「訳者あとがき」より
この子たち、なかなかホネがありそうだなぁ。
一九九九年の冬、マンハッタンの本屋でこの本の表紙を目にしたとき、ピンときました。屋根の上にすわっている、意志の強そうな女の子と、気持ちよさそうに空をあおいでいる小さい女の子。裏表紙に書かれた文を読むと、この子たちは、自分でも屋根にのぼってきた理由がはっきりわからないらしい。だけど、どうしてもおりたくない。そして、いいたいことがたくさんたまってるらしい。この子たちの考えていることが知りたくてたまらなくなり、さっそく読み始めました。そこからはもう、主人公のウィラの語りにぐいぐい引きこまれ、最後まで夢中になって読みました。読み終わったときには、ウィラと小さい妹がいとおしくてたまらなくなり、パティおばさんとホブおじさんが大好きになり、ふんわりとあたたかい気持ちにつつまれていました。
著者オードリー・コルンビスは、この本のキャラクタを設定するにあたって、いくつかリストを作ったそうです。
- その人が、どうしてもゆるせないこと十個。
- その人が、傷つくこと十個。また、どうしてそうなったのか。
- その人が、子どものころこわかったこと五個。
- その人が、やってみたいこと五個または十個。
書いているさいちゅう、筆が止まってしまうことがあると、あわてずさわがず、登場人物の声がきこえてくるまで待ったそうです。そのあいだ、ひとつだけ心がけていたのは、登場人物といっしょに毎日、朝ごはんやランチを食べること、だったそうです。
これで、納得しました。そうやって自然体で書かれたからこそ、登場人物がみんな、とても生き生きしていて、まるで自分の家族や友だち、それに近所のおじさんおばさんのように身近に感じられるのでしょう。オードリー・コルンビスは、初めて子どもむけに書いたこの小説で、二〇〇〇年度のニューベリー賞のオナーに輝いています。
この本の原題は、getting near to baby。直訳すれば、「ベイビーに近づく」。このタイトルの意味は、物語の最後にわかります。そして、この意味がわかると同時に、いろいろな問題やなやみをかかえた登場人物たちに、癒しが訪れるのです。もちろん、読んでいるわたしたちにも。いいたいことがたまっている人、なんだかいらいらしている人、悲しくてしかたがない人、ウィラといっしょに屋根にのぼってみませんか。いままで目に入らなかったものが見えてきて、気づかなかったことに気づいて、素直なやさしい気持ちになれると思います。
たくさんの方々に、屋根の上に吹くさわやかな風がとどきますように。
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屋根にのぼって
オードリー・コルンビス著/代田 亜香子 訳 税込価格1680円 (本体価格1600円) 少女ウィラ・ジョーと小さな妹がパティおばさんの家の屋根にのぼったまま下りてこなくなったわけは? 多感な少女の心の揺れをさわやかに描く感動的な物語。ニューベリー賞オナー受賞。 |



