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ちょっと立ち読み
イギリス発、ユーモア小説の新星
──『イエメンで鮭釣りを』

ロンドン
セント・ジェームズ通り
不動産売買およびコンサルタント
フィッツハリス&プライス

ロンドン
スミス広場
環境食料農村地域省
国立水産研究所
アルフレッド・ジョーンズ博士

五月十五日

親愛なるジョーンズ博士
 外務省のピーター・サリヴァン氏(中東・北アフリカ局長)より、博士をご紹介いただきました。実は、非常な資産家の依頼人に成り代わりましてこうしてお手紙を認(したた)めているのですが、この依頼人は、イエメンに鮭を導入し、娯楽としての鮭釣りを紹介するプロジェクトを起こしたいとの希望を表明しておられます。
 このようなプロジェクトはなかなか難しいものであろうとは思いますが、そちらの研究所でしたら、そのような企画のための調査を行ない、プロジェクトを管理できる専門家がきっといらっしゃることと存じます。むろん、このような企画に携わった水産学者は、国際的に認められ、また、じゅうぶんな報酬を手にすることとなるでしょう。今回はこれ以上の詳細には立ち入らず、まずは一度お会いして、そういった企画をどのように立ち上げ資金供給すればよいものかご相談し、それを当方の依頼人にご報告してさらなる指示を仰げるようにしたいと存じます。
 イエメンでは非常に高い社会的地位にあるその依頼人が、これを祖国にとっての最重要プロジェクトとお考えであることを強調しておきたいと思います。理不尽な財務的制約はいっさいない由はっきりお伝えするように、と指示されております。本プロジェクトはイギリスとイエメンの協調体制の象徴として、外務省の支持も得ております。

敬具
(ミズ)ハリエット・チェトウォド=タルボット

(第1章「イエメン鮭プロジェクトの発端」より)

*     *     *

アルフレッド(フレッド)・ジョーンズ博士は、研究一筋の真面目な学者。水産資源の保護を担当する政府機関、国立水産研究所(NCFE)に勤めている。ある日、イエメン人の富豪シャイフ・ムハンマドから、母国の川に鮭を導入するため力を貸してもらえまいかという依頼がNCFEに届く。
フレッドは、およそ不可能とけんもほろろの返事を出すが、この計画になんと首相官邸が興味を示す。次第にプロジェクトに巻き込まれていくフレッドたちを待ち受けていたものは? 手紙、eメール、日記、新聞・雑誌、議事録、未刊行の自伝などさまざまな文書から、奇想天外な計画の顚末が徐々に明らかにされていく。


イエメンで鮭釣りを
もっと詳しく
イエメンで鮭釣りを

ポール・トーディ著/小竹由美子訳

砂漠の国に鮭を放つ!? イギリス政府も巻きこんだ奇想天外な計画「イエメン鮭プロジェクト」の顛末はいかに……処女作にしてイギリスで40万部を記録したベストセラー長編。
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