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このハクスイシャがすごい!2010年版

年末恒例のミステリーやエンタメ系ベストテンとは縁のない白水社が、寂しいので自分たちで勝手にランキングして盛り上がろうということで昨年から始まったイタい企画。選考委員は今回もおなじみ営業部Tと宣伝部N。目くじら立てずにご笑覧ください。(特に社内からの意見は一切受け付けませんのであしからず。)
*ページ末には社員3名が選んだ「2009年の3冊」のおまけ付き!

T:今年もやってまいりましたー! 今年で10回目でしたっけ?

──そんなわざとらしい前フリ入れなくてもいいから……

T:どうですか、去年の反省を生かしてですね。(段ボールひと箱分の本を前に)去年は全然本持ってこなかったという。

N:でも私、『ラブレー』重いから横着して持ってこなかった……

T:今年は重量とかもうやめました。

N:おお? なぜ?

T:マッチョになったところでモテない。

N:……はあ、そうですか。

──では早速、先手はNさんで。

N:持ってきていないんですけど、まず何といっても最初は『ラブレー』を!

T:箱入りのでかいやつね。今年最重量ね。

N:しかも最高値。値段で選びました。2万円ですよ! 最初見たとき、思わず目を疑いました、ひとケタ間違ってんじゃないかと。広告作るときも、「※2千円ではありません」と注を入れた方がいいんじゃないかと思ったぐらいで。

T:そういえばこの司会の人が注文書の値段間違えて2000円って書いてた(爆)。

──そんなこと思い出さなくていいのに(怒)。

T:でも書店さんは冷静で無茶な注文は来なかったです。では僕は、営業部の人間ですから、今年の刷り部数ベストを。1位は『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、2位は『ライ麦』ですね。そしてその次が、『倒壊する巨塔』(上)(下)

N:おおー。そうそうたるラインナップですね。

T:そのあとが『やんごとなき読者』、こんな感じでした。というマジメなことやっちゃった。

N:データを駆使して。デキるビジネスマンみたい!

T:お、出ました(喜ぶ)。

──数字に強い男、って感じしますか? ではこの中から……

T:いえ、全然(アッサリ)。まずこれですよね、「言葉のしくみ」シリーズ『バスク語のしくみ』。すごいですよ。「悪魔ですらその習得をあきらめた言語」(まえがきより)。どんななんだろう?! と思って、やってないんですけどね。取次さんに見本出しに行くときに待ち時間に、10ページくらい読みました。

──誰も勉強してると思っていないので大丈夫ですよ。

T:イラストの力の抜け方もいいですよね。

N:次は『グールド』かな。

──これはやっぱり、イケメン?

N:別にイケメン好きじゃないですよ!(怒) じゃなくて、ちょうどNHKでドキュメンタリーをやっていて、それを見たら、孤独を愛した生き方がやっぱりかっこいいな、と改めて思って。装幀も旧版はモノトーンだったのが、鮮やかな赤で全くイメージが違う。でも編集担当の人が言うには、赤は嫌いだったらしいんですけど(真偽不明)。

一堂:(爆)

N:CDも付いてお買い得です。

T:続いて、営業の最前線にいる人間としては、『ニューエクスプレス・スペシャル』ですね。

N:これは私も持ってきました。

T:プロレス技か、というようなタイトルですね。決め技っぽいですよね。「エクスプレス」が入るから、一旦ロープに振ってからなのかな。

N:タイトルもさることながら、私、内容もなんですけど。

T:ほお、内容?

N:すごいんですよ! イラストのテイストが、言語によってポップなのから劇画タッチまで、まったく違ったり。例文もすごいんですよね、シュールというか。「私たちはパーティーをします。」「それは楽しいでしょうか?」「さあ。」ですよ。

一堂:(爆)

N:更に続いて「たぶんだめでしょう。」。

T:人の付き合いって難しいですねえ……。

N:これも買って損はないです。マジメな話、珍しい言語がいろいろ収録されていて、ことばの響きを味わうだけでも楽しいです。

T:「禁止」の表現の例文がさ、「見送らないで」「泣かないで」って(笑)。

N:ドラマティックですねえ。どういうシチュエーションなんでしょうか、気になります。

──発売前から話題を呼んでいましたが、やはりすごい本だったのですね。

T:続いては……『菊池寛急逝の夜』。営業部で電話注文を取ると、文豪の名前を結構間違えるんですよね。「きくちひろし」とか(ひろしは本名)。それで思い出すのが『父 荷風』。「ちちにかぜ」とか言われると、ポカーンとしちゃって。「父に風邪」?ルルですか?バファリンですか?って。そういう注文が来るんではないかと期待したんですが、それほど間違いもなく、杞憂に終わりました。それだけのために持ってまいりました。

N:次は……

──これは本命ですか?

T:奇遇〜、僕も持ってきました。『通話』。この女性の脚に惹かれたの? こんな素敵な女性になりたいって??

N:いや……(ちょっと引く)でも一目見たときからかっこいいと思ってました、南米の乾いたっていう感じの空気感が。

T:これ持ってたらモテそうだよね。

N:モテますよ、絶対!

──※ただしイケメンに限る。でしょ。

T:ボラーニョの写真の落差もすごいですよね。若いころのラモス瑠偉みたいなのと、晩年のウディ・アレンみたいなのと。

N:担当の人(20代女子)は年とってからのが好きと言ってましたよ。

T:ふーん、それもモテるのかな。

N:これは内容もすばらしいですよ!(たまには内容にも触れないと……)

T:僕もこれは今まで読んだ中で十本指に入ると言っていいです。ポルノ女優の話とか。「ポルノ女優」って言いたいだけなんですけど(笑)。

N:十本指というと、ほかにどんな本が入るんですか?

T:恥ずかしくて言えな〜い。

──じゃあ代わりに今年読んだベストスリーなんかを発表してください。

T:今年の新刊じゃないのばっかりですけど。車谷長吉『赤目四十八瀧心中未遂』なんて三回目。

──繰り返し読むタイプなんだ。

T:いえ、これだけです。またふと読んでみたら、いやあいいじゃないですか……。で、私小説を続けて読もうかと、次に近松秋江『黒髪・別れたる妻に送る手紙』(講談社文芸文庫)を。素敵。

──本当に素敵なんですか?

T:私小説の変に嫌らしいところがない、天然なところがすごく素敵です。そして次に嘉村礒多『業苦・崖の下』(講談社文芸文庫)というのを読みまして。これも素敵。しかも読み終わって一番最後のページに、「本書は白水社刊『嘉村礒多全集』第一巻……」とか書いてあって、思いっきり自社の本じゃん!って。

──濃いなあ。もう次行きましょう。

T:次は……『怪奇映画天国アジア』

N:これも装幀ですか? 結構インパクトありますよね。

T:いや、パフィーっぽい感じで。「アジア♪」って。見本出すときも、「かいきえいがてんごく……アジア♪」そこだけメロディ付けたい、という思い出が詰まった本です……はい、次。

N:『清水みなと』かな。これはタイトルの前にデザインとして庵点というものがついていて、それについていろいろ調べたので、印象深いです。新聞広告だと審査が厳しくて使えないかも、とか。(注・使えました)

T:清水の戸田書店さんは100冊以上売ってくれましたよ。えー次は『明治キワモノ歌舞伎 空飛ぶ五代目菊五郎』。電話で注文受けるとき、書名が長くて、全部書ききれないんですよ(泣)。

N:社内では「キワモノ」と略されてるんでしたっけ?

T:いや「空飛ぶ」? 「五代目」とか? やっぱり「菊五郎」かと。サントリー学芸賞も受賞したんですが、その前から著者の矢内さんのインタビューがたくさん出ていましたよね。それでこれも持ってきたんですが……『壊れても仏像』。こちらも著者インタビューが多くて。ちょっと変わった視点だと取り上げられやすいのかな、と。仏像ブームで書店さんでもフェア展開が多かったんですが、他所の本は仏像を見る人が書いたものなのに、これだけは仏像を直している人なんで。装幀も仏像メインの本の中で、この本は手が。

N:イラストもたくさん入ってて、読みやすいですよね。

T:これは刷り部数でも『やんごとなき読者』の次なんです。というなかなかマジメな話でした。10年かかって成長しちゃったな。

N:……はあ、よかったですね。

──じゃあここでNさん、かっこいいの行きますか?

N:(気を取り直して)そうなんです、かっこいい視点で『ウィトゲンシュタイン』。孤高の天才という点で『グールド』と人物像が若干重なります。「論じえないことについては、人は沈黙せねばならない」っていうフレーズがかっこいいじゃないですか!(全然意味わかってないけど)

T:ほおおおおーっ。

N:哲学のやさしい解説本やエッセイって、小説を読む気がしないときにちょうどいいんです。小説は、その世界観に入らなければならないから、体力がいるんですが。

T:鼻クソもほじれないとか? このシリーズって前書きが面白いと一気に引き込まれますよね。

N:ウィトゲンシュタインは類書もよく売れているようですね。

T:なるほどね、メンクイだけじゃないんですね。

N:だから別にメンクイじゃないですって!(怒)

T:(怒られちゃった……)あと僕が持ってきたのは『プーチンと甦るロシア』とか。プーチンと一緒に裸で馬に乗ったり柔道で鍛えたりして甦るのかな、と。『フルーツ・ハンター』は営業に行ってどこのジャンルに置いてもらうか悩みました。なんでも置ける総合格闘技みたいな棚が書店さんの棚に出来上がってこれが入る、そんな夢を見ました……。

N:あとは『フェティシズム』なんですが、この内容紹介原稿をめぐって大揉めになったんですよ。冒頭に一般的なフェティシズムの例が挙がってる(脚フェチ、眼鏡フェチ)んですが、最初担当の方が書いていたのが「鎖骨フェチ」で。果たして何フェチが一般的なのか、と会議で盛り上がりました(笑)。

──直しちゃった後に担当の方に突っ込まれましたよ。「鎖骨じゃダメですか」って。ちなみに内容はマジメな本です。ここでNさんは持ち駒が尽きたようなので、自社本以外の今年のベストスリーをお願いします。

N:まずは小池昌代さん編著の『通勤電車でよむ詩集』(NHK生活人新書)。今まで詩集はあまり買ったことがなかったんですが、このアンソロジーは現代から古典までバラエティに富んでいて、誰でも自分の好きな詩が見つかると思います。詩のおもしろさを教えてくれました。ふたつめはフィッツジェラルドの『若者はみな悲しい』(光文社古典新訳文庫)。タイトルがグッと来ます。三冊目は『二十歳の原点』3冊シリーズの新装版(カンゼン)。桜庭一樹さんが帯を書いていたり、「ダ・ヴィンチ」で多部未華子ちゃんが取り上げていたりするんですが、意外と若い女性に読まれているんじゃないでしょうか。

──さて、そろそろまとめに入りましょう。今まで出た本に順位をつけます。二人が一番熱く語ってたのは『スペシャル』でしたが。

T:やっぱ『スペシャル』でしょう。

──では、暫定1位にしておきましょう。

N:『通話』は上位なんじゃないですか。

T:いやー、どうだろう。

──どうして?

T:一応、揉めてる感じを出さないと(キッパリ)。去年と違って語学がたくさん出てますね。『バスク語』を、悪魔も逃げ出す暫定8位で。

──Nさん入れたいものはありませんか?

N:では『グールド』を6位くらいに。

──控えめですね。

N:じゃあ、4位!

T:ええーっ(と一応紛糾しているっぽく)。

──じゃあTさん、何かあれば……ってそれ今まで出て来てないじゃん?!

T:『モンマルトル』を9位に。この間「美の巨人たち」でロートレックやってたので。『仏像』『菊五郎』も一緒に入れましょう。

──どっちが上なの?

T:『仏像』の方がたくさん売れたので6位、『菊五郎』が7位。あと『ウィトゲンシュタイン』がまだ残ってるじゃないですか。

N:えーと、じゃあ10位。

──(笑)まだ上の方が空いてますよ? あとは……なんでまた出てこなかった本を握ってるんですか?

T:(笑)『ジーザス・サン』、なんといっても新しい文学シリーズの第一弾ですから、営業っぽく入れておいた方がよいかなって。でもそういう事情を外したランキングにしたいので……これを5位でお願いします!

──思いっきり上位じゃない。

N:これもでもかっこいいですよね、装幀・内容ともに。

──2位・3位が空いちゃってるな。Nさん、『ラブレー』を2位あたりに入れておきますか?

T:ええーっ(抗議)。

N:うーん、じゃあもうちょっと下に。

──下って言っても3位しかないんです。

N:じゃあ『グールド』と入れ替えてください!

T:ええーっ(爆)。なぜか『グールド』が上がってきた。

──もうそんなに残っていないですね。

T:……『通話』が残ってるじゃないですか! チャララララ〜ン♪

──忘れたふりをして、すごくわざとらしい演出。

N:いよいよ本命、来ましたねー。

T:『通話』は2位ですね。

──1位じゃなくていいの?

T:『スペシャル』には勝てないな。(断言)

──非常に揉めましたが、これでいいですか? 『倒壊する巨塔』とか『やんごとなき読者』とか……誉めてくださる方がたくさんいるのでいいですかね。

N:そうですね、あえてここでスポットを当てなくても。

というわけで、今年はこのようになりました。

 1位 『ニューエクスプレス・スペシャル 日本語の隣人たち』中川 裕 監修
 2位 『通話』ロベルト・ボラーニョ 著/松本健二 訳
 3位 『グレン・グールド演奏術(新装版)』ケヴィン・バザーナ 著/サダコ・グエン 訳
 4位 『ラブレー 笑いと叡智のルネサンス』マイケル・A・スクリーチ 著/平野隆文 訳
 5位 『ジーザス・サン』デニス・ジョンソン 著/柴田元幸 訳
 6位 『壊れても仏像 文化財修復のはなし』飯泉太子宗 著
 7位 『明治キワモノ歌舞伎 空飛ぶ五代目菊五郎』矢内賢二 著
 8位 『バスク語のしくみ』吉田浩美 著
 9位 『モンマルトル風俗事典』鹿島 茂 著
 10位 『ウィトゲンシュタイン ネクタイをしない哲学者』中村 昇 著

──栄えある第1位は『スペシャル』、以下も充実した内容でよかったですね。

T:今年もバラエティに富んでますねえ。一体どんな出版社なんでしょうねえ。

──と去年も言ってたような気がしますが……どうもありがとうございました。


白水社社員が独断と偏見で選んだ、2009年のベスト3

●宣伝部・S 選

1.『中国の歴史』1〜3巻 陳舜臣著(講談社文庫)

 学生時代、白川静に入れ込んでいたことがある。中国史の素養のない身には相当の難物、とりわけ名著の誉れ高い『孔子伝』は頂が霞む高峰だったが、かろうじてわかる部分だけでもこれだけ面白いのだから、十全に理解できた暁にはいかなる桃源郷が開けるのであろうか。戦慄した青年は刻苦勉励後の再読を誓うのであった。
 しかし、無為に時は過ぎゆく。馬齢を重ねた中年男はある日、諸星大二郎の漫画に興奮し、昔年の誓いを思い出す。これはいかん、中国史を学ばねば。とくれば陳先生である。史料に作家の想像力を加味するバランスが絶妙で、実に読みやすい。断片的だった知識がどんどん整理されていく。難を言えば孔子や曹操のような大物でも記述が少なく、やや物足りないのだが、中国四千年(より長い)を全7巻に収めなければならないのだからこれは言いがかりというものであろう。ともあれ、おおまかな地図は描けた、感謝。

2.『陋巷に在り』全13巻 酒見賢一著(新潮文庫)

 普通なら次に専門書に進むのであろうが、そうはいかないのがヘタレ読書人の習いである。第一回ファンタジーノベル大賞受賞作『後宮小説』には大いに瞠目していながら、全13巻という量に恐れをなして未読だった『陋巷に在り』に手を付けた。いやあ面白い、一気に読了。主人公は孔子の弟子、顔回。『孔子伝』の鍵である古代中国の巫祝に関する知識も満載だ。
 ところが、である。「ここに書かれていることには大嘘が混じっています」という作者の注意書きが所々に入っている。ありゃ。小説なんだから当然だけどね。かつて山田風太郎にハマっていた頃、自分の歴史観には必ずどこかで忍者が暗躍していることに気がつき、困惑したことがあるが……。まあよい。これで山の麓くらいには着いただろう。

3.『きのう何食べた?』1〜3巻 よしながふみ著(講談社)

 話の流れから言って3は『孔子伝』だろう? とツッコミが入るのは承知しておりますが、ヘタレですから。へっ。
 『きのう何食べた?』は、今や多くの漫画雑誌に一作はある「料理ウンチク/レシピ漫画」ジャンルに属する。大作『大奥』と同時進行なので、作者は気分転換を兼ねているのかもしれない。しかしさすがは巨匠である。凡百のグルメ漫画が料理ネタの仕入れに汲々とし「人間ドラマ」がおそろしく紋切り型なのに比して、こちらは繊細にしてリアル。そもそも40代ゲイ・カップルの同居生活という設定からして、並の力量でメジャー雑誌に描けるものではない。
 と言って、レシピの部分が薄味かというと、これがまた美味そうなんですよ。「サッポロ一番味噌ラーメン」の回なんか、読んだ後すぐコンビニに走りました。

●営業部・F 選

1.『ダロウェイ夫人』ヴァージニア・ウルフ(集英社文庫)

 小説好きの端くれとして恥ずかしい話ですが、これまでどうしても読み進めるに至らなかった作家の一人。一念発起の末読み終えた感想は、よくぞまあ破綻せずに一つの作品として仕上がったものだと、唸ってしまった。頭を空っぽにして小説の世界へのめり込むには実にありがたい一冊。

2.『オヤジとわたし』早坂茂三(集英社文庫)

 云わずと知れた田中角栄の話。普段この手の本は読まないのですが、夏の選挙の時、選挙のやり方について関心を持ったのをきっかけに、この本に至った次第。私の結論としては、営業も選挙も神髄は同じ。彼が火を吐くように新人にアドバイスした言葉というのは説得力がある。

3.『夜と霧』ヴィクトール・E・フランクル(みすず書房)

 少々不謹慎と思いますが、実に面白かった。こんなこんな基本書を読んでいない事自体噴飯ものだが、名著、ロングセラーといわれるものの実力を思い知らされた一冊。年間自殺者3万人といわれるこのご時世。時代を問わず、永遠に読まれるべき一冊と思う。

●編集部・T 選

1.『吉本隆明1968』鹿島茂著(平凡社新書)

 まさに1968年世代の父が貸してくれました。学生のときに数冊かじったものの、何がそんなにすごいのか全くわからなかった吉本隆明。著者の軽快ながらも熱のこもった解説で、この世代の彼に対する思い入れが、ようやく少し腑に落ちた気がします。さらには編集部I氏(父と同学年)の机上にもこの本を発見し、やっぱりそうなのか…と深く納得。

2.『幸せ最高ありがとうマジで!』本谷有希子著(講談社)

 言わずと知れた、第53回岸田國士戯曲賞受賞作品。登場人物たちの言動は目を背けたくなるほど痛々しいのに、どうも他人事とは思い切れず、ついつい引き込まれてしまいます。この怖いもの見たさがけっこう癖になるようで、今年は本谷さんの本をまとめ読み。

3.『新編 同時代の作家たち』広津和郎著、紅野敏郎編(岩波文庫)

 大正・昭和の名だたる作家たちも、知人である著者から見れば、小心者だったり傲慢だったり怠け者だったり。率直ながらもどこか温かみのある文章から、まさに同時代の空気が伝わってきます。作家たちの情けなさも格好悪さも、悲惨な生き様さえも興味深く、印象に残る1冊。

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