まず言っておかなければならないのが、国際協力とは、「自分の命を投げ出し、貧しくて困っている人をできるだけ助けてあげよう」という気持ちだけでやってはならない、ということだ。「ほんとうに意味のある国際協力をやろう」と思った場合、最終的に表れてくる客観的な評価(数字としての結果)のほうがはるかに重要になる。これまで述べてきたように、巨大なプロジェクトを組み、予算もそうとうかかっている。何よりも、数え切れないくらいのたくさんの人たちが、助けるほうも、助けられるほうもこのプロジェクトにかかわっているのだ。
よって、戦闘が診療所の近くまで波及してきたとき、「俺は貧しい患者さんたちを残して、撤退することはできない」などと言って、ヒーロー気取りの「かっこつけ」をし、非常に危険な状況の中に自らをさらし、結局死んでしまったり、拉致されてしまうことなどをしてはならない。なんでかというと、一人の人が危険な状態になった場合、しかたがないのであなたを救うために組織の残りの人たちが必死になってあなたを助けようとする。するとその人たちも撤退できないことになり、その人たちにまで危険が及ぶことになる。まかり間違って、だれかが死んだ場合、上官である安全管理担当者の能力が足りなかったと判断され、彼または彼女はクビになる可能性がある。さらにそれだけではすまず、組織全体としての安全管理システムが甘かったと判断され、このプロジェクトの全面的な打ち切りが検討されることになる。すると、年間予算で数億円を投入し、何千人、何万人の人々に対して持続的に行われている医療活動が、突然頓挫してしまうのだ。
おまけに、さらなる悪影響が生じてくる。たとえばある国で援助活動をしている外国人が一人死んだ場合、その国で外国人がボランティア活動をすることは危険だという風評が広がっていく。するとほかの国際協力団体にまで悪影響が及んでいくのだ。すなわち、他団体も撤退や活動の縮小が検討される。医療援助団体だけでなく、教育援助、経済援助、道路建設などを行っているほかの組織まで活動に支障が生じていくのだ。
このようなことに絶対にならないように、国際協力にかかわる人々は、絶対に自分の身を守らなければならない。自分の身を守るのは自分のためだけではなく、その背景にある組織のためであり、その活動のためであり、なによりもそれにより毎日援助を受けているアフガニスタンにいる人々のためなのだ。
つまり、危険があったらさっさと撤退し、数日して戦闘が収まったら、また戻ってくればよい。こうすれば、プロジェクトは数日遅れるだけで、大勢に影響はない。当初の目的、プロジェクト・プロポーザルはやがて達成され、自己満足ではなくほんとうに意味のある援助を行うことができる。
(『アフガニスタンに住む彼女からあなたへ』より)
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アフガニスタンに住む彼女からあなたへ 望まれる国際協力の形
山本敏晴 著 税込価格1470円 (本体価格1400円) 世界でいちばん命の短い国から、世界で一番難民の多い国へ。真の国際協力のありかたを求め、マザリシャリフ周辺に診療所を開設し、現場医療の道を切り開く、奮闘のドキュメント。 |



