ひとりぼっちだと感じるのは、こんなとき。
一、みんなに見られているとき。ときどき感じる。
二、だれにも見られていないとき。しょっちゅう感じる。
三、なにもかもどうでもよくなるとき。週に一回くらい感じる。
四、ちょっとしたことで泣きそうになるとき。一日に一回くらい感じる。
でも、きょうは感じない! スミコは、スクールバスからとびおりて家の裏手にかけていった。家族がはたらいている。さまざまな色があふれる花畑のなかで、小さい人影がうごいている。「ジイチャン!」スミコは祖父にむかってさけび、封筒をひらひらさせた。「誕生会に呼ばれたの!」 (1章より)
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アリゾナ州ポストンで花農家を営む主人公の家族は、日本人の少ない学区で暮らしていた。そのためクラスに日本人はスミコひとりきり。白人の女の子たちは、学校にいるあいだは仲よくしてくれても、週末に遊びにさそってくれたり、家に泊まりに呼んでくれたことは、それまで一度もなかった。最近になって、そんなことが気になりだしていたスミコは、誕生会の招待状を受けとって大はしゃぎだった。
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夕ごはんを食べながらのおしゃべりにも、スミコは上の空だった。大人たちは夢中で、ハタ・スミコという女の人の話をしている。ハタさんは、たった数日のあいだに兄と夫を心臓発作でいっぺんになくし、オレゴン州のジャガイモ農家を息子がつぐことになった。そこからみるみる運がかたむき、以前は裕福だったハタ家が破産寸前に追いこまれているという。西海岸の“ニッケイ”のあいだでは、このうわさでもちきりだった。アメリカでは、生まれた場所がアメリカでも日本でも、日本人の血を引く人はみんな“ニッケイ”と呼ばれる。スミコは、ハタ・スミコさんにもその家族にも、会ったことはない。
ジイチャンはよく、スミコの脳みそはふたつにわかれているという。半分ははたらいているけどもう半分は夢を見ている、と。みんなが食事をしながらおしゃべりをはじめると、スミコはすぐに空想にふけった。マーシャ・メルローズの誕生会では、どんなケーキが出るんだろう。わたしが大好きなのはイチゴのケーキだ。ムラモトさんのおばさんが年に一度、お正月のパーティで出してくれる。マーシャのお母さんがイチゴのケーキを出してくれたら、おかわりをもらっても失礼にならないかな? そのとき、スミコはイチローの言葉にはっとしてわれに返った。「友だちがいってたんだけど、日本との戦争がはじまったら、政府は“ニッケイ”を全員、処刑するかもしれない」
そのうわさなら前にもきいたけど、おじさんに信じるなといわれた。そんなうわさを信じるのは、「頭のおかしな連中」だけだと。だけどやっぱり、たずねずにはいられない。「どの友だち?」……(2章より)
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そのころ、ヨーロッパではナチスドイツが周辺の国々を占領し始めていた。アメリカは、表向きは中立の立場をとりつづけ、世論も参戦には強く反対していた。
日本との開戦はありえないと思われていたのだが……。過酷な運命が、スミコとその家族にせまり寄っていた。
(『草花とよばれた少女』より)
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草花とよばれた少女
シンシア・カドハタ著/代田亜香子訳 税込価格1890円 (本体価格1800円) 1941年のアメリカ西海岸。両親を亡くし、叔父夫婦の花農園で暮らす日系少女スミコの夢は、いつか自分の花屋を持つこと。そんな彼女の運命を日本の真珠湾攻撃が大きく変えた。 |



