芸術の秋 ――“荒業ミュゼ巡り”に挑戦!
パリには美術館入り放題の「パリ・ミュージアム・パス」というものがある。パリとその近郊60ヵ所以上のミュゼやモニュメントに入れるスーパー・カードだ。何と言っても行列を横目に、待たずに入れる点が素晴らしい。2日・ 4日・6日用と3種類あるのだが ( 32〜64€) 、最短2日間パスでもかなり使える。またノクチューン nocturne と銘打って夜遅くまで開館するミュゼもある。これは木曜・金曜が多いので、1日目を木曜、2日目を金曜に設定すると、こんな豪華な“荒業ミュゼ巡り”ができる。足元はジョギングシューズ推奨。

■1日目(木曜日)
9時15分開館のクリュニー中世美術館(地図Ⓐ) からスタート。中世の装飾美術品やローマ時代の大浴場も有名だが、見るべきは6枚の歴史的タペストリー《貴婦人と一角獣》だ。場所は1階の13号室。そして20号室の礼拝堂も必ず。
次にRERのC線でオルセー美術館(Ⓑ)へ。館内に入ったらもと駅舎だった特徴的な空間をひと睨み、《草上の昼食》《画家のアトリエ》《落ち穂拾い》《朝、ニンフの踊り》などを見て速攻5階に上がってしまう。印象派の殿堂だ。特にゴッホ、セザンヌがよい。アールヌーボーに興味があるなら、中階に下りてNo61からNo66室までスイッと通り抜ける。そうでなければすぐ地上階へ。オペラ座の模型、彫刻の空間を通って見上げると名物の大時計。
さて今度はRER の駅ではなく最寄りのメトロ駅Solférino から12番線で Trinité にあるモロー美術館 (Ⓒ)へ。モローの自宅だった建物で、寝室や居間も公開されている。《出現》《人類の生》《ジュピターとセメレ》すべて広間にある。ここで興味深いのはなんといっても作品収納と可動展示方法だ。デッサンなど8000点以上が家具やカーテンの奥にいつでも見られるようズラリ、その整理術がスゴイ!
次に同じく12番線で Concorde に戻ってオランジュリー美術館(Ⓓ)へ。モネの描く睡蓮が、ぐるりと360°×2室、改修後モネの希望通り自然光で見られるようになったし、これもパリに来たら必見だ。地下には、モジリアニ、ルソー、ユトリロ、ピカソ、スーチンなどヴァルター・ギヨームコレクションが手頃な狭さに収まっている。
そろそろ昼食にしよう。ロダン美術館(Ⓔ)では庭園に《カレーの市民》《地獄門》《考える人》《バルザック像》などがうまく配置されているので、園内のカフェに行く途中、ぐるりと歩いて全部見てしまおう。ランチはサラダなどが10€程度、plat du jour やワインもある。ロダンの邸宅だったビロン館内は、2号室に《青銅時代》、3号室《神の手》《接吻》、7号室に《エヴァ》、13号室にはゴッホやモネの油彩がある。
次にメトロ13号線でMontparnasse-Bienvenüeの郵便美術館(Ⓕ)へ。歴代の郵便関連グッズが渋い。欲しいものばかりだ。歌は世につれ切手につれ、 1849年からの切手がびっしりと展示された壁面は近づくと点灯するのでグッと寄ってフランスの来し方を味わう。
やや急いでメトロ6番線 Trocadéro の海洋博物館(Ⓖ) へ。ここはなにしろ船の模型が壮観。大小古今様々な、趣き深く細やでパワフルな模型たち。船に興味がなくても感心してしまうこと必至だ。
次にメトロ9番線で2駅、 Alma - Marceau からアルマ橋を歩いて渡りケ・ブランリー美術館 (Ⓗ) へ。nocturne で21時まで開いている。ヨーロッパ外の文明が大規模に展示されるが、特にアフリカとオセアニア部門のコレクションは圧倒的。開館当時の行列も凄まじかったっけ。庭のCafé Branly で小休止。建築も話題で、セーヌ側は建物の外壁が植物で覆われているが、よく見ると草花はポケットに入っている ! 珍しいのでこれもチェック。
最後の凱旋門 (Ⓘ) に向かうため、メトロ6番線 Bir-Hakeimへ。ここでエッフェル塔も間近に堪能できるコースになっております。22時まで入れる凱旋門では、もちろん上まで登ってパリの星(エトワール)の中心に立つ気分を味わってくだされ。
■2日目(金曜日)
朝早いサント・シャペル教会(あ)からスタート。入り口すぐ左の、何も表示されていない小さな階段を上ると、目を見張るステンドグラスに包まれる。1113点に及ぶ聖書の物語が描かれているが今日のところは内容は気にせず。
次なるコンシエルジュリー(い)はすぐ隣である。大革命時の監獄として有名であり、マリー・アントワネットの独房もある。私は霊感なんて全くゼロだが、ここの何もない通路で急に恐怖にかられ走って逃げた過去があるので、外で待っています。衛兵の間(ま)は重要なゴシック様式だそうだ。
次はメトロ4番線でポンピドゥー・センター(う)へ。来年5月まで、常設スペースのほぼ半分が女性アーチスト作品となっている。問題意識や表現方法が明確でこれぞ現代美術という感じ。niveau5では展示番号の大きい方から進んで、39ハンタイ、19ジャコメッティ、12・14のアルプ+カルダー+ミロ、9レジェが特によい。その後通路に出て、左に並ぶ1905〜1960年の秀作を眺めながら戻り、 2マチスで締める。
ポンピドーを出てRumbuteauからArts et Métiersへはメトロ11番で1駅、歩いてもすぐ。工芸・技術博物館(え) ではまず入り口左の教会でフーコーの振り子とブレリオの飛行機を見る。本館は7つの分野に分かれ、特に魅力的なのが地上階の交通・運送、1階の機械化とコミュニケーション、2階の科学用具。思わずハマる感動ミュゼである ! 館内でお昼にしよう。ここのレストランはその名もLe café des Techniques、 蒸し料理がスペシャリテのこだわり派だ。
次はメトロ4番線 Odéon 下車で貨幣博物館(お) へ。造幣局に併設された貨幣とメダルのミュゼ。紀元前から始まるフランス貨幣や16世紀からのメダル鋳造の歴史に迫る。ここのショップはパリのミュゼ中で最も平均単価が高いぞ。
さてOdéonからメトロ10番線で2駅、Maubert-Mutualité下車、パリ施療院・貧民救済博物館(か)というミュゼがある。中世から現代までの病院の歴史、というより教会との関係がポイントだろう。赤ん坊を捨てたい両親のための捨て子システム(1861年廃止)も説明されている。
同じく10番線の隣の駅、Jussieuのアラブ世界研究所(き)。パリにある世界各国の文化会館の中でもダントツ立派だ。建物の前に立ったら、まずは外観を眺めること。この外壁の文様はアラブの鎧戸のごとく、陽光の強さによって変化する。展示は7階、6階、4階の3フロアで、イスラムの天文学が誇る天球儀が最も有名だが、伝統的陶器や工芸も見よう。階上のレストランでミント茶とお菓子にしてもよいし、ここからセーヌ沿いに600mほど屋外彫刻の散歩コースがあるので、天気がよかったら散歩に充ててもよい。
次は24番のバスで、18時までにBercyへ。映画博物館(く)はもとシャイヨ宮にあった映画総合センターである。ミュゼ部分には往年の映画グッズが展示されている。あちこちに設置されたヴィデオに時間を取られないよう気をつけて、最後は大とりのルーヴル美術館(け)。メトロ14番線は無人運転メトロである。Pyramide下車、パリの端から真ん中までたった3駅。
ルーヴルにミュージアム・パスで入館する時は、Passage Richelieuから入る。ドノン翼への階段の上に《サモトラケのニケ》像が姿を現すが、まずは上らずに左へ。正面が《ミロのヴィーナス》だ。同じ通路を戻って今度は階段を上り、ニケの右へ進む。ボッティチェルリ、フラアンジェリコ、ジョット、ラファエロ…etc、《モナリザ》 までの通路がそりゃ豪華なのである。モナリザの部屋には、現在、チントレットや《カナの婚礼》が展示されている。さらに奥に進むとフランス絵画スペース。左に《メデューズ号の筏》《民衆を導く自由の女神》、右には《ナポレオン一世の戴冠式》。そのまま素直に出口に向かうと《奴隷》《アモールの接吻で起きるプシケー》が、しかとあります。
はあはあ、2日間忙しかった。でも美術館を出るたびに、生まれ変わったような気持ちになる。美術館ってすごいなあ〜。


