内容説明
「官」と「民」の凄まじいせめぎ合いを描いた全米図書賞受賞作!
本書は、現代中国を「人びとの野望と独裁体制とがぶつかり合う戦場」と位置づけ、大変革の波に翻弄されながらもしたたかに生きる人びとや、戦う姿勢を崩さない人権活動家、若き愛国主義者たちの姿を通して「生身」の中国の本質に迫ったルポである。
1979年に金門島から大陸側に泳いで渡り、のちに中国を代表するエコノミストとなった林毅夫。スクープを連発し政府批判も厭わない『財経』元編集長・胡舒立。自身が作成した愛国主義的な動画がたいへんな人気を博した唐傑。若者の圧倒的な人気を集め、一躍時代の寵児となった作家の韓寒。そして、当局から「好ましからざる人物」と見なされる艾未未や劉暁波、陳光誠――本書には有名無名を問わず、挫折に屈することなく「夢」を追い続ける魅力的な人物が数多く登場する。
人びとの希求するものを富(カネ、豊かさ)、真実(知る権利、表現の自由)、心のよりどころ(信仰、伝統の復活)とし、国家をも揺るがしかねない深刻な社会問題からくすりと笑えるエピソードまで、一つひとつのストーリーを個人と国家の相克として鮮明に描き出した傑作ノンフィクション! ピュリツァー賞最終候補作。
【本書に登場する人物】
林毅夫(リン・イーフー)
金門島(台湾)から大陸側に泳いで渡り、中国に亡命した世界銀行の元チーフエコノミスト
胡舒立(フー・シューリー)
スクープを連発し、政府批判も厭わない『財経』元編集長
唐傑(タン・チエ)
自身が作成した愛国主義的なネット動画が絶大な人気を博した大学院生
韓寒(ハン・ハン)
若者の圧倒的な人気を集め、一躍時代の寵児となった新進作家
艾未未(アイ・ウェイウェイ)
四川大地震で倒壊した校舎の下敷きとなった児童たちの被害状況を調査し、当局の責任追及に奔走した芸術家・建築家
劉暁波(リウ・シャオポー)
天安門事件後も国内で民主化運動を続け、ノーベル平和賞を受賞した人権活動家
陳光誠(チェン・クアンチョン)
決死の脱出行で自宅軟禁を逃れ、アメリカに保護された「裸足の弁護士」
ほか多数
◎米主要紙が絶賛!◎
「自身のアイデンティティ、価値観、将来について極度の不安を抱えた人びとの歓喜と苦悩を、魅力たっぷりに描写」――ニューヨーク・タイムズ
「21世紀の中国を色鮮やかに、ユーモアを交えて面白く描き出している」――ウォールストリート・ジャーナル
「中国版“金ぴか時代”に生きる人びとの欲求、挑戦、窮状を、これまでにない斬新な手法で浮き彫りにした」――ワシントン・ポスト
「ここ数年、アメリカのジャーナリストによって書かれた中国レポートのなかでは群を抜いている。深い思考に裏打ちされ、丹念に作られた傑作」――サンフランシスコ・クロニクル
[原題]Age of Ambition:Chasing Fortune,Truth,and Faith in the New China
[著者]エヴァン・オズノス Evan Osnos
1976年、英国ロンドン生まれ。ハーヴァード大学卒業。在学中も含め、2度にわたり北京に留学した。『シカゴ・トリビューン』の記者・特派員として9.11同時多発テロやイラク戦争を取材したのち、2005~13年、同紙および雑誌『ニューヨーカー』の中国特派員を務めた。現在はワシントンD.C.を拠点に『ニューヨーカー』のスタッフライターとして優れたレポートを発信し続けるかたわら、ブルッキングス研究所のフェローも務めている。処女作である本書は全米図書賞を受賞したほか、ピュリツァー賞(一般ノンフィクション部門)の最終候補となった。
[訳者]笠井 亮平(かさい りょうへい)
1976年、愛知県生まれ。在中国、在インド、在パキスタンの日本大使館で外務省専門調査員を歴任。現在は岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員として南アジア・中国情勢に関する研究を行なっているほか、早稲田大学(2015年)および日本経済大学(2014年~)で非常勤講師を務めている。共著に『軍事大国化するインド』(亜紀書房)、『インド民主主義の発展と現実』(勁草書房)、『台頭するインド・中国』(千倉書房)など。『外交』誌(時事通信社)で中国関係の英文翻訳を担当するなど、翻訳者としても活動。