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緊急読書感想文対策座談会「How to read “ハサウェイ・ジョウンズの恋”」


ハサウェイ・ジョウンズの恋
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ハサウェイ・ジョウンズの恋

カティア・ベーレンス 著/鈴木仁子 訳

時代はゴールドラッシュ、ラバで荷を配達する少年ハサウェイと農場の少女フロラの物語。荒々しい自然を背景に、愛と憎しみ、そして殺人が起きる……。簡潔な描写が胸に迫る佳品。
 【物語の登場人物】
  ハサウェイ・ジョウンズ……ローグ河沿いを巡回し、住人に手紙や必需品を届けている少年
  サンプス……ハサウェイの父
  フロラ・デル……トーマス農場の娘
  ジム……フロラの父
  クラレンス・バーク……ウィスキー支流に住む金鉱掘り
  マーティン・ジェニングズ……ラム支流に住む金鉱掘り。クラレンス・バークの小屋に忍び込んで泥棒をはたらいている
  ローランド・マイヤー……ラム支流に住む金鉱掘り。ジェニングズの相棒
  ダッチ・ヘンリー……ディッチ市中に住む商店主。オランダ出身
  メイシェ……ダッチ・ヘンリーの愛人。インディアンの娘
  スコッティ・マッカレン……ダッチ・ヘンリー商店の共同経営者。スコットランド出身
  リズ・ウルドリッジ……スコッティの恋人
  ジョージ・ビリングス……ビリングス牧場の主人。聖職者
  アニー……ジョージ・ビリングスの母。インディアン
  ドリー……ジョージ・ビリングスの娘
  ブラック……ビリングス牧場の使用人。黒人
  ボブ・フォックス……ロスト支流に住み、ドニーに思いを寄せる寡黙な男
  ジャック・マホーニー……ブーズ支流に住むフォックスのかつての友人。いまはフォックスを憎んでいる
  ジミー・コー……銃を持って人々を追跡する正体不明の男

「高校生のみなさんは夏休みですね! いいよねえ、大人になると40日も休めないんだから。」

「でも海とかシブヤとか花火とかTDRとか夏フェスとかいろいろ行かなきゃいけないから、高校生も忙しいはずです。そこで、読書感想文の宿題を手っ取り早く終わらせるために、白水社のお兄さん・お姉さんたちが手助けしようと。」

「お姉さんはよいとしても、男はオッサンしかいないんですが……。それに、今年の読書感想文全国コンクール・課題図書(高校生の部)に選ばれた『ハサウェイ・ジョウンズの恋』を読んでほしい、という出版社の商魂が丸見えですな。」

「まあまあ、そうおっしゃらずに。しかし、担当編集者以外のここにいる全員が、課題図書になったので初めて読んでみたという恥ずかしい人たちですが、読んでみたら予想外におもしろいよね。」

ヤングアダルト(アメリカで13歳から19歳の世代の人たちに対して使われている言葉で、「若いおとな」という意味)向けの小説だから、もっとやさしいものかと思ってたけど、相当骨太だった。舞台は今から120年くらい前のアメリカ西部。金(きん)が見つかったというので、アメリカの中だけじゃなく、ヨーロッパからも人が押し寄せてきた、ゴールドラッシュの話ですね。主人公の男の子・ハサウェイは14歳くらいで、ラバに乗って郵便配達をしていた。」

「日本だと明治維新があって、鉄道ができて、日清戦争が起きて……という頃かな。でもハサウェイのまわりは、まるで文化の香りがしない。あるのは貧しい生活と厳しい自然ばかり。今の高校生は想像したこともない世界じゃないかな。」

「そんなハサウェイが農場の少女フロラと出会うわけでして、二人のラブストーリーというのが、この物語のメインですね。そもそも女の子を好きになったことさえなかった超オクテなハサウェイくんが、やっと恋愛感情に目覚めていくあたりは、読んでて相当もどかしいものがあります。」

「それに比べるとフロラはしっかりしてるよねー。友達のメイシェのための時間稼ぎで、嫌いなダッチ・ヘンリーと身体くっつけて踊るくらいはなんでもない。10代の男の子と女の子を比べたら、時代と国が違ってもそんなものなのかな。」

「ハサウェイが初めて触れる文化的なものって、フロラの弾くピアノでしょ。先住民に対する偏見をなくしていくのだって、フロラの影響だし。」

「そんな二人の関係が進んで行くときに、“コーヒー”が小道具に使われてますね。最初はフロラの家に配達に行ったときに勧められて。二度目は森の中で、ハサウェイがでっかい声でバカな歌を歌っているときに、ばったりフロラに会ったとき。気まずかったんだけど、そこでコーヒーを沸かして一緒に飲むことで、二人の距離がぐっと縮まった。」

「そういうところに気づいて感想文に書くと、きっとポイント高いですよ。私が好きなのは、二人がケンカして、ハサウェイが地面に描いた円の中に閉じこもっていると、フロラがそこから線を引いて自分の円を描いて入るシーン(p.166)。青春ですねー。」

「そんなさわやかな小説なのに、人がやたらバタバタと死んでいく。最初についている登場人物表を何度も見ながら読まないと、わからなくなっちゃうかも。殺したり殺されたりに関係のない人の方が少ないくらい。」

「脇役はみんな個性的だよね。ハサウェイのお父さんからして、息子が配達で何日も家を空けてたのに、帰ってきたら“戻ったか……”って言うだけ。いい味だしてる。」

「ハサウェイはアメリカ生まれで、フロラはイギリス。オランダ出身のダッチ・ヘンリーとか、スコットランドから来たスコッティ・マッカレン、メイシェは先住民だしブラックは黒人。ものすごいインターナショナル、まさにこの頃から人種のるつぼ・アメリカって感じ。」

「そんな人たちが、法律もいいかげんで気に入らないと殺しちゃうような社会で剥きだしでぶつかり合うって、今の日本のメール世代には、かなり新鮮な読書体験かも。そもそも通信手段が手紙ですしね。一方で、愛し合ったり憎み合ったりというのは、人間の変わらない部分だから、共感できるんじゃないかな。」

「私はマホーニーが気になったんですけど、彼の立ち位置って、微妙じゃありません? 最初、すっごく嫌なヤツって感じで出てくるんだけど、母からはぐれた子鹿を自分で育てたりするんですよ。名前までつけて。小柄だし、他の登場人物の男臭いのとは違うイメージ。昔友達だったフォックスにひどいことをするのも、本当は、本当にフォックスが好きだったからじゃないかと。」

「なんでそういうBL的な読み方になるんですか! 確かにそう思わせる書き方ではありますけどね。これって、日本で映画にするとしたら、ハサウェイ役の俳優って誰かな?」

「市原隼人とか。」

「(一堂)えー?! 全然違うよー。」

「ごめん、あんまりテレビ見ないもんで。フロラは新垣結衣で。」

「あー、それは納得かも。ちなみに原書(ドイツ語版)の表紙には、白人の男の子と女の子の写真が使われています。読む前に見てしまってもいい!と決意した人だけリンクをクリックしてください(見ないことを推奨)。」

「私たちは仕事柄、海外の小説をたくさん読むわけです。で、そういう人間が読んでも、この小説は高校生向けという枠を超えて、おもしろかった。若者がこういうのをたのしんで読んでくれるといいなあ。」

「結局なんのアドバイスにもならないような気がするよ、この雑談。」

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