[こっそり伝授] 読書感想文・ここがポイント!
──『カレンダーから世界を見る』
【必ずお読みください】
・このページは、読書感想文を書くときのヒントを紹介したものですが、(お読みになればおわかりのように)筆者は学生時代、作文の成績はかんばしくなかったようです。ここに書かれたことは鵜呑みにしないほうがいいでしょう。したがってお読みになった皆さんが読書感想文全国コンクールで受賞できなくても、当方は責任を負いかねます。ご了承ください。
皆さんこんにちは。………………………………はい、こんにちは。
今回は、『カレンダーから世界を見る』(青少年読書感想文全国コンクール課題図書・高等学校の部)を題材に、読書感想文の書き方を伝授します。
まず心構えから始めましょう。皆さんは本を読んで、
1)わからない。
2)自分には文章センス(または文学センス)がない。
などと思ったことはありませんか?
もしそうだとしても心配ありません。そういう人は多いのです。あなたの現国の先生だってそうだったかもしれません。
まず1)、文章というものは、注意深く読めば必ずわかります。そういうふうに書いてあるのです。ピー。おや。なんだか著作権に引っかかったような音がしましたね。
それから2)、文章センスとか文学センスは、なくていいのです。これは大学受験などの試験にも通じることですが、自分のセンスで文章を読んでしまうと、往々にして読み違えます。センスなどなまじあってもジャマなのです。文章は、自分の「思いこみ」を廃して、「数学的」に読まなければいけません。ピー。ピー。今日は予備校方面がうるさいですね。
ではさっそく、実技に移ります。本は、まずどこから読み始めますか? どこって、そりゃ最初のページからだろう? はいバツ。赤点。E。
読書は、必ず次の作業から始めるべきです。
1)オビの文章を読む。
2)目次を読む。
3)あとがきを読む。
この3つは、本文以上にじっくり吟味しましょう。重要なことはすべてこの3つに書かれているといっても過言ではありません。プロの物書きには、この3つだけで本文を読まずに書評を書いてしまう剛の者もいます(らしいです)。
『カレンダーから世界を見る』のオビを見てみましょう。
「時間はひとつじゃない!」……ふむふむ。続いて裏側。
「『ちがい』があるから、世界はおもしろい!」
ほらね。これだけで何が書かれているかわかったでしょう? 続いて目次を読めば、さらにくっきりはっきりとわかります。
「1 ひびきあう時間」「2 はじまりの時間」「3 くぎりの時間」「4 にぎやかな時間」。
……ものごとには、必ず例外というものがあります。次にあとがき。
あとがきがない? いいえ、「あとがき」という見出しがついていないだけです。末尾に日付や著者名が載っていたらそこがあとがき。「平成二〇年の時の記念日に 中牧弘允」ここですね。読んでみましょう。「……『ちがい』があるから世界はおもしろいという……」ほら! また出てきました。
この本が「何について書いたものか」は、もうわかりました。あとは本文に、「どう書かれているか」を読んでいけばいいのです。かんたんですね。
ぜんぜんわからない? もっとこの本の結論というか、著者が何を言いたいのかを教えろって? はいバツ。赤点。E。
本は、そこに書いてあることがわかればとりあえず十分で、「結局のところ何を言いたいのか」は、わからなくてもいいのです。そんなもの、書き手にすらわからないことだってあるのですから。
私が初めて読書感想文を書かされたのは、小学校2年か3年ですが、なんと課題の本をまるまる引き写して提出した記憶があります。「読書感想文」の意味もわかっていなかったのです。バカだったのでしょうか。もちろんバツ。赤点。E。
高学年になると、国語の教科書に「作者は何を言いたかったのでしょうか」なんて質問が出てきます。なるほどそれを書けばいいのか、とアタリを付けたものの、いくら読んでも「作者の言いたいこと」がわかりません。困りはてて先生にきくと、答はこうでした。
「みなさんの感じたことを、そのまま正直に書いてください」
私は途方に暮れました。
しかし、明けない夜はありません。高校一年の現国の授業では、どうせ赤点なら好きなことを書いてやれと開き直りました。テーマや主張はまったく無視。課題はふつうより漢字が多用される小説だったので、「同じ言葉でも漢字で書くのとひらがなで書くのでは印象がどう違うか」というような話をつらつら並べたところ、先生の採点はBプラス、「おもしろいですが、内容はいまひとつです」という、微妙なコメントもいただきました。でもそれ以来、あんなに苦手だった作文が苦にならなくなったのです。
自慢? で結局? 何書いたらいいのかさっぱりわかんないんだけど?
はいはい、ちゃんと書きますよ。「感じたことを正直に書く」は、実は正しい。ですがそれには、技術がいるのです。その一つをお教えしましょう。
おもしろい本には、必ず「知らないこと」が書かれています。「知らないこと」の背後には、「知らない物の見かた」があります。想像もしなかったものや考えかたがたくさんあって、読み終わったあと世界がすこし違って見える、というのが、読書の醍醐味です。
『カレンダーから世界を見る』に書かれているのは、生まれてからウン十年たった私でも知らなかったことだらけです。なにしろ「『ちがい』があるから、世界はおもしろい!」ですから。
そのなかから、とくにびっくりしたことをリストにしてみます。もちろんその箇所は人によって違うでしょう。私の場合は、こんな話です。
イスラーム暦では、1年12か月は同じですが、日数は354日(うるう年は355日)。西暦より11日ほど短く、そのぶん毎年繰り上がっていきます。イスラーム文化圏には有名な断食月(ラマダーン。第9番目の月)がありますが、年によって季節が変わってくるわけです。
「断食は日の出から日の入りまでおこなわれますので、日の短い冬のほうが楽ということになります。逆に、夏至の頃になると、つらさも増加します。」
こんなふうに、とにかく驚いたところをぜんぶチェックしたら、次になぜあなたはここに驚いたのかを考えます。本ぜんたいのテーマは忘れてかまいません。一点突破全面展開。選んだ箇所だけをクローズアップし、書かれていることと、あなたの経験や今持っている常識を、ひたすら照らし合わせてみます。
私だって、気候や宗教が違えば時間のくぎり方や記念日が違うことくらい知っていましたが、一年の長さが違うとは思いもよりませんでした。だって季節がどんどんずれていくんだよ? 不便じゃない? 不便ってなにが? イスラーム文化圏の人はどうして不便だと思わないんだろう?
疑問がつぎつぎわいてきますが、無理に結論を出す必要はありません。無理に出した結論はたいてい、本を読む前の「常識」からひねりだしたものですから、意味がないのです。疑問を出せるだけ出していきづまったら、次の「驚いたこと」に移ります。それを何度か繰り返せば、もう読書感想文は完成したも同然です。
嘘だろうって?
はい、わたくしは嘘をついておりました。実を言えば、このあと「ひとにわかりやすいように文を組み立てる」という作業が残っています。ですが、その技術はじつにさまざまで、とうていここに書ききれるようなことではありません。てか書けません。先生や友達に読んでもらって、わかりにくい箇所を指摘してもらうといいでしょう。
まだわからない。もっと具体的に書け?
申し訳ありませんが、私の話はもうおしまいです。だって具体的にもっと書いたら、それは私の読書感想文になってしまうでしょう? 作文に正解はありませんが、つまらない作文の原因ははっきりしています。ひとつは、ひとの文章をちゃんと消化しないまま真似てしまうこと。もうひとつは、もう言いましたね、本を読む前の「常識」で書いてしまうこと。そしてこのふたつは、ほとんど同じことなのです。
では、どんどん驚いて、どんどんハテナマークをまきちらしてください。コンクールの授賞式でお会いしましょう。私は胸に黄金の豚をつけて待っています。
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カレンダーから世界を見る 中牧弘允著 クリスマスが一月七日に祝われたり、春分の日を正月とする地域があります。世界のカレンダーをとおして、その歴史や紀元など、さまざまな時間のくぎり方を楽しんでみませんか。 |



