第7回 チャールズ・ブルース(1922年隊・24年隊 隊長)(2)

 

百戦練磨のブルース将軍。第一次世界大戦では、今年4月にウィリアム王子らも出席して100周年記念式典が行なわれたガリポリ上陸作戦で両脚に重傷を負います。若いころは「ちょっとした運動のために」当番兵を背負って山を駆けていたブルース将軍ですが、ガリポリでの負傷後は、もう二度と坂を駆け上ったりしてはいけないと医者に言い渡されました。


それなのに、よりにもよって世界最高峰の登頂を目指す遠征に、それも隊長として参加が認められたのは驚きですが、実際のところ1922年遠征ではベースキャンプより上には行きませんでした。それでも、部下思いのブルース将軍はマロリーら隊員たちから慕われていたようです。


ブルースは、身のこなしは雄牛のようで優美さに欠けていたが、ばか騒ぎや幼稚ないたずらが好きで、物まねがうまかった。声はベースドラムのよう、いかにもおかしそうにシーシーと音を立てて笑い、キプリングが自分の本の主人公のモデルにしそうな男、つまり連隊への忠誠心が非常に強いイギリス軍の下官で、部下を自分の息子のように守り、一〇以上の現地語を流暢に話し、酒や運動競技、食べ物、そしてインドに関するものならどんなものにも貪欲だった。(第二章)


ブルース将軍は1924年遠征でも隊長に任ぜられます(トランプならぬ電報用紙を派手に引き裂く場面が出てきます)。しかしダージリンを出発してまもなくマラリアの発作を起こしてひどく弱ってしまったため、本隊を離れて引き返し、結局そのまま隊には戻りませんでした。


このときブルース将軍は、口では自分は具合など悪くない、早く隊に戻りたいと言い張って隊の医師を困らせながらも、本当はもう自分が遠征に戻れないことを悟っていたようで、みんなで飲もうととっておいた大事な年代物のウィスキーを12本、先を行く隊員たちのもとに送らせていたのでした。

 

 

ブルース将軍(前列中央)率いる1922年遠征隊。左端がジョージ・マロリー。Wikimedia Commons

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