内容説明
待望のナンシー論
伝統的な哲学の問題系を引継ぎつつ、常にアクチュアルな事象に接続する現代最高の哲学者ナンシー。膨大で手強い著作の何からどう読むべきか、彼の思想の核心を押さえる最良の航海図。
カント、ヘーゲル、ハイデガーなど歯ごたえのある哲学者たちと格闘しながら、〈共同体〉〈自由〉〈正義〉といった伝統的な問題系を正統的に引き継ぎつつ、常にアクチュアルな事象や映画・音楽・美術・ダンスにもしなやかに接合する、現代最高の哲学者ナンシー。デリダ亡き後、フランス思想界で最もその発言が注目される人である。
これまで発表された大小合わせて六十以上の著作のうち、半分近くが訳されるほど日本における関心や人気は高いが、彼のテクストを読み解くことは、決して容易くはない。本書は、ナンシーの思考や文体(むしろ彼独特の言葉の感覚と言おうか)の特徴を鮮やかに分析し、その「手強さ」の所以を明らかにする。読み方の「こつ」を押さえた上で、その膨大な著作の何からどう読んでいくべきか?
まず導入として、心臓移植という自らの体験を語った『侵入者』。非常に薄いが、具体的かつ本質的なこの本は、入門として最適である。次に、「共生」を中心テーマに据えた『無為の共同体』『自由の経験』。続いて、イメージ論『イメージの奥底で』『肖像の眼差し』を経て、年々益々主要テーマとなっているキリスト教の脱構築を扱った『訪問』『私に触れるな』『脱閉域』へ。折に触れその他の著作もさまざまに引用されるが、以上の厳選されたタイトルが一冊一冊じっくりと読み解かれていく。ナンシー思想の全体像が初めて浮かび上がるファン待望の一冊。