主人公はカナダの小さな港町に住む11歳の女の子、プリムローズ・スクワープ。ある嵐の日、船で釣りに出て帰ってこないお父さんを探しにお母さんも小さなヨットで海に乗り出し、そのまま二人は行方不明になってしまった。
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校庭からだれとも顔を合わせないでこっそり帰ろうとすると、女の子たちが数人、あたしをひやかすみたいにないしょ話をしながらあとをつけてきた。くすくす笑いがきこえてくる。ふりかえると、一メートルくらいうしろにその子たちはいた。アスパラガス(レシピはのちほど)の束みたいにごちゃっとかたまって。アスパラガスかあ……そういえば、ずいぶん長いこと食べてないな。お母さんがどんなふうにゆでてたかはよく知ってる。何度も何度もみてきたから。春になるとお父さんが島まで車を運転して、農家の直売所から袋いっぱい買ってくる。(中略)「うちのママがいってたわよ。どうしてあなたのお母さん、家に残らなかったのかしらって。あんな嵐のなか出ていくなんて信じられないって」
あたしは走りはじめた。女の子たちが追いかけてくる。(中略)駐車場をつっきって、〈赤いブランコにのった女の子〉とドラッグストアのあいだの路地を走ってるとき、手がにゅっとのびてきて、あたしはあったかいキッチンのなかに無事引っぱりこまれた。息をはずませながら顔をあげると、あたしを救出してくれたケイト・バウザーさんが、タバコを口にくわえながら、まゆをよせてこっちをみつめていた。
バウザーさんは、レストラン〈赤いブランコにのった女の子〉の所有者でじっさいに店を切りもりしている。あたしがすわれるようにコンロのほうにいすを引きよせると、タバコをすうのとワッフルを焼くのをつづけながら、あたしの受難話をじっときいてくれた。あたしがそこにすわってるあいだに、バウザーさんはワッフルを百万個くらい焼いた。毎日、百万個くらい焼かなきゃいけない。〈赤いブランコにのった女の子〉では、メニューがなんでもかんでもワッフルの上にのって出てくるからだ。よくワッフルの上にのってる食べ物だけじゃない。ハムエッグのワッフルのせとか、ストロベリーのワッフルのせとかならわかる。ところが〈赤いブランコにのった女の子〉では、ステーキをたのんでもワッフルの上にのってくる。フィッシュ&チップスをたのんでもワッフルの上にのってくる。ワッフルをたのんでもワッフルの上にのって出てくる。バウザーさんがいうには、そうすることでほかのレストランとおもむきを変えてるらしい。それに、お客さんにはちょっとしたサービスをしたいんだそうだ。バウザーさんは、ワッフルを二枚とアイスティーを出してくれた。
あたしはいった。なんだか、みんな不満でしょうがないみたい。両親がいなくなったことであたしがノイローゼにならないから。
「プリムローズ、この町の人たちがなにが不満なのか教えてあげようか。あんたのお母さんが、嵐のなか追いかけていくくらいお父さんを愛してたってことだよ。それこそほんものの愛だし、めったにお目にかかれないからね。……」
(『みんなワッフルにのせて』より)
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みんなワッフルにのせて
ポリー・ホーヴァート著/代田 亜香子 訳 税込価格1575円 (本体価格1500円) 港町に住む少女プリムローズの両親が嵐の日に海で行方不明になり、町の人は死んだと決め込む。それを信じない少女が巻き起こす珍事件を素敵におかしく描いたニューベリー賞オナー受賞作。 |



