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ちょっと立ち読み
第49回岸田國士戯曲賞受賞作──『三月の5日間』

   第一場

 舞台セットは要らない。
 男優1と男優2、登場。並んで立つ。

男優1 (観客に)それじゃ『三月の5日間』ってのをはじめようって思うんですけど、第一日目は、まずこれは去年の三月の話っていう設定でこれからやってこうって思ってるんですけど、朝起きたら、なんか、ミノベって男の話なんですけど、ホテルだったんですよ朝起きたら、なんでホテルにいるんだ俺とか思って、しかも隣にいる女が誰だよこいつ知らねえっていうのがいて、なんか寝てるよとか思って、っていう、でもすぐ思い出したんだけど「あ、昨日の夜そういえば」っていう、「あ、そうだ昨日の夜なんかすげえ酔っぱらって、ここ渋谷のラブホだ、思い出した」ってすぐ思い出してきたんですね、

男優1 それでほんとの第一日目はっていう話をこれからしようと思うんですけど、「あ、昨日の夜、六本木にいたんだ」って、えっと、六本木で、まだ六本木ヒルズとかって去年の三月ってまだできる前の、だからこれは話で、ってところから始めようと思ってるんですけど、すごい今って六本木の駅って地面に地下鉄から降りて上がって、それで上がったら麻布のほうに行こうとか思って坂下るほう行くじゃないですか、そしたらちょうどヒルズ出来たあたりの辺って今はなんか歩道橋じゃないけどなんて言うかあれ、一回昇って降りてってしないと、その先、西麻布の交差点方面もう行けないようになっちゃったけど今は、でもまだ普通に一年前とかはただ普通にすごい真っ直ぐストレートに歩いて行けたじゃないですか、っていう頃の話に今からしようと思っている話は、なるんですけど、そっちのほうになんかライブハウスみたいのがあって、そこにライブを見に行って、っていうのから話のスタートは始めようと思ってるんですけど、それで、それがすごいいいライブだったんだけど、っていうこととかを話そうと、あとは、あとはとか言って、ライブのあとでそこで知り合った女のコがいて、その日はだからなんかそのあとその女と、いきなりなんか即マンとか勢いで、しかもナマでヤっちゃったみたいな話とかもこれからしようと思ってるんですけど、その前にっていうかまずそのライブハウスに行ったのが、だから三月の5日間の一日目なんだけど、二人で、その日は男男で見に行ったんですね(このとき、自身と男優2を示すしぐさをそれとなくする)、ライブをその、えっと、六本木に行こうってことになって、っていう男が二人いたんですね、その男二人からのことから始めようとまずは話を、

男優1 西麻布のほうに行く道の、坂の下る感じが、傾斜まだそんなに本格的にぐっとそれほど角度つくまだ前のあたりの辺のとこに、大通りに一応、面しているところにあるライブハウスがあって、なんかカナダから来た、かなーりマイナーなバンドのその日はあれがあって、何故でもそんなの見に行ってたのかって言うと、っていうのはすっごい、でもそのライブ、よかったんですよすごい、よかったなーっていう、すごいいいライブで、って、そう、二人のうちの一人のほうの男のほうだけは―なんですけど実は、でも――そう思ってて、すっごいほんと感動して、正直別に期待そんなすごいしてたわけじゃなかったんだけど、特になんてことないと思って油断してたら、ほんっと意外にそのライブすごいよくて、かなりまじですごい感動して、っていう、そのときはビール飲んでたんですけど、そこのライブハウスがっていうかその日のライブ、ワンドリンク制になってて、だからビール飲んでて、っていうかもうライブがそのときは終わったあとで、まったりタイムになってて、もうワンドリンク目はだから飲んじゃったから、ツードリンク目を――ツードリンク目も、ビール飲んだんですけど、

男優1 (男優2に)でもそのライブたぶん、

男優2 うん、

男優1 技術的なことを言うと、別にそのバンド、たぶんうまいヘタっていうカテゴライズで言うとしたら、別に音楽詳しいわけじゃ別に俺ないから(男優2「うん」)専門的なあれじゃないんだけど、でもまあ、まあ、完璧ヘタの系の部類だろうっていう(男優2「うん」)演奏とか(男優2「うん」)、っていう、うん、でもそのときライブ聴いて感動とかしながらこれは思った(男優2「うん」)んだけど、そういうこと思ったのは別にそのときが(観客に)初めてなわけでとかはないんですけど、(男優2に)そういう結局テク的なこととかそういうんじゃない部分で大事なもの(?)、みたいなのはやっぱりライブでもそうだし、なんかなんでもそういうのあると思うんだけど、そういうのいいなあって思って、ていうか、いいなあっていうよりそういうのだけをほんとは、その部分だけを(?)、―が(?)、きっとほんとうに大事なことなんだなあって思ったっていうか、思うんだよね俺は、うん、言ってることわかる? 俺酔っぱらってるかな? 言ってること、もしかして意味不明だった? (観客に)って言ったら(男優2を示して)「ううん、分かる」って言ったから、

男優2 うん、

男優1 あ、このコ結構話分かるかも、って思って、でもそりゃそうだよな、こんなライブ来てるくらいだから相当なんかしらアレなものがないと、こんなライブのこと知れないよなって思って、結構自分の中で(男優2「うん」)そのとき納得みたいな、

男優2 (観客に)二人男がいるって言ったじゃないですか、それで一人のほうは一日目に即マンしたって言ったじゃないですか、正確に言うとでも、もう明けて翌日の深夜だったから二日目ってことになるんですけどね、そ、即マン日は、(……)


三月の5日間
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三月の5日間

岡田利規著


イラク空爆&反戦デモを尻目に、渋谷のラブホで4泊5日――表題作(第49回岸田國士戯曲賞受賞)の他、2作を収録。チェルフィッチュこと、超リアル日本語演劇の旗手によるデビュー作品集。
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