日本中の大仏を見にいくことにした。
大仏のなかでも、とりわけデカい巨大仏を見にいく。
これを巨大仏旅行といい、そんな言葉があるのかというと、今私がつくったのである。
昭和から平成のはじめにかけて、日本各地にやたら大仏が建立された。それまでは日本一の大仏と言えば奈良の大仏と決まっていたが、今やその何倍もの高さを持つ巨大な仏が、北海道から九州に至るあちらこちらに出現している。(中略)日本は思った以上に大仏だらけだということが判明した。そのすべてを回るのは大変なので、それらのうち40メートル以上のものにしぼって無節操に観光して回ることにする。ちなみに40メートル以上というと、奈良の大仏が高さ約15メートルなので、その二倍以上デカい巨大仏ということになる。40メートルに厳密な理由はないが、ウルトラマンよりデカいというのが一応の目安だ。
(はじめにより)
* * *
石川県の加賀温泉に、『ユートピア加賀の郷』という場所があって、そこに大観音があるらしい。高さは73メートルというから、十分デカい。今度はそれを見にいく。
なんでも聞くところによると、『ユートピア加賀の郷』は、寺と温泉が合体した仏教テーマパークだそうだ。
おお、仏教テーマパーク!
なんじゃそりゃ。
仏教という言葉とテーマパークという言葉が、ちっともそぐわなくておかしい。いったいどんなところなのか、詳しくはわからないが、私は巨大仏もテーマパークも両方好きなので、仏教テーマパークとなれば、好きが倍である。(中略)
加賀大観音へは、小松空港からバスでJR小松駅へ出、そこから北陸本線に乗っていく。最寄り駅加賀温泉までは小松からたった四駅である。
『ユートピア加賀の郷』は加賀温泉駅のすぐそばにあるので、電車に乗って南下すると、ほどなく窓の外に大観音が現れた。
「出た!」
加賀大観音は、平野の中に唐突に立っていた。こういう風景は、何度見てもすばらしい。遠くから見るだけでも、巨大仏ならではの強引な風情が感じられる。風景の中で、そこにそんなものがある必然性がまったくないのだ。
しかもこの路線は、電車がしばらくの間、大観音を真正面に見て走るのもよかった。突如地底から現れた怪獣に向かって、マグマライザーで突撃しているような気分だ。
「こういうアプローチはなかなかないんじゃないですか」と(同行の)和久田さんも感心していた。
近づくにつれ大観音はどんどんデカくなり、やがて電車がカーブすると、窓のすぐ外に人がいるのかと思うぐらいの大きさになった。
しかも、手前の景色は動くのに、そいつは手前の住宅の屋根のむこうを、電車といっしょに移動している。
「動いてますよ、大観音!」
「そう見えるだけです」
って、まあ、わかってるんだけど、次の駅で乗ってきそうな勢いである。
駅に着いて電車を降りると、加賀大観音は、すぐ隣の丘の上に立っていた。
プラットホームの向こうに立ち上がる金色の違和感。天気がいいので、金色の立ち姿が青空にきっぱりと映えていた。やはり巨大仏には青空が似合うのだ。
(『晴れた日は巨大仏を見に』より)
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晴れた日は巨大仏を見に
宮田 珠己 著 税込価格1680円 (本体価格1600円) ウルトラマンより大きな仏像が、日本各地に存在している! その唐突かつマヌケな景色を味わうための日本風景論。東南アジア旅行の達人として知られる著者による笑える紀行エッセイ。 |



