ドゥエイン・ハンソン展
ドゥエイン・ハンソンは1925年ミネソタ州生まれ、スーパーリアルな作品で有名なアーティストだ。60年代にはべトナム戦争、人種差別、ロナルド・レーガンなどに抗議するインスタレーションを行い、やがて人間そのものオブジェを作り始めた。基本的に蝋人形なのだが、1967年からは生きた人間から型を採るようになり、人の衣服を身につけ、むろんサイズも原寸そのもの。そんなハンソンのリアルすぎる作品が、パリのヴィレットで公開され話題である。以前、日本での展示も見たが、これはやはり外人サンたちの中で見てこそのおもしろさがある。今回は1976年から亡くなる直前1995年まで、ハンソンの典型的定番タイプと共に、自分の息子から型をとったサーファー少年や労働者たち、最後のブロンズ作品となった草刈り機に乗った男など、彼の心の軌跡が分かる作品である。
掃除道具のキャリアーを押す掃除スタッフ(作品)のまわりを囲んだひとたち、「わあ、本物ソックリ〜」とはしゃぐ者はなく、誰もがかなり及び腰である。見物している人間を含めた環境彫刻のようだ。きっとアメリカ国内なら、状況もさらにシュールであろう。シリアスに解説するなら、ハンソンは、現代社会、特にアメリカ文明の中に生きる人々をシニカルな目で見つめ、現実以上でも以下でもないリアルな「現実」を我々に突き付けた作家だ。何の作為もないからこそ、見る者はしばしば衝撃的な空しさや不気味さを感じるといわれる。
会場のベンチには観光客の夫婦(作品)も座っている。そのバミューダーパンツのおじさんと花柄シャツのおばさんを見ているうちに不安になる。作品のふりをしているこのふたり、突然立ち上がって「ワッ!」なんて驚かす気かも。そう思うといつ立ち上がるのか心配で堪らない。会場ではこのヒトは絶対作品、このヒトたちは人間、と用心しながら歩く。ハンソンがどこまで意図したか知らないが、会場を出た後も動かず立っている人が気になって仕方ない。若くない女性がファンデーションを厚めに塗ったりするとまさかのハンソン肌になるのも怖い。
※Duane Hanson / Le Rêve américain....
8月15日まで ラ・ヴィレット内 ポール・ドルヴリエ館


