第40回 解説
次の日本語を中国語に訳してください。
当店では、お手洗いのみのご利用はご遠慮いただいております。予めご了承ください。
1)ご遠慮いただいております
以前にも、このとても日本語らしい表現について解説をしたことがありますが(www.hakusuisha.co.jp/news/n17013.html)、日本では特にサービス業において、お客様に対する注意をなるべく婉曲に表現する傾向があります。一方、中国語では、「〜をご遠慮ください」と言う代わりに“请不要〜”や“请勿〜”などの表現を使い、「〜しないでください」とストレートに禁止事項を伝えることが多いようです。ほかにも、「〜をお断りいたします」という意味の“谢绝〜”があります。ここでは、この“谢绝〜”を使うとよいでしょう。(jolinさん、一二功夫さん、西公民館火曜夜クラスさん、よくできました!)
2)お手洗いのみのご利用
これを訳すのはあまり難しくないですね。“只使用洗手间”にすれば問題なさそうです。“谢绝只使用洗手间”だけでも、ほとんどの人は“谢绝只使用洗手间(而不在本店购物)”((当店で買い物せずに)お手洗いだけ利用することをお断りします)という、隠された意味を読みとれるはずです。が、やはり注意書きとしては曖昧だし、途中で途切れたような、落ち着きのない文に感じられます。かといって、いくらストレートに言う中国語でも、さすがに“谢绝只使用洗手间而不在本店购物”では露骨すぎるので、ここはちょっと工夫しましょう。
「買い物しない方のお手洗いのご利用はお断りします」という文から、少し発想を変えて以下のような言い方にすれば、「赤裸々な金銭関係」が少し薄らぎそうですね。
“本店洗手间谢绝顾客以外的客人使用。”
当店のお手洗いは、当店顧客以外の方のご利用はお断りいたします。
“顾客”と“客人”はどちらも「店のお客様」の意味として捉えられ、矛盾するように感じるかもしれませんが、1つの文にちょっと違う表現が同時に存在していることから、文脈で「買い物をするお客様」と「ただ訪れてきたお客様(=お手洗いだけ利用する方)」の違いは読みとることができます。
3)予めご了承ください。
「了承する」は“谅解”と訳すのが一番ぴったりです。「予め」は“事先”、“预先”などと訳せますが、“请事先谅解”のような言い方は中国語として不自然で、“敬请谅解”や“请您谅解”で十分意味が伝わります(西公民館火曜夜クラスさん、よくできました!)。
“事先”、“预先”は日本語の「事前に、前もって」という意味合いで、“事先做好准备”(前もって準備をする)、“预先通知”(事前に知らせる)のように使うことが多いです。
このように、言葉の意味が同じでも、使うときは一方通行になる場合がよくあるので注意が必要ですね。
さて、今回も皆さんの知恵を集めて、以下の訳文を作りました。ほんの一例ですが、参考にしてもらえれば幸いです。
本店洗手间谢绝顾客以外的客人使用。敬请谅解。