岡崎武志「愛書狂」第39回

 

 一九六六年六月、ビートルズが来日し、日本国中が沸いた。 今年はちょうど五〇年目。テレビ、雑誌が特集を組み、関連本も多数出た。公演場所となった日本武道館は、その二年目、東京五輪のために建てられたが、音楽で使うのはこれが初めて▼一万人収容の武道館は、 以来、ディープ・パープル、カーペンターズ、クイーンなど、 来日アーティストが舞台に立つ。その「聖地」に、一九七四年十二月六日、三人の中年男が登場、会場を満員にし「ビートルズ以来の盛況」などと言われた。すなわち小沢昭一、野坂昭如、永六輔は、「花の中年御三家」と呼ばれたのだ▼当時、 三人はいずれも四〇代前半で、 現在なら「TOKIO」ぐらいの年。しかし、二〇一二年の小沢昭一死去以後、申し合わせたようにこの世を去った。同時代に活躍した愛川欽也、大橋巨泉も揃って鬼籍に。一つの時代が終わったのだ▼なかでも、永六輔はテレビにラジオ、作詞とマルチな活躍を見せたが著作も多い。芸人のゴシップや エピソード、名言をパッチワークにした『芸人 その世界』ほか「その世界」シリーズは傑作だ。武道館公演でも永は、その中から幾つか披瀝。「僕達は午前九時から午後五時の人間になりたくなかったんだ」はビートルズ▼一九九五年の著作『逢えてよかった!』は、著者の交遊録。その中で、「僕は長い間、老後の生きかたについて悩んできたが、目の前にいる先輩が小沢さんと野坂昭如さん。 反面教師としての意味合いもあるが、このお二人あっての僕なのである」と書く。律儀にも、その順番を守るような最後だった。

ジャンル

シリーズ

  • エクス・リブリス
  • ニューエクスプレス
  • ライ麦畑でつかまえて
  • キャッチャー・イン・ザ・ライ
  • 白水社創立百周年
  • 白水社2016売上トップ10