酒を分けてくれた、眠りながら運転していたセールスマン……体じゅうバーボン浸けだったチェロキー……大学生が操る、ハッシッシの煙霧のあぶくでしかないフォルクスワーゲン……
そして、ミズーリのベサニーから西へ走っていた男と正面衝突して死なせてしまった、マーシャルタウンからやって来た家族……
……土砂降りの雨のなかで寝ていたせいでずぶ濡れになった体で俺は起き上がった。意識もまだ完全に覚めていなかった。いま言った三人のおかげだ―セールスマン、インディアン、学生、三人とも俺にドラッグをくれたのだ。入口ランプの隅っこで、どうせ誰も拾ってくれないだろうと思いながら俺は待っていた。こんなにびしょ濡れじゃ、乗せてやろうなんて思う奴がいるわけない。だったら寝袋を畳むだけ無駄だ。俺は寝袋をケープみたいに体に巻きつけた。ざあざあ降りの雨がアスファルトを引っかき、轍でゴボゴボ鳴った。いろんな思いがみじめに飛び交った。旅回りのセールスマンにもらった薬のせいで、血管の内側がこそげ取られたみたいな感じだった。あごが痛んだ。俺には雨粒一滴一滴の名前がわかった。俺は何もかもを、それが起きる前から感じとった。一台のオールズモービルが停まってくれることが、車がスピードも落とさないうちからわかったし、中に乗った家族の感じのいい声で、嵐のさなかにこの車が事故に遭うこともわかった。
どうでもよかった。最後まで乗せてってやるよ、とその家族は言った。
男とその妻は小さい娘を自分たちと一緒に前に座らせ、赤ん坊は俺とずぶ濡れの寝袋が乗り込んできた後部に置いたままにした。「そんなに速くは行けんからね」と男は言った。「女房も子供たちもいるでね」
あんたらだぜ、事故起こすのは、と俺は思った。そして寝袋を左側のドアに立てかけ、それと交差する格好で眠った。生きようが死のうがどうでもよかった。赤ん坊は俺の隣、座席の上で、何ものにも邪魔されずに眠っていた。生後九か月くらいだった。
(「ヒッチハイク中の事故」より)
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ジーザス・サン デニス・ジョンソン著/柴田元幸訳 緊急治療室でぶらぶらする俺、目にナイフが刺さった男。犯罪、麻薬、暴力……最果てでもがき、生きる、破滅的な人びと。悪夢なのか、覚めているのか? 乾いた語りが心を震わす短編。 |



