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ちょっと立ち読み
ヴァギナ・モノローグ 

女性たちよ、あなたたちの性器の名をはっきりと口にしよう。
そしてそれについて考えよう。
なぜならそれは、あなたたちのいちばん大切な部分、
あなたたちの心なのだから。
――200人以上の女性が自らの女性器について語ったインタビューをもとに書き起こされ、全米に感動の渦をまき起こした衝撃的作品。

*     *     *

……まったく、あんたみたいなインテリのお嬢さんが、なんだってこんなお婆さんからあそこの話なんか聞きたがるの。あたしの時代には考えられなかったことですよ。……ええ? どうしても? もう、しょうがないわね。

 近所にね、男の子がいたのよ。アンディ・レフトコフといって、とっても美男でね――まあ、今見たらどうかわからないけど、すくなくともその時はそう見えたの。背もちょうどあたしと釣り合うくらいに高くてね、あたしはもうぞっこんだった。そうしたら、ある日アンディがデートに誘ってきて、車に……。(中略)

 車は、白のシヴォレー・ベルエアーの、ぴかぴかの新車だった。あたしは乗ってるあいだじゅうずっと、自分の脚が気になってね。脚がひょろ長いものだから、ダッシュボードに膝がごつんごつん当たってしまうの。それで自分の膝小僧ばかりにらんでたら、アンディがいきなりキスしてきたの。ほら、よく映画で男が女を体ごとかっさらうみたいにする、あんな感じ。あたしはもう、体じゅうがカアッと熱くなってね、そうしたら、その……洪水になってしまったのよ、あそこが。アッと思ったけれど止められなかった。体の奥から、情熱の嵐っていうのか、命の泉っていうのか、そんなものがワーッと溢れだして、ショーツがびしゃびしゃになって、シヴォレー・ベルエアーの真っ白のシートまで滲みてしまった。おしっこじゃないのよ。そうじゃないけど、その水は変な匂いがした――いえ、本当は、自分では何も匂わなかった。でもアンディがそう言ったのよ、牛乳の腐ったみたいな臭いがする、俺の車を汚すなって。“くせえアマ”、あたしのことをそう言った。あたしは必死に弁解した、急にキスされたからびっくりしてなっただけだ、普段はこんなことないんだって。それからスカートの裾で一生懸命その水を拭いたわよ。せっかくおろしたての淡い黄色のワンピースが、ぐっしょり濡れて、もう悲惨なありさま。アンディはあたしを家に送ってくれたけれど、その間じゅう、ただのひと言も口をきいてくれなかった。あたしは車を降りて、ドアを閉めて、そのとき一緒にあそこも店仕舞いしてしまった。もうこれっきり、永遠に閉店よ。それから何度も男の人とデートをしたけれど、また洪水になるんじゃないかと思うと生きた心地がしなくって。それでもう金輪際、誰ともデートしなくなってしまった。

 以前はね、よく変な夢を見たのよ。ほんとに馬鹿みたいな夢。だってあなた、バート・レイノルズよ。どうしてって、知るもんですか。べつだん好きでも何でもなかったのに。……でも、とにかく夢ではいつもバートだった。中身はいつも判で押したように同じ。バートとあたしと、二人でデートをする。アトランティック・シティによくあるような、大きくて、シャンデリアや何かがピカピカしてて、チョッキを着たボーイがたくさん動き回っているようなレストラン。バートが素敵な蘭のコサージュをくれて、あたしはそれをブレザーにつける。あたしたちは愉快に笑って、シュリンプ・カクテルを食べる。丸々と太った、そりゃもう立派なシュリンプ。あたしたちは楽しくって、ますます笑う。二人とも幸せいっぱい。そうしたら、バートが急に真顔であたしをじっと見つめて、みんなが見てる前で、あたしをぐいと抱き寄せる。そうして今まさにキスをしようとした瞬間、店全体がガタガタ揺れだす。テーブルの下からハトが一斉に飛び出して――どうしてハトがそんなところにいたんだか――そうして、大洪水が始まるの。あたしのあそこから、水がドーッと溢れだす。ざあざあざあざあ、ものすごい勢い。中には魚はいるは、小さなボートまで混ざってるはで、じきに店全体が水びたしになる。バートは膝まで水に漬かって、心底げんなりした顔であたしを見ている。“またか”っていう顔をして。その横を、ディーン・マーチンやら誰やら、彼のお友だちが、タキシードやイブニングを着て、すいすい泳いでいく。

(『ヴァギナ・モノローグ』より)

ヴァギナ・モノローグ
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ヴァギナ・モノローグ 
イヴ・エンスラー著/岸本 佐知子 訳
税込価格1575円 (本体価格1500円)

 200人以上の女性に自らの女性器について語ってもらい、それをもとに著者が演じた一人芝居は大反響を呼んだが、芝居から新たに書き起こされた本書も、その衝撃的な力で全米を感動させた。

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