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ちょっと立ち読み
モンゴルの見る夢─『国際協力師になるために』

 「これって、ヨーロッパのどこかの町の絵だよね? ロンドンかい?」
 「違うよっ! モンゴルだよ」
 「ええっ、モンゴルっぽくないけど……」
 「これ、未来のモンゴルの姿なんだ」
 「未来のモンゴル?」
 「モンゴルでは、みんなが遊牧民をやっていて、馬とか羊とかを飼っていると外国の人は思っているけど……そうじゃないってところを見せたいんだ。この国を、モンゴルを発展させて、ヨーロッパにも、アメリカにも、日本にも負けない豊かな国にしたいんだ」

 首都ウランバートルに住む少年、アマルサイハン君(十三歳)はこう言った。そしてこのことが、彼にとって「一番たいせつなこと」なのだという。

 私は、NPO法人・宇宙船地球号の活動として、世界中の子どもたちに「一番たいせつなもの」の絵を描いてもらうイベントを行なっている。通称、「お絵描きイベント」(Children's Art Event)と呼んでいる。これまで五十か国ぐらいの国々で行なってきたが、最終的には世界にある二百前後の国や地域のすべてで行なおうとがんばっている。このお絵描きイベントは、子どもたちに単に大切なものの絵を描いてもらうだけではなく、必ずその子の家を訪問し、その子がどのような社会背景に住んでいるのかを取材するようにしている。(中略)

 ともかくモンゴルでも、三つの学校に協力してもらい、総計二百人の少年少女に参加してもらった。その中の一人が、前述の彼、アマルサイハン君であった。その後彼の家庭を訪問し、お父さんにインタビューをさせていただいた。

 「モンゴルは一九九○年以前は、ソ連の強い影響により社会主義国家でした。あのころは、政治・宗教的な自由がなく、当初、さまざまな粛清が行なわれました。しかし、半面では幸せでした。すべての人が同じだったからです。平等だったからです。ほとんどの学校が無料で、住むためのアパートも国が支給してくれました。みんなが同じように働き、同じように暮らしていたのです。
 ところが一九九一年にソ連が崩壊してしまった後は、急に資本主義社会となり、市場経済の時代になりました。そうしたら貧富の差がどんどん広がってしまい……」

 このモンゴルへの支援のために、さまざまな人が活動している。青年海外協力隊のNさんは、派遣期間が終わった後もモンゴルに残り、自分で会社を起こした。彼は言う。

 「モンゴルの人口の半分は、首都ウランバートルに集中しています。首都に行けばお金持ちになれると思って、みんな田舎から出てくるのですが、実際は働く場所がなく、そのまま社会の貧困層となってしまう。失業率はかなり高いです。国が公表している数字の十倍は高いと思います」

 このため彼が始めた活動は、会社を作り、人々の働く場所を作ること、だった。私は以前、アフリカなどで医療援助を行なったが、その国をよくしたかどうかは疑問だった。なぜかというと「自分が外国人だった」からかもしれない。本当に意味のある国際協力を行なうためには、自分自身もその社会の中に入って仕事をし、一般の消費者として生活をする。その中で、意味のある援助とは何かを模索していくことが大切かもしれない。

 現代モンゴル社会は、社会主義から資本主義へ移行の中にあり、激動の時期を迎えている。そんな中、傍観者ではなくその中に飛び込み、この絵を描いた少年の未来を、モンゴルの未来を、覗いてみたい。

 そう、思った。

(第十章「宇宙船地球号」より)

国際協力師になるために
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国際協力師になるために
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