、多彩な絶品料理、猟奇的事件を濃密に物語る異色作!

購入ページへ


デニーロ・ゲーム
De Niro's Game

ラウィ・ハージ
Rawi Hage
中野学而訳

内戦下のベイルートで、過酷な日常を生きる少年バッサームと、「デニーロ」と呼ばれる幼なじみのジョルジュ、二人の友情の行方は? 国際IMPACダブリン文学賞受賞作。

購入ページへ


イルストラード
Ilustrado

ミゲル・シフーコ
Miguel Syjuco
中野学而訳

巨匠作家が死体で発見され、未完の小説が消えた!? 助手ミゲルは真相を求めてフィリピンに赴くが、捜査は難航する……。注目の新人による、多数の声をちりばめた迷宮的な長篇。

購入ページへ


ヴァレンタインズ
Ut og stjæle hester

オラフ・オラフソン
Olaf Olafsson
岩本正恵訳

「一月」から「十二月」まで、夫婦や恋人たちの愛と絆にひびが入る瞬間を鋭くとらえた、O・ヘンリー賞受賞作を含む12篇。現代アイスランド文学の旗手による、珠玉の第一短篇集。

購入ページへ


兵士はどうやってグラモフォンを修理するか
Ut og stjæle hester

サーシャ・スタニシチ
Saša Stanišić
浅井晶子訳

1992年に勃発したボスニア紛争の前後、ひとりの少年の目を通して語られる小さな町とそこに暮らす人々の運命。実際に戦火を逃れて祖国を脱出し、ドイツ語で創作するボスニア出身の新星による傑作長編

購入ページへ


馬を盗みに
Ut og stjæle hester

ペール・ペッテルソン
Per Petterson
西田英恵訳

「ぼくら、馬を盗みに行くんだ」1948年、スウェーデン国境に近いノルウェーの村で、父さんと過ごした15歳の夏。老境にさしかかった「わたし」の脳裏に少年時代の思い出がよみがえる。

購入ページへ


昼の家、夜の家
DOM DZIENNY, DON NOCNY

オルガ・トカルチュク
Olga Tokarczuk
小椋彩訳

チェコとの国境地帯にある小さな町ノヴァ・ルダ。そこに移り住んだ語り手の紡ぐ夢、記憶、逸話、伝説……国境の揺れ動いてきた土地の記憶を伝える、新世代のポーランド人作家による傑作長編。

購入ページへ


ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン
The Irresistible Inheritance of Wilberforce

ポール・トーディ
Paul Torday
小竹由美子訳

『イエメンで鮭釣りを』に続くトーディの第二作!ボルドーワインの虜となった若き実業家の転落を、ユーモラスかつ苦味に満ちた語りで、四つの「ヴィンテージ(醸造年)」を遡りながら描き出す。

購入ページへ


そんな日の雨傘に
Ein Regenschirm für diesen Tag

ヴィルヘルム・ゲナツィーノ
Wilhelm Genazino
鈴木仁子訳

靴の試し履きの仕事で、街を歩いて観察する中年男の独り言。関係した女性たち、子ども時代の光景……居心地の悪さと恥ずかしさ、滑稽で哀切に満ちた人生を描く。

購入ページへ



野生の探偵たち
Los detectives salvajes

ロベルト・ボラーニョ
Roberto Bolaño
柳原孝敦、松本健二訳

謎の女流詩人を探してメキシコ北部の砂漠に向かった詩人志望の若者たち、その足跡を証言する複数の人物。時代と大陸を越えて二人の詩人=探偵のたどり着く先は? 作家初の長編にして最高傑作。

購入ページへ

煙の樹
Tree of Smoke

デニス・ジョンソン
Denis Johnson
藤井光訳

ベトナム戦争下、元米軍大佐サンズとその甥スキップによる情報作戦の成否は?『ジーザス・サン』の作家が到達した、「戦争と人間」の極限。山形浩生氏推薦!《全米図書賞》受賞作品。

購入ページへ

青い野を歩く
Walk the Blue Fields

クレア・キーガン
Claire Keegan
岩本正恵訳

名もなき人びとの恋愛、不倫、小さな決断を描いた世界は、「アイリッシュ・バラッド」の味わいと、哀しみ、ユーモアが漂う。アイルランドの新世代による、傑作短篇集。小池昌代氏推薦!

購入ページへ

悲しみを聴く石
Syngué sabour

アティーク・ラヒーミー
Atiq RAHIMI関口涼子訳

戦場から植物状態となって戻った男。コーランの祈りを唱えながら看病を続ける妻。やがて女は、快復の兆しを見せない夫に向かって、誰にも告げたことのない罪深い秘密を語り始める……。

購入ページへ

ミスター・ピップ
Mister Pip

ロイド・ジョーンズ
Lloyd Jones
大友りお訳

島の少女マティルダは、白人の先生に導かれ、ディケンズの『大いなる遺産』を読み、その世界に魅せられる。忍び寄る独立抗争の影……最高潮に息をのむ展開と結末が! 英連邦作家賞受賞作品。

購入ページへ

通話
Llamadas telefónicas

ロベルト・ボラーニョ
Roberto Bolaño
松本健二訳

スペインに亡命中のアルゼンチン人作家と〈僕〉との奇妙な友情を描く「センシニ」をはじめ、心を揺さぶる14の人生の物語。ラテンアメリカの新たな巨匠による、初期の傑作短編集。

購入ページへ

イエメンで鮭釣りを
Salmon Fishing in the Yemen

ポール・トーディ
Paul Torday
小竹由美子訳

砂漠の国に鮭を放つ!? イギリス政府も巻きこんだ奇想天外な計画「イエメン鮭プロジェクト」の顛末はいかに……処女作にしてイギリスで40万部を記録したベストセラー長編。

購入ページへ

ジーザス・サン
Jesus' Son

デニス・ジョンソン
Denis Johnson
柴田元幸訳

緊急治療室でぶらぶらする俺、目にナイフが刺さった男。犯罪、麻薬、暴力……最果てでもがき、生きる、破滅的な人びと。悪夢なのか、覚めているのか? 乾いた語りが心を震わす短編。

購入ページへ

 『煙の樹』刊行記念・現代米文学・俊英対談!(前編) 都甲幸治&藤井光、『煙の樹』とジョンソンを語る【2】

都甲:ディスコミュニケーションというか、恋愛も含めて大事なところで言葉が通じなかったり、わかり合えなかったり。いつも人々の心が擦れ違い、まったくうまく行かない。
 原文には複数の言語が出てきますが、翻訳が大変だったのでは? そもそもベトナム語の名前や地名もありますし、本文中に平気でフランス語が出て来ますよね。

藤井:フランス語のアルトー等の文章があり、その下に英訳が載っているんですが、ジョンソン本人に聞いて「日本語だけにしてくれたらいい」という言質を取りつけました。

都甲:僕はドミニカ出身の作家ジュノ・ディアスの『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』を訳しているんですが、本文中にはスペイン語と英語が出てきます。すべてを日本語にするとわかりやすくなりすぎて、登場人物同士もお互いに何を言っているかわからない、というコミュニケーションの途切れた感じがなくなってしまう。

藤井:マルチリンガルなものはなかなか翻訳が難しいですよね。ディアスもそうですが、英語圏の読者もスペイン語が出て来た時点で、一瞬なんだこれは、と思うわけじゃないですか。綴りが似ているからなんとなくわかるものもあるでしょうが、絶対完全には理解できない、その違和感を残したいですよね。

都甲:しかもスペイン語圏はすべて同じスペイン語かと思ったら、国ごとにだいぶ違うんですね。村上春樹作品を英訳したアルフレッド・バーンバウムはスペイン語圏育ちなので、ディアスのスペイン語も見てやるよ、なんて以前言ってくれましたが、実はドミニカのスペイン語はドミニカ出身の人に聞かないと分からない部分も多いんですよ。
 ジョンソンはベトナムがひとつの世界ではないことも、うまく表していますね。北と南では歴史的にも違う国だったわけですし、土の色だって赤いところと黒いところではまったく異なる。さらには中国人がたくさんいるし、山岳民族の言葉もわからない。政治的立場だって、軍人か民間人かゲリラかで違う上に、言語的にも文化的にも分断されている。そんな中をアメリカ人が彷徨う。誰を信用していいのかわからないが、誰も信用しなければ発狂するしかないんです。ジョンソンは本書で、西洋人の目を通してオリエンタリズム批判をやる、という不思議な作業をしていますよね。

藤井:これは本人が幼少期をアジアで過ごしているというのが大きいのではないでしょうか。東京にいた頃の記憶も割とはっきり覚えていて、当時は女性は着物だったとか、ラムネの瓶が大好きだったとか話していました。冒頭にも横須賀と横浜が出て来ますし。10歳くらいで東京からマニラに行ってるんですが、結構悪かったみたいですね。僕が行ったときはドラッグは全部絶っていましたけれど。

都甲:スチュアート・ダイベックが2008年に来日したとき、ジョンソンと大学で同僚だったという話になったんですよ。「全米図書賞も獲って、本当にあいつは才能があって凄い奴だ」とダイベックが言うので僕は「全く同意するけれども、僕はああいう人は近所に住んでいて欲しくない」とこたえると、「今はドラッグもやめて大分真面目になったから大丈夫」と(笑)。お互いかなり尊敬し合っているようで、ダイベックも嬉しそうに話していました。

藤井:奥さんの管理下で見事に更正したようですが、それでもやっぱりあの人の隣には住みたくないかな(笑)。あまりに生活能力がないんですよ。お金なんて使い始めると止まらない。まさに創作と同じ生き方をしているんだと思うんですが、何かやり始めると止まらない、ずっとそのまま突っ走って行く。

都甲:もしかしたら『煙の樹』も、どうにか25年かけてまとめただけで、本当は草稿が膨大な量、10倍ほどもあるのかもしれないですね。

藤井:あり得ますね。プロットとは直接関係のないようなシーンの描写ですとか、プロット上から見たら脱線と思われる箇所が結構あるじゃないですか。それが魅力でもあるんですけれど、ひょっとしたらそこからもっと脱線して行けた可能性もありますね。

都甲:あるいは、その25年間に書いた多くの作品は、『煙の樹』の脱線から生まれたとも考えられませんか? 短篇や中篇が多いし、なんとなく雰囲気が共通している気もする。『煙の樹』が一本の軸になって、色々な作品を産んでいった……単に僕の妄想なんですが(笑)。

藤井:登場人物も重なっていますしね。Fiscadoroだったら、『煙の樹』の19XX年・後日譚という形で登場していても全然おかしくない。

都甲:3~4年前に大学院の授業でFiscadoroを取り上げたんですが、みんな、なんだかよくわからないけどすごく面白いねと言っていました。邦訳がないのが不思議なくらい。『ジーザス・サン』は映画化もされ、女優としてミランダ・ジュライが出ていたりして、アメリカではジョンソンは読者に愛され尊敬もされている作家なのに、どうして日本語訳が出なかったのかな。ようやく「エクス・リブリス」シリーズで二冊出ましたが、今後も続いてほしいですね。

プロフィール: 都甲幸治(とこう こうじ)
1969年福岡県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程を経て、現在は早稲田大学文学部准教授、翻訳家。著書に『偽アメリカ文学の誕生』(水声社)、訳書にファンテ『塵に訊け!』(DHC)、ブコウスキー『勝手に生きろ!』(河出文庫)、フィッツジェラルド『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(イースト・プレス)他多数。
プロフィール: 藤井光(ふじい ひかる)
1980年大阪生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て、現在、同志社大学文学部英文学科助教。

第7回配本『煙の樹』2010.03.02


エクスリブリス
特色

欧米はもとより、ラテンアメリカ、ロシア、東欧、アジア、オセアニア、アフリカまで、まさに「世界の文学」を幅広く紹介していきます。

頭角を現し、注目を集めている新人、気鋭から、隠れた名作家まで、今こそ読んで新しい、ユニークで意欲的な作品を厳選します。

柴田元幸、岸本佐知子、岩本正恵、野崎歓、鈴木仁子、沼野恭子ら第一線の翻訳家をはじめ、藤井光(アメリカ文学)、渋谷豊(フランス文学)、松本健二(ラテンアメリカ文学)ら新進翻訳家を積極的に起用します。

装丁家、緒方修一による、各作品にふさわしい清新なデザイン、瀟洒な造本、読みやすい本文レイアウトでお届けします。


推薦のことば

「期待の現代文学」
 柴田元幸

世界のいろんな場所で、日々いろんないい小説が書かれ、出版されている。だから、「この本をぜひ出したい」という編集者がいて、「この本をぜひ訳したい」という翻訳者がいて、その情熱を共有する人間が周りに何人かいれば、とてもいい現代文学のシリーズが出来ると思うし、事実このシリーズ、かなりそうなりつつあります。

「太陽との距離」
 古川日出男

世界には中心はない。ある偉大な作家がAという地域にいても、Aこそが核だ、とは断言できない。ある革新的な作品がBという国(の言語)で書かれていても、Bの国語こそが今後の文学の核となる言語だ、とは判断できない。だが地球上のどんな場所も、太陽とは等距離だ。それを理解した新しい“本”だけが、ここに世界文学として届けられるだろう。

「本を片手に旅するように」
 桜庭一樹

飛行機に乗ったら世界が、「おぉ!」ぎゅんと狭くなるように。タイムマシンに乗ったら、「あれ?」過去がもうすぐ外に在るように。「エクス・リブリス」の本たちが思わぬ空間と時間に連れてってくれるとよい。あてもなく旅をするように、気楽に、刺激的に世界文学を読み続けることができたらそれだけで幸せです。


今後のラインナップ

カルロス・バルマセダ
 柳原孝敦訳
『ブエノスアイレス食堂』
(アルゼンチン)
第17回配本・2011年10月上旬刊行予定

エドワード・P・ジョーンズ
 小澤英実訳
『地図にない世界』
(アメリカ)

蘇童
 飯塚容訳
『河岸』
(中国)

アルベルト・ルイ・サンチェス
 斉藤文子訳
『空気の名前』
(メキシコ)
ジョー・ブレイナード
 小林久美子訳
『ぼくは覚えている』
(アメリカ)