……こうしてダドリーおじさんは、三階の客間でくらしはじめた。階段のいちばん上にある、天じょううらに近い部屋だ。おじさんがうちに来た目的は、「家族のきずなを再確認」すること。それから、意味はよくわからないけど、「いくつかの研究に没頭する」こと。おじさんがいったいなにをしてるのかは、だれにもよくわからなかった。もしわかってたら、ダドリーおじさんがうちについた瞬間に、父さんが町のむこうまで追っぱらったはずさ、それはまちがいないよ。
でもそのときは、いまいったように、だれもなにもわかっていなかったんだ。
* * *
――ダドリーおじさんの部屋にあるいろんな「研究資料」の中には、メキシコから来た干し首もあった――
あ、ぼくとしたことが。つい先ばしっちゃった。
ぼくが干し首を見つけるのは、あの夏、ぼくがダドリーおじさんとふたりだけで家にとりのこされてからの話、つまり父さんと母さんが、オハイオのマックおばさんに会いにいってしまったあとのことだ。(中略)
午後早くのことだった。ダドリーおじさんに小づつみがとどいたんだ。奇妙な細長い小づつみで、ヒモでむやみにしばってあった。ぼくはそれをもって三階へとあがって行った。差しだし人の名前を見つめながら。ありふれた茶色いつつみ紙の上には、風がわりなみどり色のインクで「ニューヨーク州東ブルックリン、ニックトビューベル研究所」と書いてあった。ぼくはドアをノックした。もう一度ノック。さらにもう一回ノックをすると、はいりなさいと声がした。
ぼくが客間にはいるのは、おじさんが来て以来はじめてのことだった。どうしてこんなにたくさんの物が、あのオンボロの青いスーツケースひとつの中から出てきたのか、ぼくにはせつめいができなかったけど、ダドリーおじさんが前にしている、窓のそばのたおれそうなトランプ用テーブルは、まるで書類と本の海にとりかこまれているようだった――書類と本でできた、くずれそうな砂の城! ほかにも、古くて奇妙な皮のかばん、古くてへんてこな箱、すごく変なかっこうの小づつみなんかがたくさんあった。(中略)
「やっと来たか!」とおじさんはさけんだ。「偉大なるフェザーゴールド博士ご本人からだ! ぼくがまちのぞんでいた研究だぞ!」
おさなく無知なぼくには、フェザーゴールドという名前のねうちがぜんぜんわからなかった。
ぼくの目は、客間のおりたたみ式ベッドの、チェックの毛布の上にある物体にくぎづけで、それどころじゃなかったんだ。
「あれは……ほ……干し首?」とぼくはどもりながらいった。
「ああん?」ダドリーおじさんは生へんじをした。おじさんはおじさんで、ひざにのせた小づつみにくぎづけだったんだ。(中略)
でもぼくは、じぶんが三階にもっていったこの小づつみの、ものすごい重大さをりかいしてはいなかった。その夏の日の午後、ぼくは毛布の上の、目だまのかわりに黒い切れめが二個あるだけの、ほこりっぽくてきみの悪いかみの毛の生えた干し首がもたらす、ふるえるほどのスリルに夢中になっている、ただのおさない子どもだったのだ。
でもぼくは、その重大さをりかいすることになった。まさにそのあくる日に。
(「ぼくの不思議なダドリーおじさん」より)
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ぼくの不思議なダドリーおじさん
バリー・ユアグロー著/坂野 由紀子 訳 税込価格1680円 (本体価格1600円) ぼくの家に魔法研究の実験キットをもちこんだダドリーおじさん。でも挑戦する魔法はすべて失敗、そのたびに大騒動が起こる。爆笑のなかにドジなおじさんと少年の交流を温かく描く。 |



